今年の夏に開催が迫る東京オリンピック・パラリンピックに向けて、鉄道駅のバリアフリー化と並行して、東京都心では、ホームドアの設置が進んでいます。特に、東京メトロと東急電鉄は、ハイペースでホームドアの設置に取り組んでおり、東京メトロは現在、全駅の7割ほどに設置済み、東急電鉄は2019年度内に、世田谷線・こどもの国線を除いた全駅にホームドアを設置するとしています。

今や、都心部で見かける機会も多くなったホームドアですが、未だに設置されていない駅では、人身事故や転落事故も起きており、何かと話題にもなっています。この記事では、ホームドアの現状や、少し変わったホームドアについて紹介します。

「ホームドアなくて怖い」

2020年1月28日、東京メトロ東西線の茅場町駅(東京都中央区)で人身事故が発生し、同線は、九段下-東陽町駅間で上下線の運転を見合わせました。首都圏にお住まいの方の中には、夕方の帰宅ラッシュの時間帯ということもあり、影響を受けた方もいるのではないでしょうか。

この事故について、Twitter上では、

「東西線茅場町駅人身事故。あの駅、人が多いのにホーム狭いし、ホームドアないしいつも怖くて嫌だ」
「東西線も何気に人身多いし茅場町は利用者数に対してホームの狭さがどうかしてるからまじで早くホームドアつけた方がいい」

などといった声も上がっているようです。世間でもホームドアの重要性は広く認知されており、早急な設置を望んでいる人も多くいます。

東京メトロ東西線では、高田馬場駅や九段下駅など、ホームドアが設置されている駅も多くありますが、未だに茅場町駅には設置されておらず、今回の事故もそのことが原因の一つだとみられます。

ホームドアがあれば安全……ではない!

「ホームドアにもたれかからないでください!」

注意のアナウンスが響き渡る駅のホーム。筆者が周囲を見たとき、電車の進入中にもかかわらず、一人の男の人がホームドアに寄りかかっていました。

まず、ホームドアが設置される目的は、乗客と列車との接触防止、乗客のホームからの転落防止など、「ホームの安全性を向上させること」だというのは多くのみなさんもご存じのはず。ですが、利用客の一部には、「ホームドアがあるから完全に安全だ」という誤った認識をしている人もいるのだそうです。

確かにホームドアの高さは、多くの成人の方にとって、寄りかかるのにちょうどいい高さになっているという見方も指摘されています。SNS上でも、「夜の時間帯に酔っぱらいの乗客がホームドアにもたれかかっていた」「観光客らしき外国人が腕をかけていた」といった目撃談はときどき見られます。

しかし、ホームドアにもたれかかったりすると、通過・到着する電車と接触を起こして大怪我をする場合があり、とても危険です。さらに、そういった人がいた場合、電車は減速する必要が生じるため、接触しなかったとしても電車の遅延につながってしまいます。

「ネコよけのトゲトゲをつければ?」

また、たとえホームドアが設置されていても、プラットホームと電車や線路との距離は今までと変わりません。柵があることによって電車・線路との距離感が見えづらくなったこともあってか、誤った「安心感」を抱いてしまいがちですが、転落や接触はありうるのに、そこに対する注意がおろそかになってしまっては、元も子もありません。電車の遅延防止のためにも、また、自分自身の身を守るためにも、ホームドアには触れたり、荷物を立てかけたりしないように注意しましょう。

Twitterではホームドアに対するこんな意見がつぶやかれています。

「ホームドアに寄りかかってたおっさんが警備員に注意されてて草 電車来るたびにもたれかかるなって言ってんのにやるんだもの 耳ついてないんじゃないの?」
「これは前から思ってたけど都心部は狭いホームに人があふれんばかりはザラでほんとに危ないんだよな。ホームの幅を広げられないなら、ホームドア設置は必須にすべきだと思うんだが」
「ホームドアにもたれかかると接触事故が起きるのなら、ホームドアに猫除けとかに使うトゲトゲをつければ大丈夫だな」

まるでプロレス⁉ ロープ式ホームドア

「まるでプロレス⁉」とTwitterで注目を集めているのが、関西を中心に導入されている「ロープ式ホームドア」。ロープの材質や赤と黄色といった色合いも相まって、プロレスリングや格闘技のリングを彷彿とさせるビジュアルをしています。

東京都心では、ホームドアというと、開閉式のドアが主流ですが、JR西日本では、このロープ式のホームドアを大阪駅や高槻駅などの一部の駅で導入しています。ロープのような柵が上下に昇降するタイプのもので、電車が来ると柵が上がり、人が通れる仕組みになっています。低いコストで導入ができ、ドアの位置や車両の長さが異なる場合にも柔軟に対応することができるのがメリットなのだそうで、首都圏でも一部の駅で徐々に導入され始めています。

これは、開閉式のホームドアと違い、大人が寄りかかることもなく、また、線路との距離が見えないことによる「誤った安心感」を与えることもないというメリットがある一方で、子どもがロープの間をくぐり抜けてしまうことがあるというデメリットも指摘されています。

一人ひとりが注意して事故を減らそう

鉄道利用者の安全性の確保が叫ばれる昨今。冒頭でも触れたように、鉄道各社は、東京オリンピック・パラリンピックに向けてあらゆる対策を講じており、ホームドアの設置は、日に日に進んでいます。その一方で、予算やホームの構造などの問題で導入が追いついていない駅もあり、接触事故や転落事故もなくなってはいません。また、前述のように、ホームドアが設置されていても事故が起こる可能性はあります。

ただ、一人ひとりが意識することで、遅延や事故は減らすことができます。ホームドア設置駅であっても、安全だと思い込まずに、ホーム上では、アナウンスや注意書きに気を配り、黄色い線の内側を通行するように心がけましょう。

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