ある日のこと。Aさんは、現在高校生の娘であるN美さんと、将来どんな人と結婚するのがよいかという話をしていました。『やっぱり、ある程度の経済力は必要よね』とAさん。すると、N美さんは「ある程度の経済力って、年収1000万円?」と、言いました。そして「お母さん、同じ1000万円でも、年収1000万円と貯金1000万円、どっちの男性の方がいいのかな?」

年収1000万円と貯金1000万円。どちらにしてもこれまでの人生には縁のなかった数字です。『うーん、どっちだろう?』Aさんは返答に困ってしまいました。

年収1000万円の人と貯蓄1000万円の人は、世の中にどのぐらいいるもの?

さてAさんが返答に窮した、娘さんの『1000万円に対する疑問』。実際問題、世の中にはどのぐらいの人が該当するのでしょうか。

まずは、年収1000万円から。2018年9月に国税庁が公表した「平成29年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者は4945万人と示されています。そのうち、1000万円以上の年収を得ている人は222万人。つまり全体の4.4%となります。

なお、この調査で算出された平均給与は432万円です。これらを踏まえると、年収1000万円がいかに少数派であるかが分かりますね。

一方、貯金1000万円を達成している割合はどのくらいなのでしょうか。金融広報中央委員会(知るぽると)の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]平成30年調査結果」をみてみましょう。

この調査では、金融資産の保有額(平均値)は744万円となっています。また、「データを順番に並べて真ん中にある数値」である中央値は、50万円です。なお、この平均値・中央値は「金融資産を保有していない世帯」を含んでおり、「金融資産保有世帯」だけの金融資産保有額(平均値)は1234万円と1000万円を超えています(中央値は350万円)。金融資産保有額が1000万円以上あるのは、全体の29.8%となっています。

※ここでいう「金融資産」とは、家計が保有する金融商品のうち、貴金属や現金、事業のために保有している金融商品、預貯金のうち日常的な出し入れや引落しなど生活費に対応する部分を除いた「運用のため、または将来に備えて保有している部分」となっています。これに対して「金融商品保有額」とは、上記に加えて「運用目的ではない預貯金(日常的な出し入れや引落しなど生活費に対応する部分)」を含んでいます。

※「金融資産を保有していない世帯」とは、預貯金や株式などの金融商品を保有していない世帯と、預貯金のみは保有していてもそのうち「運用または将来の備え」がゼロの世帯を指します。

こうみると、給与所得者の4.4%しか達成していない年収1000万円より、1000万円を貯めている人が多いように感じます。年収1000万円以上の男性よりも、貯蓄1000万円以上の男性のほうが、出会いの数は多いかもしれません。

年収1000万円でも貯蓄があるとはかぎらない