パナソニック㈱は12月13日、電子部品事業を手がけるインダストリアルソリューションズ(IS)社の坂本真治社長が大阪府門真市の本社で報道陣の取材に応じ、中期的な取り組みを説明した。11月22日に開催したPanasonic IR Dayの内容を改めて解説するとともに、これに前後して発表した液晶パネルの生産終了や半導体事業の譲渡に関して質問に答えた。

営業利益率2桁以上を目指す

 IS社は、材料・プロセスで差別化を図るデバイス事業、モジュール/パッケージ化を指向するシステム事業の2つを基幹事業と位置づけ、車載インダクター、xEV用フィルムコンデンサー、回路基板材料「MEGTRON」といった世界No.1シェア製品を持つ。液晶や半導体を除く基幹事業の売上高は2019年度ベースで約1兆円。

 今後は、車載CASE、情報通信インフラ、工場省人化の3つを重点領域に定め、これらで2021年度までに売上高1300億円を積み増す方針を打ち出している。また、利益率を4ポイント高め、2021年度には通過点として2桁の利益率を目指す。IS社の設備投資額(研究開発費を含む)のうち、重点3領域には3分の2を充てる考えだ。坂本氏は「足元は足りていないが、売上高1.5兆円で利益率15%を目指すべき」と意気込みを語った。

液晶は8.5G設備を売却へ

 2021年をめどに生産を終了する液晶事業については、今後2年間生産を継続し、その翌年(2022年)まで在庫の販売を継続する。生産拠点であるパナソニック液晶ディスプレイ㈱(兵庫県姫路市)は、生産終了後に電池の生産拠点として活用する予定だ。

 生産終了に至った背景について「医療用、放送局用という付加価値の高い分野に製品を絞り込んできたが、液晶業界全体がオーバーキャパになり、価格下落が激しい。医療用、放送局用だけでは8.5世代(8.5G)ラインを埋めるのは厳しい」と述べ、18年以降の価格急落が引き金になったと話した。

 8.5G生産設備については、複数社と売却交渉を進めている。「1社具体化しつつあるところがあり、まだ五分五分の状況だが、2019年度内に見極めたい」と話した。

半導体は「例外的に残す分野もある」

 台湾Nuvoton Technologyへ2020年6月に譲渡予定の半導体事業については「半導体は巨額投資を安定して実施することが必須。2019年度中の黒字化を目指してきたが、足元の市況低迷で届きそうにない。人材とIPを有効活用していただける提案をNuvoton からいただいた」と決断の背景を説明した。

 現在の半導体事業(パナソニック セミコンダクターソリューションズ㈱)の売上高は約1000億円。「イメージセンサーなどを中心とする空間認識商材と、バッテリーマネジメントICやリチウムイオン電池保護回路用MOSFETなどの電池応用商材が売上高の7割弱を占めるまでに絞り込んできたが、残り約3割には開発リソースを十分には割けず、価格競争が激しかった」と述べた。

 一方で、「例外的に一部譲渡対象でないもの、パナソニックの事業に資するものに関しては、引き続き残す分野もある」と話した。今後のシステム事業や工場省人化に不可欠なパワー半導体技術などを示唆しているとみられるが、「(Nuvotonとの)ディールが進んでいる最中であるため、具体的なコメントは差し控えたい」と述べるにとどめた。

 また、Tower Semiconductorとの合弁で運営するTPSCo(TowerJazz Panasonic Semiconductor)については「パナソニックが活用するファンドリーパートナーの1つという関係性は従来と変わらない」と語った。

郡山事業所は12月半ばに生産再開

 また、2019年10月の台風19号で浸水被害を受けた郡山事業所(福島県郡山市)については、12月中旬から一部ラインで生産を再開できる見通しとなった。郡山事業所は、回路基板材料のMEGTRONなどを生産する基幹事業の中核拠点。「(被災から)2カ月をめどに復旧させるとお話ししてきたが、ほぼオンタイムで回復してきている。ただし、工場全体がフル稼働に戻るのは1月から2月にかけてになる」と述べた。

 すでに中国の工場などで代替生産するなど対策を講じてきたが、「販売への影響は数十億円ある」。また、今後のBCP(事業継続計画)確保に向けて「阪神淡路大震災、東日本大震災で検討したものに加え、気候変動を視野に入れなければいけない。BCPの見直しが必要だ。ハザードマップを見ながらコストを見積もっていく」と語り、さらなる強化に取り組む考えを示した。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏