ドラマや映画を観るとき、「禁断の愛」という言葉に惹きつけられる視聴者は多いでしょう。実際、よく目にする文言ではないでしょうか。しかし「禁断の愛」と一言にいっても不倫や年の差、兄妹、教師と生徒など形はさまざまです。

7月から9月に放送された連続ドラマでは、少年犯罪を絡めた遠藤憲一さん主演の『それぞれの断崖』(東海テレビ)のほかに、不倫を扱った『偽装不倫』(日本テレビ)、夫が3人の妻を”シェア”するという斬新な設定を展開した『私、旦那をシェアしてた』(読売テレビ)がありました。

今回は、この3作品の中でも最も「禁断の愛」をストレートに描いたといえるドラマ『それぞれの断崖』を中心に、なぜ視聴者はこのようなテーマに惹かれるのか、現実において禁忌の恋愛をなぜフィクションで描くのか、考えてみたいと思います。

とある少年犯罪の被害者の父・加害者の母が恋愛に発展

「オトナの土ドラ」枠で放送されたドラマ『それぞれの断崖』(全8話)。

主人公・恭一郎(遠藤憲一さん)の息子が、親しくしていた同級生に殺害される事件が起きます。加害少年と、その母親にも強い怒りと憎しみを持っていた恭一郎でしたが、ある時、加害少年・満(清水大登)の母・はつみ(田中美里さん)が働く店に立ち寄り、自身の素性を偽って接するうちに、はつみの儚げな美しさに惹かれます。

恭一郎は加害少年の母であると知っていながら、放っておくことができなくなるのです。事情を知らずにいたはつみも、恭一郎に次第に心を寄せるようになり、恋愛に発展します。

本作で指摘するべきは、加害少年の母であるはつみが、事件後も同じ場所に住み続け、恭一郎をはじめとした被害者家族と簡単に接触できる距離で生活していたことです。

また、加害少年・満の担当弁護士も、事件後の被害者家族と加害者の母に面識があると知っていながら、現実的な対応を取らなかったことも問題だといえるでしょう。

フィクションということを踏まえて、これらの問題を抜きにしても、被害者と加害者であるという立場を越えて恋愛に発展するほどの決定的な出来事や、人間的魅力は描かれていなかったと言って良いでしょう。

加害者側であるはつみには夫がおらず、加害少年以外には子どももいませんが、恭一郎には妻がいて、娘が2人います。家庭の状況も考えると、恭一郎がはつみに惹かれた理由が不十分でした。視聴者がみて、ストーリー上納得できるような出来事がほしかったところです。

「禁断の愛」があったからこそ、見えた真実