台湾TSMCは、2020年通年の設備投資金額として150億~160億ドルを計画している。20年上期量産予定の5nm世代の生産能力増強を引き続き行っていくほか、フォトマスクや先端パッケージ、特殊プロセスに資金を投じていく。

5nmは20年上期から量産開始

 同社は20年の設備投資金額について、19年第3四半期決算発表時に19年と同規模になるとコメントしており、今回正式に発表されたガイダンスはミッドレンジでも前年を上回る規模となる。投資金額のうち、80%を7/5/3nmの先端プロセス、10%をマスク/先端パッケージ、10%を高耐圧などの特殊プロセスに割り当てる。

 投資の中心となっている5nmは、計画どおり20年上期から量産を開始。米アップルが20年発売予定のiPhone用プロセッサーに同プロセスの採用を決めたことで、19年7月末から生産設備の発注を一気に加速させており(グラフ参照)、装置納入は20年中も高水準で続く見通し。スマートフォンでは5Gの商用化に伴って、アプリケーションプロセッサーでの先端プロセス需要が高まっており、中国ファーウェイ傘下のハイシリコンテクノロジーズや台湾メディアテックなど複数顧客が20~21年にかけて5nmを採用する。

 19年末時点で月産4万枚程度の5nm用装置が導入されたほか、20年にかけても積極的な増強を図っていき、8万枚前後のキャパシティーを20年中に構築するものとみられる。7nm+から量産工程への導入が始まったEUVリソグラフィーについても、5nm世代は適用レイヤーが3~4倍増える見通しであるため、5nm投資は露光工程への投資割合が増えていることも特徴の1つ。なお、5nmの生産は新拠点となる台南「Fab18」で行う。

既存の7nm世代も好調

 また、7nm+プロセスを最適化し、EUVレイヤー数を増やした6nmについては、20年末までに量産を開始する。また、5nmに次ぐ3nmは4月末に開催を予定している「North America Technology Symposium」で詳細な説明を行うとした。

 既存の7nmファミリーについても、5GスマホやHPC(High Performance Computing)向けに需要が旺盛で、フル稼働の状態が続く。19~20年にかけて7nmの生産能力を月産1万枚程度増強している。

1~3月期は通常の季節性を上回る

 業績について、直近の19年10~12月期実績は、売上高が3170億台湾ドル(前四半期比8%増/前年同期比9%増)と増収を記録。営業利益率は前四半期比2.4ポイント増の39.2%となった。

 10~12月期に占める7nmの売上構成比は35%。ハイエンドスマホ、5Gの商用化、HPCなどが貢献し、金額ベースでも前四半期比4割増となった。

 同社は20年の市場全体の見通しについて、メモリーを除く半導体市場は前年比8%増、ファンドリー市場は同17%増と予想。同社の成長率はファンドリー市場の成長率を数ポイント上回る見通し。

 20年1~3月期業績は米ドルベースで売上高102億~103億ドル(中心値で前四半期比1%減)と予想。スマホの見通しについて、季節的な減少はあるものの、5Gの立ち上がりにより、通常の季節性を上回るという。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳