息子は筆者の連れ子のため、夫からしてみれば突然「父親」になるわけで、心がついていかないのだと思う。

血のつながっていない子どもと親子関係を築く方法…なんて、書籍を読んでもインターネットで検索してもピンとくるものはなく、気軽に周囲に相談できる内容でもない。息子が就寝後は夫婦の話し合いを繰り返した。

子どもと接する時間の積み重ね…ということもあるが、たぶんこれは家族全員が「血のつながりは関係ない」と心の底から思うことが重要なように感じた。

しかし再婚前からそう思える人は少ないのだとも思う。実際に一緒に生活をして初めて気づく「生活習慣の違い」「価値観の違い」は大なり小なり夫婦にもあるが、もちろん親子関係にも存在する。親子は夫婦と違って、自らが選んだ関係ではない。「相手の連れ子だから注意できない」と親が思うこともあるだろうし、子どもからしても「知らない人が家にいて『親ぶってる』のは嫌だ」と思うかもしれない。『もし血のつながっている本当の親子だったら…』口には出さないが、何度も考えてしまう。

しかし「血のつながりがある親子」だから、その関係性を築く努力をしていないかというと、そうではない。親も子も悩みながら、時にはぶつかりながら生活していく。逆に血がつながっているからこそ、関係がこじれてしまうこともある。

現在の夫は、このような悩みは言わなくなった。どう思っているのか聞いたところ、「もはや関係ない。息子が自分と血縁関係がないことを知っても大丈夫な気がする」とのことで、今はそれよりも「男同士だと厳しくしてしまうことが多くて、反省している」「進学先どうしよう」などで悩んでいるらしい。

「僕のこと、前の名字で呼ばないで!」

子連れ再婚で悩むことが多いであろう、「子どもの名字どうする問題」。筆者はシングルマザーからの再婚で、旧姓から夫の名字になった。当時の息子は保育園に通っており、保育園は何でもかんでも記名するので、年度途中で名前が変わるのは先生方に迷惑だと考えた。そのため新年度でクラスが変わるタイミングで、名字を変更することにした。

息子本人は「前の名字(旧姓)の方がカッコいい」と文句を言っていたが、すぐに慣れていた。また現在の夫が息子と初めて会ったとき、フルネームで自己紹介しており、「新しい父親と仲間になった」という印のようなもの…という印象が強かったようだ。

保育園では、友人間で名字を呼ぶことはあまりない。

しかし、毎日1度だけフルネームで呼ばれることがあった…それは朝の会の出欠確認。3歳の子どもたちは様々な反応を示した。自然と新しい名字で息子を認識してくれる子、卒園まで前の名字で呼び続ける子、なぜか2年後に新しい名字で認識し直してくれる子…。子どもたちそれぞれ違う反応だったが、名字が変わったことでいじめられる…ということはなかった。

ただ1人の子だけ、「やーい、△△(前の名字)くん!」と、息子とふざけあっている時にわざと前の名字で呼ぶ子がおり、これは年長まで繰り返された。しかもなぜか息子をいじる時だけ前の名字で呼ぶので、息子も「前の名字=人にからかわれている」と認識していたようだ。

これに気づいたのが、夫婦の会話でたまたま筆者が旧姓を口にしたことがあり、その際息子が「△△(前の名字)って呼ばないで!」と激怒したことで、そのことが発覚した。

3歳といえども、名字変更に配慮は必要であった。筆者の考えが甘く、息子に嫌な思いをさせてしまった…と反省している。

まとめにかえて

子連れ再婚の悩み、というと「子どもを振り回して…そりゃ親は悩んで当然」「最初から分かり切っていたことでは?」など、周囲に冷たくされがちだ。

結婚して初めて分かることがあるように、再婚して初めて分かることもある。そのような悩みを打ち明けられるような場所もできつつあるが、まだまだ1人で抱え込みやすいのが現状だ。悩みを打ち明けられるような周囲の人や場所を見つけることも、家族関係を築く助けになる。「ステップファミリー」も1つの家族のかたち…と自然に受け入れられる社会を目指したい。

【参考】
平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況』厚生労働省

尾藤 ちよ子