フェニックスバイオ、期初予想に届かずも増収 新世代医薬品開発におけるPXBマウスの評価向上

2019年12月6日に日本証券アナリスト協会で開催された、株式会社フェニックスバイオ2020年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。

スピーカー:株式会社フェニックスバイオ 代表取締役社長 島田卓 氏

2020年3月期第2四半期決算ハイライト(連結)

島田卓氏:フェニックスバイオの島田と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。それではさっそく、当社の第2四半期決算説明会を始めたいと存じます。

続きを読む

本日は業績の推移、今後の予想、事業の現状と今後の展開について、さらに関連学会の発表をご紹介し、それから研究開発全体の状況についてもご紹介したいと存じます。

まず、業績推移・予想についてです。当社の第2四半期の実績は、売上高が5億2,100万円、営業利益は1億6,500万円の損失、経常利益が1億5,500万円の損失となっています。期首の予想では売上高を7億4,300万円と置いていたため、期首比率では約マイナス30パーセントとなります。

当社は売上高を薬効薬理分野と安全性等分野で分けていますが、内訳で見ると薬効薬理分野が1億6,300万円、安全性等分野が3億5,800万円です。期首の予想と比較しますと薬効薬理が約50パーセント強マイナスになっています。安全性等分野は若干マイナスではございますが、期首予想にかなり近い実績になっており、薬効薬理分野の売上が期待どおりではなかったことがご理解いただけると思います。

前年同期は売上高が4億2,600万円、うち薬効薬理が2億600万円、安全性等分野が2億1,900万円なので、前年同期比ではプラスになっています。また、前年同期は薬効薬理と安全性等が半々という実績でしたが、今期については薬効薬理があまり伸びておらず、安全性等の分野が伸びていることがご理解いただけるかと存じます。

2020年3月期 業績予想(売上高:分野別)

スライド左側の図は、売上高について通期の予想と過去の4期と比較した図です。緑色の部分が安全性等分野、青色の部分が薬効薬理の分野です。薬効薬理の分野といっても、ほとんどがB型肝炎関連であるため、海外・国内とも、薬効薬理分野に関してはB型肝炎関連の開発状況に非常に依存する部分が大きいと言えます。

とくに海外では、今期に売上が上がる予定だった大型案件があり、1件で8,600万円という大きな試験があり、すでに受注しているものの、先方の都合によってスタートが遅れていることがあります。この売上が今期に寄与できないため、とくに今期の売上が見込みどおりではない部分に影響を与えていることがあります。

国内に関しては、主にB型肝炎創薬研究事業では、AMEDの研究事業の予算が非常に大きくてアカデミアの先生方に使っていただいているということがあります。ここであまり進んでいないところもあり、売上的には期待ほど伸びていない部分があります。

一方、安全性等分野についてです。安全性等(という名前の由来に)は、非常に多岐にわたる分野で、安全性や薬物動態などに関係しているという理由があります。そのため、セグメント分けが難しいところがあり、安全性等分野と呼んでいますが、この分野はかなり期待どおりに進んできているというのが現状です。

グラフで見ていただいてお分かりのように、まだ見通しの段階ですが、今期はとくに緑色で示した安全性等分野がかなり伸長すると考えています。青で示した薬効薬理分野がもう少し当社の期待どおり伸びてきてくれれば全体的にもう少し上がるのですが、過去4期で12億2,800万円を頭に伸び悩んでいたところを、若干ではありますが上回る増収を今のところ見込んでいます。

2020年3月期 業績予想(営業利益)

営業利益の推移に関しては、過去2期連続で約3億円ほどのマイナスになっていました。今期もマイナスがまだ残りますが、この幅はかなり小さくなると見込んでいます。

とくに経費について、売上原価だけではなくて経費に関してもあまり大きくならないように見直ししてはいますが、売上原価と研究開発費の間で少し入り繰りがあります。

2年前に買収したカナダの子会社であるKMT Hepatech, Inc.について、現在はマウスの生産を進めていますが、前期はまだ立ち上げの時期だったことがあり、(費用を)研究開発費に計上していました。今期は売上が上がってくるため、売上原価に入れています。

それに伴い、棚卸資産が計上されてきていることもありまして、研究開発費は約1億3,000万円減少しましたが、売上原価の増加は約8,500万円というのが大きな影響です。また、人件費等は若干伸びてきていますが、販管費は抑えられるものは抑えている状況です。

2020年3月期 業績予想(経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益)

経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益も同様に、過去2期では大きくマイナスで、今期もまだマイナスが残りますが、その幅はかなり小さくできるであろうと見込んでいます。

事業計画のアウトライン

続きまして、事業に関しての現況と今後の展開についてご紹介したいと存じます。

8ページの図は事業計画のアウトラインですが、上半分は現在当社が持っているサービスラインです。ヒト肝キメラマウスであるPXBマウスと、そこから採取した新鮮な肝細胞PXB-cellsをどう展開していくかです。

薬効薬理分野は、肝炎に特化しているわけですが、安全性等分野に関してどのように市場投入していくのか、どのように領域を拡大していくのかという問題があります。

新たな疾患モデル・サービスの市場投入がありますが、これはまた後で詳しくご紹介したいと思います。

領域の拡大に関しては、化学品の分野、とくに農薬に当社の技術を使っていただく。食品分野についても、当社は展開していきたいと考えています。

もう1つ、販売の拡大のために当社が取り組んでいることとして、国内外のCRO(受託機関)との提携を進めています。

今まで、PXBマウスは非常に値段の高い動物で、通常の実験動物に比べると桁が違うほど値段が高いため、少ない匹数で実験を試みた結果、うまくデータが出ないということがありました。どのような理由でデータが出なかったのかがわからないまま良くない結果が出てしまうと、当社の事業だけではなく、この技術自体が否定されてしまう可能性があるため、当社は起業した時からずっと、受託試験(というサービス)を提供していました。

当社自身の慣れた技術者が実験することで技術とデータを担保し、データに信頼性を持たせるという目的で受託試験を提供してきました。

ただ、受託試験には今申し上げたメリットがある一方で、デメリットとして受託試験のためのキャパシティが必要になります。設備や人員のキャパシティが、律速段階の1つになることがあります。

もちろん、PXBマウス(の産出)も非常に大きな律速段階ではあるのですが、マウスと受託試験の2つが律速段階になってしまうと、事業を大きく伸ばしていくのがなかなか難しい、というのが(提携理由の)1つです。

もう1つは、非常にありがたいことなのですが、最近、とくに利用が広がってきたということがあります。例えば、安全性や核酸医薬品に応用が広がってくると、当社より専門的に歴史的に持って展開してきたCROがたくさんあります。そのようなCROの技術・知識を使っていただくことが、今後さらに当社のサービスを展開していくことに非常に有利に働くだろうと考え、国内外のCROとの提携を進めています。

一方、供給体制については、現在は2年ほど前に買収したカナダの子会社(KMT Hepatech, Inc.)でマウスが生産されています。さらに、まだ設備に多少不十分な点があるため、今後は新たな設備も導入して、北米での供給体制を充実させていきたいと考えています。

研究開発としては、現在当社が所有しているPXBマウスとPXB-cellsをどのように広げていくか、という研究開発もありますが、さらに新しく展開していきたいということもあり、現在は北米を中心に展開しています。

もちろん従来から本社のある広島に研究開発チームを持ってはいるのですが、それに加えて、北米でのコンソーシアムを立ち上げ、そこに海外の製薬企業に参加していただき、応用方法や用途を考えていただきます。

加えて、ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学との共同研究に当社の研究員を派遣して、北米ならではの研究開発を進めている状況です。

安全性等分野の拡大 ①-1 市場環境:低分子医薬品からバイオ医薬品へ

さて、当社はこれから薬効薬理の分野以外で、安全性等の分野にさらに注力をしていきたいと思っており、関連事項についてご紹介します。2017年のデータということで少し古くはなりますが、9ページに示したのは、世界で一番売れた薬トップ10です。青く示したものはほとんどが抗体医薬品で、全部バイオ医薬品です。

この表を見ていただけばわかりますように、従来の低分子化合物はトップから消えつつあります。新薬がなかなか見つからないという状況の中で、伸びてきているのは抗体医薬品です。最初に「リツキサン®」が出てから、もう20年ほど経ちますが、抗体医薬品はずっと売れ続けているか、新薬が次々に投入されているという状況です。

ニュースでもだいぶ取り上げられてきていますが、昨今は新しい医薬品の領域が注目されています。モダリティと呼ばれる領域です。低分子化合物から抗体医薬品への変化もモダリティの変化です。遺伝子治療では「ヌシネルセン」、核酸医薬品では「オンパットロ」が今年に承認を受けました。

あとCAR-T細胞療法では「キムリア」が保険適用になりました。ワンショット3,349万円が保険適用になったということが、今年は非常に大きなニュースになっていました。すなわち、細胞や遺伝子という部分に直接ターゲットする医薬品が、これからのトレンドになっていくということです。とくに、新薬として注目されている、あるいは製薬企業が注目していることは、間違いないという状況です。

安全性等分野の拡大 ①-2 新世代医薬品開発での利用促進

当社が15年ほど前にPXBマウスを世の中に発表した際「何が売りか」ということをお話しするときに、肝臓がヒト型になっていること(を挙げました)。肝臓がヒトであるということは、薬を代謝するときに一番大事な肝臓での代謝が早すぎたりしないかどうか、あるいは安全性の面で、いわゆる肝障害が出ないかどうかを見るのに適しています。「マウスのものでも、イヌのものでも、サルのものでもない、ヒトの肝臓がそこにある」ということが売りだとずっとお話ししてきたのです。

そのようなメリットによって製薬企業にご使用いただいてきたのですが、ここに来て非常に注目を浴びてきているのが、核酸医薬品、細胞医薬、抗体医薬品などです。このようにヒトの細胞、ヒトの蛋白、ヒトのDNA・RNAに直接ターゲットする薬は、極端に言えば、ヒトの配列で(実験を行わ)なければ意味がありません。そのような見解が医薬品の新しいトレンドになってきています。

現在、世界中を見渡しても、臓器の1つがまるごとヒトのものである実験動物は、このヒト肝キメラマウスしかありません。ヒト肝キメラマウスを作っているのは当社だけではなく、世界中にあと2社ほどありますが。他の実験動物はすべて、遺伝子の改変などにより、一部の蛋白、一部の遺伝子がヒト型になっているだけで、臓器がまるごとヒト型になっているものはありません。

また、臓器という以前に、ヒト型の細胞が動いている実験動物(ヒト肝キメラマウス以外に)はいません。ヒト型の細胞が動いているということは、そこでヒト型の遺伝子が全て発現して、ヒト型のたんぱく質が働いているということです。そのため、このことは非常に大きなアドバンテージになると考えます。今後は、当社の動物や細胞がそのようなところ(核酸医薬品、細胞医薬、抗体医薬品などの分野)で使っていただけるのではないかと考えており、現在トレンドがそのような方向に向かっているという状況です。

安全性等分野の拡大 ①-3 新世代医薬品開発の売上実績・予定

その結果、分野ごとに売上高を分けてみると、前期から今期にかけて薬効薬理分野がだんだん縮小し、安全性等分野が今期に伸びてきていることがわかります。また、(安全性等分野を)受託試験サービスと製品販売に分けたとき、製品販売は今後、CROにお渡しすることや直接製薬企業にマウスそのものを買っていただくことで伸びていくと考えています。当社としても、ここを伸ばしていこうと考えています。

CROとの業務提携戦略

CROとの業務提携についてはすでに公表していますが、安全性等の分野では積水メディカルと、Axcelead Drug Discoveery Partners……これは武田薬品からスピンアウトされたCROです。それから、新日本科学というサルの実験で非常に実績と歴史のある会社を提携先として、当社のマウスを用いたお客さまからの受託試験を行っていただくという方針で進んでいます。

もう1つ、最近決まった新たな提携先としてハムリーという会社があります。これは茨城県の筑波に近いところにあるCROですが、ここでは肝炎の試験ができます。肝炎の試験ができる施設は非常に少ないのです。

とくにB型肝炎ウイルスの試験は非常に長くて、場所も取るし時間もかかるためお客さまのニーズになかなかうまく合わないということがあったので、そのようなところでフレキシビリティを持つためにもハムリーと提携して、試験を受託していただくという方針を進めています。

以上の委託先は全て日本企業ですが、現在は北米のCROやアジアのCROとの協議も進めています。海外でも当社がマウスを提供する立場になり、CROが試験をしたり、営業をしてくださるというかたちで売上を伸ばしていこうと考えています。

その他業務提携

CROとはまた別の業務提携として2つご紹介があります。どちらの安全性等の分野で、しかもPXB-cellsという、当社のIn vitroの肝細胞を使った商品、サービスです。

左はサイトパスファインダーという、産総研(産業技術総合研究所)からスピンアウトした会社です。スタートアップの会社なのですが、この会社はsiRNAトランスフェクションアッセイキットを持っています。

このキットは、siRNAというもので細胞のいろいろな遺伝子(の発現)を抑制することにより、なにが起こるかを見ることで、さまざまな遺伝子のスクリーニングが可能だという技術です。

使用する細胞はなんでもいいのですが、当社のPXB-cellsを組み合わせると非常に効率がよく、しかも人の遺伝子がどのように働くかすぐにわかります。サイトパスファインダーもこの商品を売っていきたいという気持ちが非常に強く、当社はこの組み合わせのためにサービスを提供するということで、業務提携を始めています。

もう1つは日立ハイテクです。日立ハイテクは主に機械を販売する会社ですが、規模は小さいものの新しい試薬を作っている分野もあります。提携内容について説明しますと、細胞のトランスポーターと呼ばれるものです。

細胞にはある化合物を積極的に取り込んだり、または積極的に吐き出していくという機能があり、そのような機能を調べるキットがあります。このキットに用いる細胞もなんでもいいのですが、やはり当社のPXB-cellsを使うことで一番正確なデータが出るため、タイアップによるこのキットの販売を開始しています。この2つが最近の動きです。

実績の蓄積とプロモーション(コンソーシアム)

コンソーシアムに関しては以前からご紹介していますが、目的は北米の製薬企業による新しい用途開発の促進です。(コンソーシアムの)条件は、自社開発品ではなくて公表できるデータを取っていただくということで、そのデータを採るために当社は全面的にサポートするということです。

半年ほど前の決算報告会では、現在核酸医薬分野において世界で一番元気のある会社が参画してくれて、核酸医薬のデータも採り始めてくれているとご紹介しましたが、最近また別の米国の大手製薬企業が参加してくださいました。こちらでは、NASHに関する有用性の検討を開始していただいています。

NASHに関してはまたあとでご紹介しますが、従来のような薬物動態や安全性だけではなくいろいろな分野に当社のサービスが利用できるということをコンソーシアムによって公表をしていただこうということで、この活動を継続して進めています。

関連学会発表

関連学会の発表についてです。論文もありますが、学会発表の数をここでお示しします。この11月までの半年間での学会の演題発表も非常に多いです。毎年着実に増えていっているということで、いろいろな研究者が世界中で当社のマウス細胞を使った研究の成果を発表してくださっているという状況です。

関連学会発表①

その中から少しピックアップしてご紹介します。10月にオーストラリアでB型肝炎ウイルスに関する国際的な研究会が開催されました。これはB型肝炎ウイルスの基礎研究に関する世界で一番権威のある学会ですが、そこで富士フイルムの方が新しい薬効の肝炎ウイルスの薬の候補を開発していると発表してくださっています。

メカニズムについては16ページに書いてあるとおりです。富士フイルムが富山化学を買収し、薬の開発もはじめているということです。名古屋市立大学との共同開発と書いていますが、先ほどご紹介したのは、AMEDのB型肝炎の研究事業です。

これは公的な研究事業で、アカデミアにしかお金が下りないのですが、その成果がこのように製薬企業にトランスファーされて、製薬企業が薬として開発していくというような流れができつつあります。

そのような製薬企業が更に臨床開発を進めていくなかで、当社のマウスや細胞を使っていただけるのではないかということを期待しています。

下段は、10月にドイツで行われた「Oligonucleotide Therapeutics Society」という、OTSと略される遺伝子治療や核酸医薬に関する国際的な学会で、国立循環器病研究センターの先生が発表してくださったものです。

in vivoで、核酸医薬の中でもアンチセンスと呼ばれるタイプの薬を当社のPXBマウスに用いた実験で(薬の)有効性と安全性を測ることができるというデータを出してくださっています。

ヒトへの有効性を見るためにPXBマウスを直接使えるというところが大きなメリットです。例えば、人型のアンチセンス薬を当社のマウスに投与することで、マウスには何も影響がありませんが、ヒトの遺伝子にだけには働くという結果が一度に観察できるということがあります。

実際、この当社のマウスを用いない場合に製薬企業がなにを行うかというと、例えばイヌには(ヒトに)近い遺伝子がありますので、イヌの遺伝子用に置き換えたアンチセンス薬を作り、それをイヌに投与するという実験が行われます。

その場合、有効性を見ることはできるかもしれません。しかし、いわゆるオフターゲット(毒性)と言われる部分の安全性(を確認できません)。イヌでは大丈夫だったが、人で大丈夫なのかまったく担保ができないというのが、研究者の方々の悩みどころです。

当社としては、本当にヒトの細胞があってヒトの臓器があるという動物を使っていただければ、有効性はもちろん安全性も広く見ることができるだろうと考えており、この実験はそのことを実証してくださった実験です。

関連学会発表②

もう1つ、NASH(Non-Alcoholic Steatohepatitis)という病気についての発表です。NASHとは何かというと、非アルコール性の脂肪肝炎のことです。「N」がついていないASH(Alcoholic Steatohepatitis)という病気がありますが、これはアルコール性の肝炎です。

アルコールを飲みすぎると肝炎になるということは、ある意味では昔からの常識でしたが、この20年ほど、NASHという、アルコールを全然飲んでいない方に起こる肝炎(が注目されています)。ウイルスが由来でもなく、理由がわからないと言われていましたが、生活習慣病であると言われています。

いわゆる脂肪肝です。炎症はなくとも、血中の脂肪が非常に高い状態が続いていると、だんだんそれが炎症を起こして、肝炎という状態になっていくのがNASHです。そのモデルが非常に注目を浴びています。

実際、日本を含む、アメリカ、ヨーロッパの臨床系の肝臓学会に行きますと、B型肝炎ウイルスも大事ですが、現在はどのようにNASHを治療するのかが非常に盛んに議論されています。

NASHのメカニズム等に関しては、後ほど少しご紹介したいと思います。

新しい技術の創出

当社による新しい技術の創出ということで、現在取り組んでいるテーマが書かれています。このなかにはin vivoのモデルもあれば、in vitroのモデルもあります。

緑色で書いている部分は、経済産業省やAMED、JST OPERAから補助金をいただいている研究で、だいたいの研究はいろいろな国内外の研究機関との共同研究として進めていますが、当社自体の規模もまだ小さいため、研究開発に投入できるリソースも限られています。

そのため、非常に多岐にわたるテーマがあるなかで、どこにリソースを投入していくかということをよく考えて、効率よく研究開発を進めていきたいと考えています。

研究開発の状況①

NASHについて、ここに絵が描いてあります。正常できれいな肝臓に脂肪が増えて、さらに炎症が起こる様子が描いてあります。炎症の先に何があるかというと、肝硬変です。肝硬変は本当に恐ろしい状態です。

現在では、肝硬変になるとそれ以前の状態には戻れないと言われています。NASHまでなら(正常に)戻ることができるということです。うまく治療するなり、生活を改善すれば戻ると言われていますが、肝硬変までいってしまうと戻れません。そのまま肝がんを発症して亡くなってしまうというケースが非常に多いという状況です。

11月に発表したのは、ある特殊なエサを与えると、当社のマウスがNASHの状態になるという実験です。これはヨーロッパにあるNASHの研究に非常に強いCROとの共同研究です。「GAN diet」というのは、いわゆる西洋型の食事で、脂肪が多い、果糖が多いなどというような特徴があります。これをずっと食べさせていると、だんだんNASHの状態になっていくということです。スライド中央あたりの画像の中にBallooningと書いてあります。

同じことを普通のマウスで行っても一応再現できますが、Ballooningの他いくつかの特徴はマウスでは見ることができない特徴で、これは実際に臨床において患者さまの肝臓で見られる状態です。

当社のPXBマウスはヒトに非常に近いかたちにできているということです。やはり普通のマウスを使うよりは、当社のPXBマウスを使ってNASHの研究をしていただいたほうが、より臨床に近く、新しい薬を開発する時により有効なのではないかということについて、当社は一部を証明できていると考えています。

実際、先ほどのコンソーシアムでもNASH関連に興味を持っている会社が入ってきていますし、こちらでは現在引き合いをたくさんいただいています。

何が原因でNASHになるのかはなかなか難しい問題で、いろいろな原因が考えられます。そのため、これだけですべてを証明できる、あるいはピックアップできるというものではありませんが、そのうちの1つとして非常に有望視されているということをご理解いただけたらと思います。

研究開発の状況②

ほかの研究開発についてもピックアップしていきます。OTC欠損症モデルの開発は以前も少しご紹介しましたが、OTC欠損症は遺伝病です。スライド下部に説明が書いてありますが、もともと持って生まれた遺伝子によってアンモニアをうまく代謝できず、症状が軽ければどうにか生きることができますが、症状が重いとかなり小さいうちに亡くなってしまうという、非常に重篤な病気です。

この病気ではとくに肝臓においてそれが発現していて、OTC欠損症患者の肝臓を当社のPXBマウスに移植するとまったく同じ症状が起こるということが証明できたと発表したのですが、実際にこのことについて興味を持っている製薬企業があります。

やはり、アンチセンス薬のターゲットとしてはまだ遺伝病が多く、(OTC欠損症も)遺伝病なのですが、いわゆる希少疾患に注目が集まっているというのも現在のトレンドの1つです。

武田薬品工業がShire社を買収したのも、(Shire社が)そのような希少疾患にかなり強いというのが要因の1つだと聞いています。実際に当社も、このような希少疾患に興味を持っている会社から引き合いをいただいている状況です。

あとは「Liver/Gut on-a-chip」というものがあります。これは、ホールボディを使うのではなく、例えば脳、肺、胃、肝臓、腎臓といったようにいろいろな細胞を集めることによって、1つのchipのなかでいろいろな状況が把握できるのではないかという再生医療の一種です。

「人体模倣システム」というのが日本語での言い方なのですが、当社はそこに参画し、細胞を供給しているという状況です。

研究開発の状況③

それから、核酸医薬についてです。核酸医薬の場合、オフターゲット(毒性)と言われますが、どこに副作用が出てくるかわからないというのが現状です。

現在、国立衛生研究所の先生がリーダーを務める核酸医薬の肝毒性の検討が始まっていて、そこに当社のマウスを使っていただくことについて検討が進行しています。

もう1つ、これは経産省の補助金をいただいて進めてきたのですが、当社のPXB-cellsを脂質代謝の研究に使うという考え方です。共同研究先は秋田県総合食品研究センターです。つい最近に神戸でその発表がありました。in vitroで脂質の変化を見るということができるというとあまりインパクトがありませんが、これは、食品に使えるということなのです。

先ほど最先端の薬はどういうものかお話ししましたが、一方でなかなか新薬が出ないということもあり、医療費だけはどんどん高騰していくというなかで、日本も含め、世界中で考えられているのは、病気になりそうな状態からどのように戻していくのかということです。

薬ではなく、健康食品としてそのような機能を持たせるということで、現在政府も新しいジャンルを設けて、機能性食品を充実させていこうという動きがあります。

当社の素材としては脂質の代謝改善で、いわゆる脂肪肝になったりというのを抑えるためにどのような食品がいいのかということをスクリーニングし、薬効を見ていくために当社のPXB-cellsを使用できるということに、今後の当社としては期待しています。

分野として、薬だけではなく食品に伸ばしていく時に、このような技術が有用だろうと期待しているところです。

論文

最後に論文についてです。『PLOS ONE』という、ここ20年ぐらいで有名になり、トップジャーナルの1つになってきている雑誌で2015年に掲載された論文のなかで、当社の論文の引用数(サイテーション)がトップ10に入ったという通知がありました。

サイテーションというのは、論文の価値を見る際の重要なキーの1つです。要するに、その論文がほかの研究者にどれだけ影響を与えているのかといったことです。たくさんの研究者がこの論文を引用しているということは、当社の技術を使っている、あるいは当社の知見を使って新しい研究をしているということであるため、(当社の研究が)サイエンティフィックな面からも非常にインパクトのある研究であるということです。

同時に、当社のPXBマウスやPXB-cellsを使おうとしている研究者の方々も、当然このようなところに注目しているということです。これは直接的ではありませんが、当社の技術がそのようなサイエンスの分野でも非常に注目されているということを証明するデータの1つかなと思います。

私からの説明は以上で終わります。どうもありがとうございました。

記事提供:ログミーファイナンス

参考記事

ニュースレター

メールアドレスをご登録いただくと、毎朝LIMOの更新情報をお届けいたします。