術後はそのまま入院です。今の時代「おひとり様」が多いので、下着から歯ブラシ、何から何までお金を払えば手に入ります。誰も見舞いにきてくれなくても、どうにかなります。しかし病院はホテルではないので、「飲料水」は自分で売店に行って購入しなければなりません。

手術後はしばらく動けなかったので、夫が見舞いに来てくれたときは助かりました。

看護師さんは人手不足のため、ほとんどの人が忙しすぎてイライラしており、包帯の交換も悪くて頼むのに躊躇しました。

また、消灯前のナースコールの回数が尋常ではなかったのです。同じ人が何度も押しているのでしょうが、看護師さんは走り回って息切れしていました。

1つの病院しか入院したことがないので一般化できませんが、医療や介護現場の人手不足は自分の想像以上なのではないか、と実感したのでした。

妻・母親業、そんなに頑張らなくても良かった

平日は、ワンオペ家事・育児です。妻であり母である筆者が突然家に帰らない…夫・子どもたちはさぞ驚いたことでしょう。

…いえ、それが全然だったのです。夫は職場の人の理解もあり、家事や育児、仕事をうまく両立させていました。下の子はまだ1歳になりたてで断乳をしていなかったのですが、あっさり断乳。上の子も「ゆっくり休んでね」と、あっけらかんとしていました。

筆者は「私がいなくなったら、大変なことになるに違いない」と思っていました。自信があったのです。だって、家事も育児もこれだけやって家庭に貢献しているんだもの。いなくなったらみんな困るでしょ?って。

でも実際はそうじゃなかった。仕事は、私の代わりはいます。それは初めから分かっていました。でも、「家族」は違うよね、と。「家庭に私はなくてはならない存在だ」と、信じて疑わなかったのです。

そうではないことを知ったときは寂しく思いましたが、でも「良かった」とも思ったのです。大学病院の医師に『もう少し来てくれるのが遅かったら、危なかったよ』と言われました。

お恥ずかしながら、自分が死ぬなんて考えたこともなかったのです。でも誰でもいつ死ぬか分かりません。そんなこと考えたくないですが、その日が来てもいいように、毎日を丁寧に生きるべきでしょう。

そして「私がいなくても大丈夫なんだ」と思わせてくれた、夫の頑張りはあっぱれだと思います。とても感謝しているのと同時に、普段からもっと頼っていこう…と密かに企んでいます。

「健康」を失って

術後の経過は良好で、2週間で退院できましたが通院は続きました。

病院では、いろんな人と出会いました。夜中ずっと『苦しいよ―』と叫んでいる人がいたり、子どもの付き添いでずっと病院にいるお母さん、生まれてから1度も病院から出たことがないという子まで。

こんな世界があるなんて知りませんでした。患者さんはもちろん、医療関係者の方々には頭が下がる思いです。

授乳や忙しさを理由に献血に行きそびれていましたが、行こうとも思いました。自分にできることをしたいです。

そして「人手不足」問題。これは本当に深刻です。テクノロジーの導入や働き方改革は、医療現場にこそ必要でしょう。誰かのために頑張っている人が幸せに働ける社会になることを願っています。

【参考】
「健康意識に関する調査」厚生労働省
「男女の健康意識に関する調査報告書」内閣府

尾藤 ちよ子