長生きすればするだけお金を使い果たしてしまうかもしれない「長生きリスク」。厚生労働省が2019年7月に発表した「平成30年簡易生命表の概況」によると、日本の平均寿命は男性で81.25年、女性で87.32年となり、男女ともに過去最高を更新しました。老後の生活は年金を頼りにするケースが多いと思いますが、それだけで足りるのでしょうか。ここでは厚生年金を中心に見ていきます。

現状の公的年金の月額はどのくらい?

2019年1月に厚生労働省が発表したプレスリリース、「平成31年度の年金額改定についてお知らせします」によると、改定後の新規裁定者(67歳以下)の年金額の例(月額)は下記のようになっています。

国民年金 6万5008円
厚生年金 22万1504円

国民年金の受給例は満額受給者1人分です。つまり、自営業やフリーランス同士、または自営業と専業主婦(主夫)の場合、2人分でも13万円程度となります。

一方、厚生年金の受給例は「夫が平均月収42.8万円で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯」をモデル世帯としています。実際には夫の平均収入金額によって、あるいは妻が厚生年金に加入している場合などで世帯の受給額は変わってきます。

消費支出と年金受給額の差の目安はどのくらい?

必要となる老後資金の目安を把握するためには、「老後の生活にお金がいくらかかるのか」を知ることが大切です。2019年5月に総務省統計局が発表した『家計調査報告(家計収支編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)』によると、60代と70代の1カ月平均の消費支出額は下記の通りです。

60代・・・29万1019円
70代・・・23万7034円

なお、この調査の消費支出には、食料や住居、光熱・水道や家具・家事用品、被服及び履物や保険医療費などの項目が含まれます。当然のことながら上記は平均値なので、持ち家か賃貸か、居住する地域がどこかといった個別の生活スタイルによって支出額は異なってきます。

さて、この平均消費支出金額と、前項に記した厚生年金のモデル世帯の受給金額(22万1504円)の差を求めてみましょう。すると、60代では年金だけでは6万9515円不足、70代では1万5530円不足となります。

仮に65歳の受給開始から毎月6万9515円ずつ不足する場合、1年間で約83万4000円の赤字になります。単純計算すると10年間で834万円の赤字。65歳から85歳までの20年間とすると、平成31年度モデル世帯と同等の年金額が得られる世帯では年金以外に約1668万円の老後資金が必要になるという計算です。

また、60歳定年で仕事をやめるとすると、65歳の年金受給開始まで月の消費額29万1019円 × 5年間=約1746万円が別途必要になります。「貯蓄をそんなに用意できない」という場合は年金受給ギリギリまで働くことが必要になるかもしれません。

ただし上記の計算は、退職後の生活費が現役時代と同じ水準という前提です。一般的に退職後の生活費は退職直前の7割程度とも言われます。退職後の生活費をどれだけ抑えるかも考える必要がありますが、そのためには地方移住なども選択肢に入るでしょう。

老後資金が不安な人がチェックすべきポイントは?