2019年11月18日に行われた、ジャパンリアルエステイト投資法人2019年9月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:ジャパンリアルエステイト投資法人 代表取締役社長 梅田直樹 氏

梅田直樹氏:運用会社の梅田でございます。今日はよろしくお願いします。

オフィスマーケットは好調を維持し、だいたいこれまで私がご説明してきたとおりになっているかなと思っています。基本的には「オフィスはリクルーティングやリテンションの武器だ」と考える経営者も増えてきていています。このトレンドは日本だけではなく、世界的なトレンドだと思っています。

加えて「快適なオフィスで、優秀な人財にのびのび生き生き働いてもらい、生産性を高めてほしい」という考え方ももちろんあります。そういうことが、快適で先進性が感じられて、立地が良いオフィスの強い需要に繋がって、それがマーケットを支えているのではと考えています。

我々運用会社自身のことをお話ししますと、ちょうど今から2年くらい前に、大手町パークビルという、今は三菱地所の本社も入っているビルに移転いたしました。

自分たちとしても「少し最先端のオフィスの雰囲気を感じて、トレンドに敏感になったほうがいいんじゃないか」「いろんなことを試してみたほうがいいんじゃないか」という考え方もして、新しいオフィスに移転しました。

そのなかで、従業員のコミュニケーションを促進する仕掛けをけっこう作っています。例えば、カフェコーナーなどは最近では当たり前かもしれないのですが、そういうのを充実させたり、人が集まってくる仕組みをつくりました。

また、応接室にいるような雰囲気のコーナーもあったり、外の皇居の景色を見ながらのんびりできるコーナーなどという仕掛けを作ったり、あとは会議室の1つで卓球ができるスペースとかを作ったりしています。

それからあとは、全社をフリーアドレスにしていまして、どこの席に座ってもいいということにしています。

席もいろいろあり、立って仕事できる席もけっこうありますし、窓の外を見ながら仕事できる席もあるし、従来型の机もいくつかありますし、リビングルームのダイニングコーナーみたいなテーブルもありますし、いろいろな仕掛けを作りまして、自由に座っていいことになっています。

社内でも部署の違う人は、今までは、それほど世間話したりする機会はなかったのですが、「そういう機会が増えればいいな」なんていう期待も込めまして、そういう仕掛けを作ってみました。

あとはフレックスタイム導入しました。何時から何時まで働けばいいという業態ではないということです。アセットマネジメント会社ですので、時間に縛られてもしょうがないと思い、みんな大人なんだから、自分で判断して働いたほうがいいのではという制度も導入しています。

ワイヤレス・ペーパーレスということで、紙の使用量を減らすという取り組みも行っています。

そのようにいろいろした結果、2年経ってみてどうなったかといいますと、まず時間外労働がかなり大幅に減っています。これはフレックスの効果かもしれませんし、会社の雰囲気が変わって一歩先を行く会社のような雰囲気があったりするところも効果があるのではないかと思っています。

社内のコミュニケーションは測りようがないのですが、見た感じでは別の部署の人たちとのコミュニケーションは良くなっていると感じますあとは簡単に一言で言うと、ワークライフバランスが非常に良くなったという感じもしています。

それから、紙の使用量は思い切り減りまして、半減している状態です。

そのため、当初の狙いがある程度実現してきまして、効率化されたのと、それに伴って生産性も高まっているという状況です。

2年経つとなんとなく慣れてきてしまったところもあって、そういう意味では「もう元の、古いタイプのオフィスには戻れないかな」ということを私は思っていますし、たぶん従業員の多くもそう思っているんじゃないかと思います。ここからさらに効率化していけるかというと、少しずつはいくと思うのですが、革命的な効率化が永久に続くわけではないと思います。

ですので、次のフェーズを考えています。時間外労働が減るような効率化はもちろん続けたいのですが、次はなにを目指すかというと、例えばよりクリエイティブな発想が生まれるようなオフィス環境や仕掛けを考えたいと思っています。上手い表現が浮かばないのですが、若者が働きたくなるような雰囲気。それから、新しいことにチャレンジしたくなる雰囲気を出していければいいと思い、第2ステージに入ったと考えています。

そのようなオフィスを目指しながら、働く環境もどんどん改善しながら、アセットマネジメントという本業に役立てて、より一歩先を行くマネジメントができるような社風にして、継続していきたいと考えています。

では、例によって前置きが長くなったのですが、これから決算のご説明に入りたいと思います。

分配⾦サマリー

3ページからご説明します。

まず、分配金です。2019年9月期の分配金は1万197円で、前期比500円アップ、半年前の予想と比べて367円の上振れとなりました。

下のグラフをご覧いただきますと、1口当たり分配金は11期連続で増配を達成しています。直近の3年間の伸び率を計算してみますと、年率で7パーセントを上回るくらいの成長をしていると思います。

それからグラフの一番右端の、少し色の薄くなった2本のグリーンのラインのように、2020年3月期と2020年9月期も増配を継続する予定となっています。

運⽤ハイライト

4ページをご覧ください。

2019年9月期のハイライトが書いてあります。まず内部成長については「賃料改定」が9期連続でプラスになりまして、月額4,100万円となりました。これはやや大きいアップとなっています。

それから外部成長は、新しく取得したビルはございませんでしたが、川崎砂子ビルディングを9月と翌期の2回に分けて売却することを決定しています。

2019年9⽉期 決算概要

次は7ページにお進みください。こちらで、2019年9月期の決算についてご説明します。

2019年9月期の実績は、ページ左側の緑色で囲ったところですが、前期と比べますと、大きく増収増益となっています。

上から3行目のところに不動産売却益がございます。こちらは川崎砂子ビルディングの50パーセント分の売却益が計上されています。これがなかったとしても、増収増益は達成していました。

基本的には内部成長が非常に好調だったことが増収増益の一番の要因だと考えています。例えば、上から2行目の賃貸事業収益は前期と比べて5億5,700万円増えていますし、それも受けてNOIが5億円前期より増えています。

分配金は不動産売却益15億8,300万円の80パーセントを買い替え特例で圧縮していますので、その分は内部留保していますが、結果的には先ほど申し上げたとおり1万197円の分配金で、前期比500円アップとなっています。

主な増減要因をもう少し細かく見ていきます。右側の表の中で、賃料共益費が5億6,400万円と、かなり大きく伸びています。それから、前期に取得した新宿と新潟のビルの寄与もございまして、それが1億8,800万円です。これらが収入増の主な要因です。

それから費用については公租公課というところをご覧いただきますと、昨年に評価額が上がった固定資産税がまだ上がりきっていない分の影響等もございまして、公租公課は2億3,400万円のアップとなっています。

修繕費はだいたい毎期ほぼ同じくらいを計上しているのですが、当期に関しては若干少なめだったということで、2億1,600万円のマイナスとなっています。

これが主な前期比の要因です。

6ヶ月前の予想との比較で見てみますと、たぶんご記憶だと思いますが、2019年は7月の平均気温がたまたまだいぶ低かったことなどがございまして、水道光熱費が思ったよりも低く抑えられたということで、収入と費用両サイドに影響していますが、ネットすると、どちらかというと増益要因でございます。

あとは、不動産売却益があったことと、修繕費が思ったより少なかったことがございまして、半年前の予想と比べると367円の分配金アップとなっています。

2020年3⽉期・2020年9⽉期 業績予想

続きまして、業績予想をご説明しようと思います。8ページをご覧ください。

まず左側が2020年3月期の業績予想です。ご覧のとおり、基本的には増収増益となっています。

ページ右側の上の表を見ていただきますと主な増減要因が出ていまして、この期も賃料共益費は順調に伸び、3億1,100万円のアップを見込んでいます。それから、夏場ではなくて冬場の6ヶ月間になりますので、水道光熱費は収入・費用とも減り、これはどちらかというと増益要因になります。あとは、支払利息も順調に低下傾向にあるのですが、この期は9,100万円の減少を見込んでいます。

このような増減要因があり、2020年3月期は分配金にすると1万300円と、前期比103円アップを予想しています。

念のため申し上げておきますと、この期も不動産売却益として川崎砂子ビルディングの50パーセント分の売却益がございますが、これの80パーセント分は買い換え特例で圧縮しています。

続きまして、もう1つ次の期、2020年9月期の業績予想をご説明します。

今期は不動産売却益が剥落しますが、その影響を除けば、力強く増収増益になっていると思います。

この要因は、右下の表の中に書いてあります。まず賃料共益費は4億3,000万円のアップを見込んでいます。それから水道光熱費について、こちらは逆に夏場なので収入も費用も両方増えまして、ネットすると減益要因になっています。あとは、前の期と比べると不動産売却益の15億9,000万円が減収であり減益になっています。

これらの要因によりまして、結果はご覧のとおりなのですが、分配金にすると1万400円ということで、前の期より100円アップを予想しています。

以上が、決算の数字のご説明でございます。外部成長のページに移りたいと思います。

譲渡物件の概要

11ページをご覧ください。

当期は、川崎砂子ビルディングを50パーセント売却し、翌期にも同じく50パーセント売却する予定です。合計しますと、2期合わせて30億7,800万円の譲渡益を計上いたします。その80パーセント分は買い替え特例で圧縮して積立金に回すことにしています。

(参考)リンクスクエア新宿の竣⼯

12ページです。ご参考までですが、当社が底地の一部を持っている新宿駅の近くのリンクスクエア新宿がこの度竣工しました。当社は建物の持分約37パーセントに関して優先交渉権を持っており、将来取得のチャンスはあるということで、ご紹介したいと思います。

新宿駅から5分くらいと書いてありますが、南口の高島屋があるデッキのところを歩いていくと、そのデッキから直結していますので、気分的には駅徒歩0分でアクセスできる、非常に良い立地のビルでございます。もうすでに満室で稼働しているビルです。

⼊居率・⼊替率の推移

では次、内部成長のご説明に移りたいと思います。14ページをご覧ください。

入居率は左上のグラフですが、高水準を維持していまして、9月末で99.3パーセントです。次の3月末には99.7パーセントを予想していまして、さらに改善してほぼ空室のない状態となると見込んでいます。

賃料改定の状況

15ページです。ここでは左上のグラフに関してご説明したいのですが、賃料改定・増額改定・減額改定は9期連続でプラス、要するに増額改定になっています。

グラフでご覧のとおり、直近の2019年9月期は月額あたり4,120万円の賃料改定を達成したということで、今までと比べても少し力強い賃料改定が進んでいるのが見てとれるかと思います。

賃料⽉額増減

次は16ページです。賃料月額の増減についてです。このページはときどき、とくに海外の投資家の方から「JREってどれくらい内部成長を達成しているの」っていう質問を受けたときの説明に使ったりします。

簡単に言いますと、テナントの入れ替えにはもちろんプラスとマイナスがあるのですが、ネットするとページの左側に示したように0.2パーセント上がっています。ページの真ん中あたり、内部成長の賃料改定について、今期の場合はとくに0.8パーセントと大きく上がっているのですが、両方を足しますと収入がだいたい1.0パーセント成長しています。

これは半年の資料なので「年率にすると、だいたい2.0パーセントくらい成長していますよ」と説明しています。何度も言いますが、収入が2パーセント増えているので、もしコストが一定だとすると、利益としてはたぶん4パーセント、あるいはそれ以上に成長していると、とくに海外の投資家にはご説明しています。

もちろん、レントフリーなどいろいろあるため厳密には少し誤差があるのですが、おおざっぱにいうと大きな間違いはないかなと考えています。

査定賃料・賃料ギャップの推移

次は18ページをご覧ください。

左側に査定賃料の結果が出ているのですが、当期も下落したビルは1つもなく、査定賃料が上がった物件が全体の3分の2くらいあるというイメージかと思います。

査定賃料が上がって、賃料ギャップが拡大するほうに働くのですが、一方で賃料改定を堅実に進めていることもあって、直近ではだいたい月額で3億700万円くらいの賃料ギャップと、前の期と比べてそれほど大きく変わっていないというのが今回の結果になっています。

有利⼦負債の状況①

続きまして、財務についてご説明します。20ページをご覧ください。

支払利息の低減は緩やかですがトレンドは続いていまして、とくに上の段の真ん中の「支払利息の推移」というグラフをご覧いただくと、緩やかではあるもののこの傾向がまだ続いているのがおわかりいただけるかと思います。

有利⼦負債の状況②

21ページです。

上のグラフで、一番右にLTVが書いてあります。簿価ベースでは40.4パーセントで、半年前と比べると0.1パーセント下がっています。時価ベースで計算すると32.4パーセントで、だいぶ低下してきたかなというイメージを持っています。

格付の状況は、とくに前回と変更はございません。

鑑定評価・含み損益、1⼝当たりNAVの推移

25ページまで飛んでいただきたいと思います。鑑定評価についてご説明します。

9月末のポートフォリオの鑑定評価額は1兆2,027億円となりまして、下の表に書いてあるとおりですが、含み益・含み益率も上場以来最高となっています。

この鑑定評価額を使って計算した1口当たりNAVが右上のグラフに書いてあります。2019年9月末では56万7,928円となりました。1口当たりNAVは15期連続でプラス成長しています。

ESG評価の取得

次はESGについて、非常に簡単にご説明させていただきたいと思います。28ページをご覧ください。

ここで1つ申し上げたかったのは、一番上のGRESBレーティングです。今回も9月に一番新しい結果が発表されたのですが、その9月の結果で「5 Star」という最上位をいただきました。右側に吹き出しで、自慢げに書かせていただいたのですが、国内オフィス部門(上場・非上場)の不動産会社およびREITを全部含めて「第1位」をいただいています。

それから、一番下のTCFDへの賛同・署名というところです。確か6ヶ月前に「今年はTCFDに力を入れます」と申し上げました。覚えてらっしゃらない方も多いかもしれませんが、このTCFDのオフィシャルな署名者に、J‐REITとしては初めてなりまして、つい最近ホームページ上で気候変動への取り組みに関しても開示を始めています。

以上がESGの大きなトピックスです。

最後に37ページまで飛んでください。

例によって、ゴルフに例えて今の状況を表しています。これは「J‐REIT Championship」というゴルフの大会に参加している設定なのですが、非常に天気が良くて、風もあまりなくて、絶好のゴルフ日和となっています。

そんな中で、左上のリーダーボードを見ていただくと、みなさん非常にハイスコアで、好調なプレーが継続しているという現状です。

当社もそうですが、基本的にはしっかり内部成長しているというREITがかなり多いのではと思っています。当社も、現在は内部成長がベースとなって緩やかに成長していっていると思っています。

あとは、内部成長を大切にしつつも、チャンスがあれば新しい物件を取得し、外部成長、ボーナスによって、プラスアルファでより大きな成長ができればということを考えているという我々の置かれた状況を絵で表してみました。

以上で私の説明は終わります。どうもありがとうございました。

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