2019年11月19日に行われた、日本空港ビルデング株式会社2020年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

スピーカー:日本空港ビルデング株式会社代表取締役社長執行役員兼COO 横田信秋 氏

(1)事業環境①

横田信秋氏:本日はご多忙のなか、弊社の2020年3月期第2四半期決算説明会に多数お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日は私から連結決算の総括、今期の連結業績予想、2021年3月期の見通し、そして現在進めております中計の取り組み状況などについて説明させていただきます。

それでは2ページをご覧ください。初めに、2020年3月期第2四半期の連結決算についてご説明します。

今期の事業環境で、日本政府観光局の訪日外客数統計による日本全国の訪日外国人の動向としましては、8月に訪日客数の伸びが前年を下回りましたが、上期を通じては増加傾向が続き、上期累計で3.2パーセントの増、旅客数につきましては1,636万人となりました。

訪日韓国人は8月に48パーセント、9月に58パーセント減少していますが、中国や東南アジア市場で増加傾向が続いています。またラグビーワールドカップの開催もあり、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアからの訪日客が増えていることも増加傾向に寄与しています。

そのなかで、羽田空港における日韓関係や自然災害の影響としては、国際線旅客数の他の空港との比較で、韓国便の旅客数の減少幅は少ないものの、8月以降は減少が見られます。9月、10月も対前年同月比で10パーセント以上の減と、その幅が大きくなってきております。

また、本年も9月に台風15号が首都圏を通過し、その翌日の地上交通機関の乱れにより欠航便が多数発生いたしました。昨年の地震と台風ならびに一部航空会社機材のエンジン点検による欠航便の影響のほうが大きく、その回復により旅客数全体としては増加しております。

具体的な旅客数の実績はスライドのとおりです。羽田国内線、羽田国際線、成田、関西、中部のいずれの空港でも前年実績を上回る結果となりました。

(2)連結業績

3ページをご覧ください。

このような事業環境のもと、上期の連結業績としましては、物品販売業での店舗改修に伴う一時閉鎖の影響が大きく、売上高は減収となりました。利益面においても、昨年度より供用開始いたしました施設の償却負担の増加などにより減益となりました。

2020年3月期第2四半期の連結業績につきましては、赤枠に記載のとおり、売上高は1,352億円、営業利益は111億円、経常利益は107億円、当期純利益は59億円となりました。

本年5月に発表いたしました当初予想との比較では、売上高は施設管理運営業で請負工事収入や警備受託収入、国内線・国際線の家賃収入などで予想を上回ったものの、物品販売業で商品売上が予想を下回ったため、全体として予想を下回りました。これは中国人の消費動向の減退が続いたことや、9月の台風15号で千葉県の芝山町にある当社グループの物流倉庫が被災し、銀座の市中免税店で店舗販売を行う上でさまざまな制約が生じたことなどが要因と考えられます。

一方で、利益面では、修繕費、広告宣伝費、業務委託費の発生が計画より下回ったことなどにより、営業利益、経常利益、当期純利益でそれぞれ予想を上回りました。

(1)事業環境②

4ページをご覧ください。通期の業績予想についてご説明します。下期の事業環境としては、景気の緩やかな回復が期待されるものの、中国経済や韓国・香港情勢など、予断を許さない状況が続くものと見ております。

一方で、来年3月29日からの羽田空港国際線の増便が始まることも踏まえ、今期の旅客数の予測は、羽田国内線では通期で1.2パーセント増、羽田国際線では通期で3.9パーセント増としております。また、成田、関西、中部の各空港の国際旅客につきましても、成田空港の予想を当初より下げたものの、前期比では引き続き増加するものと見ております。

(2)今期の経営課題に対する取り組み

5ページをご覧ください。

今期の経営課題としましては、羽田国際化施設の供用開始後の運用に関する準備の推進、訪日中国人の消費動向の変化への着実な対応、2020年度のガイドラインの確実な達成を見据えた利益計画の遂行の3点を掲げております。

スライドでは、これらの経営課題に対する上期の取り組みをご説明するとともに、下期の方向性を示しております。

下期におきましても予断を許さない状況が続いていますので、これらの環境変化に迅速に対応しつつ、積極的に各種施策を展開することで、業績の向上に努めてまいりたいと思っております。

(3)通期連結業績予想

6ページをご覧ください。

通期の連結業績予想としましては、売上高では航空会社への家賃収入や駐車場収入などが増加するものの、商品売上高で中国人の消費動向の減退などの要因により、当初予想は下回るものと見込んでおります。

一方、利益面では、新たな研修施設の取得に伴う一時費用が発生するものの、業務委託費、広告宣伝費などが当初計画を下回ったことや、TIATとの連結子会社化によるコスト削減効果から、営業利益、経常利益、当期純利益でそれぞれ当初予想を上回るものと見込んでおります。

次に、配当につきましてご説明します。第2四半期末の予想配当金は、1株当たり20円と予想しておりましたが、2円増配して1株当たり22円とさせていただきました。これは、上期業績で当初の予想を上回る利益を達成しましたので、株主のみなさまへの積極的な利益還元の方針に基づき、増配いたしました。

なお、期末配当につきましては、当初の予想配当金を据え置くこととします。年間配当金は前回予想から1株当たり2円増配して、42円とさせていただきたいと考えております。

今後も業績などの諸条件を総合的に勘案して、株主のみなさまに積極的に利益還元を行ってまいりたいと考えております。

(3)通期連結業績予想(TIAT連結子会社化に伴う影響額)

7ページをご覧ください。こちらは通期の連結業績予想につきまして、TIAT連結子会社化に伴う影響額を、当初の予想と修正予想のそれぞれお示ししたものです。

(4)セグメント別業績予想(売上高)

8ページをご覧ください。ここでは、通期の業績予想をセグメント別にしてお示ししております。7ページと同様に、TIATの連結子会社化に伴う影響額も記載しております。

(1)投資計画の状況

9ページをご覧ください。来期2021年3月期の業績見通しについて説明させていただきます。

まずは投資計画の状況です。前回5月に5年間の総投資額を1,820億円とご説明しましたが、今回はさらに70億円を追加して、総投資額を1,890億円に修正いたします。

増加分につきましては、おもに国際線ターミナルの保安検査所に設置されております保安検査機器の更新をTIATが実施することによる投資となります。ただし、投資額はほぼ全額が国からの補助金の対象となる予定です。

そのほかには、株式会社エージーピーの株式取得に伴うものがございます。

なお、5月に説明いたしました、より一歩踏み込んだ安全対策投資として、国際線ターミナルで地震に備えた減災対策の強化への投資がありますが、こちらは下期から一部で着手しております。ただし、その投資金額は2021年度以降に発生する予定のため、現時点での投資額には反映しておりません。

(2)業績変動に影響する要素

10ページをご覧ください。ここでは、来期の業績に影響する要素をお示ししております。

本年9月2日に国交省が、2020年3月29日からの羽田空港国際線の増便に関し、国別の配分内容を発表しました。その後の航空会社等の発表により、就航都市も明らかになってまいりました。

これで、2021年3月期は年間を通じて増便による旅客数増の効果を享受できる見通しとなりまして、当初計画に対してポジティブな内容となります。

一方、訪日中国人の消費動向の減退や、訪日韓国人、香港渡航者の減少、また、10月にも発生しましたが、台風などの自然災害による影響は、ネガティブな要因として今後の計画に影響してくるものと考えております。

(3)中期経営計画の前提条件と現状について

11ページをご覧ください。2021年3月期の収支計画の見通しですが、現時点では昨年5月に公表しました売上高3,000億円、営業利益250億円の計画を、そのまま据え置いております。

スライドには、中期経営計画策定時に見込んでいた前提と現状を示しております。前提の変化によりプラスやマイナスに影響しますが、それらを踏まえて来期計画の精査をしてまいりたいと考えております。

(1)各事業戦略の進捗状況

12ページをご覧ください。2016年度から2020年度までの5年間を計画期間とする中期経営計画の進捗状況についてご説明します。

当社の中期経営計画「To Be a World Best Airport 2020」は、取り組みの方向性に変更はございません。スライドには直近の取り組みを記載しており、太字で下線を引いている項目につきましては、13ページ以降のスライドでもご説明します。

それ以外の項目として、羽田空港の“あるべき姿”の追求では、SKYTRAX社の実施する「Global Airport Rating」におきまして、今年も世界最高水準である「5スターエアポート」を獲得いたしました。これで6年連続して「5スター」という高い評価をいただくことができました。

当社の2020年度のガイドラインの成長性指標として、SKYTRAX社の評価を掲げておりますので、引き続き高い評価をいただけるよう、関係者のみなさま方のご支援を賜りながら取り組んでまいりたいと思っております。

(2)羽田空港の“あるべき姿”の追求①

13ページをご覧ください。羽田空港の“あるべき姿”の追求として取り組んでいる第2ターミナル国際線施設の拡張工事は、2020年3月の供用開始に向け、計画どおり進捗しております。

成田へ乗り継ぎをスムーズにし、ユニバーサルで使いやすい、清潔で快適な環境をつくり、今後の観光需要の促進の一助となるよう取り組んでまいりたいと思います。

(2)羽田空港の“あるべき姿”の追求②

14ページをご覧ください。このスライドでは、今年度の追加投資となりました国際線ターミナルで進めております「FAST TRAVEL」の内容について説明しております。

顔認証機能のついた各種機器を設置することで、羽田空港から出発されるお客さまのチェックインから航空機への搭乗までの一連の流れを円滑にし、搭乗に関する諸手続きの円滑化を目指すものです。

2020年3月の増便時期に合わせて運用を開始いたしますが、その効果を検証して、さらに設置範囲を広げることも検討しております。

(3)強みを活かした事業領域の拡大・収益多元化①

15ページをご覧ください。強みを活かした事業領域の拡大・収益多元化として、戦略的に取り組んでおります免税事業全体の取り組みです。

免税事業を取り巻く環境は、主要顧客である中国人の消費動向の減退により厳しい状況にあります。また、成田空港や地方空港での卸売事業では、訪日韓国人の減少による影響をもろに受けております。

一方で、日本人の出国者数の増加など、プラス材料もあるなかで、当社は引き続き店舗改装や商品構成見直しを積極的に進めております。さらにEコマースを活用するなど、売上増収施策を進めてまいります。

市中免税事業におきましても、中国人の消費動向減退による影響が大きく、上期の売上高は対前年比でマイナスとなりました。そのため、通期の業績予想も下方修正いたしました。

下期では、10月2日に資生堂グループとコラボレートした新たなビューティ体験空間をオープンしており、さらなる需要を取り込んで売上高の増加を図ってまいります。

(3)強みを活かした事業領域の拡大・収益多元化②

16ページをご覧ください。それ以外の取り組みでは、モンゴル国の新ウランバートル空港におきまして、三菱商事を代表とする当社を含む日本企業連合が、15年間の事業権契約を締結し、2020年上期中の運営開始を目指して準備を進めているところでございます。

また、羽田空港跡地第1ゾーンの整備事業、「HANEDA INNOVATION CITY」につきましても、鹿島建設を代表企業とし、当社も出資をしている羽田みらい開発が、先端産業と文化産業を融合させることで新たな可能性・価値を生み出す発信拠点として、2020年夏の街開きへ向けて鋭意準備を進めているところでございます。

そのほかに、11月8日に適時開示しましたとおり、株式会社エージーピーの株式を取得し、持分法適用関連会社とすることとしました。エージーピーは空港に駐機している航空機に電力などを供給する動力事業のほか、航空機を安全に運航するための地上支援機材や、ビジネスジェットの取り扱いもしておりまして、空港でのグラハン業務に一定のノウハウを有しております。

当社が持つターミナル運営事業のノウハウに、エージーピーが持つグラハン事業のノウハウを連携させることで、当社の事業領域の拡大や、国内外空港の運営事業への展開など、新たなシナジーの創出の効果が発揮できるものと考えております。

◯ Environment(環境)への取り組み

17ページをご覧ください。次に、当社のESGの取り組みのなかから、今回はとくに環境への取り組みについてご紹介します。

1つ目としては、世界規模で大きな環境問題となっている海洋プラスチックごみ問題への対応として、羽田空港と成田空港の直営レストランとラウンジで、プラスチック製ストローのご提供を廃止いたしました。

一部の店舗では、ご要望をいただいたお客さまに、紙製のストローを提供しております。この改革により、年間約100万本のストロー削減を目指しているところでございます。

また、羽田空港の国際線の増便に伴い、空港内のごみの排出量の増加が予想されるため、焼却施設の増強が必要となりますが、当社では新たにリサイクル棟を建設し、ごみ焼却に伴うCO2の排出量の削減と地球環境に配慮してまいります。

6. 羽田空港の安全管理の取り組み

18ページをご覧ください。最後になりますが、羽田空港における安全管理の取り組みをご説明します。

本年は台風や大雨などの災害で、関東地方におきましても大きな被害が発生しました。被災された方々には心よりお見舞い申し上げますとともに、災害からの一日も早い復興をお祈り申し上げます。

羽田空港では、10月12日から13日にかけて通過した台風19号への対応として、空港ターミナル内に私を総本部長とする緊急対策本部を設置し、国交省を始めとした空港の関係機関と情報を共有して、空港ターミナル内で緊急時の対応に備えました。その結果、羽田空港ターミナルでは、人的・物的被害はありませんでした。

私自身も羽田空港ターミナルの安全管理は世界一であると自負しております。今後もハード面・ソフト面ともに安全管理の取り組みをより一層強化して、災害に強いターミナルを管理・運営する企業集団をつくっていきたいと思っております。そして、このことが当社の企業価値を最大限に引き上げるものと確信しております。

みなさま方におかれましてもご理解をいただき、引き続きご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。

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