2. 公的年金だけで生活している高齢者世帯はどれくらいか。高齢者の生活意識とは?

つづいて、公的年金が高齢者世帯の暮らしをどう支えているか、生活意識はどうかをみていきます。出所は厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」です。ここでの「高齢者世帯」とは、65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯を指します。

2.1 公的年金・恩給が総所得に占める割合

2023(令和5)年の高齢者世帯における所得の内訳は、公的年金・恩給が63.5%、稼働所得(働いて得る所得)が25.3%などとなっています。所得の6割超を公的年金・恩給が支えており、暮らしの大きな柱になっていることが分かります。

さらに、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、公的年金・恩給が総所得に占める割合別の構成は次のとおりです。

  • 100%の世帯:43.4%
  • 80〜100%未満の世帯:16.4%
  • 60〜80%未満の世帯:15.2%
  • 40〜60%未満の世帯:12.9%
  • 20〜40%未満の世帯:8.2%
  • 20%未満の世帯:4.0%

公的年金・恩給だけで生活できている(公的年金・恩給が総所得の100%)高齢者世帯は43.4%にのぼります。80%以上まで広げると59.8%で、約6割の高齢者世帯が公的年金で暮らしの大半をまかなえている計算です。年金額や物価の動きが家計に与える影響が大きいことも、あわせて読み取れます。

2.2 生活意識「苦しい」は高齢者世帯で55.8%

同資料で2024年7月時点で世帯の生活意識を聞いた結果、「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)の割合は次のとおりです。

  • 全世帯:58.9%
  • 高齢者世帯:55.8%
  • 児童のいる世帯:64.3%

高齢者世帯は全世帯より3.1ポイント低いものの、半数を超える55.8%が「苦しい」と感じています。前年(2023年)の59.0%からは少し改善しましたが、依然として2世帯に1世帯以上が暮らし向きにゆとりを感じていません。

物価の上昇が続けば、年金が収入の柱となる世帯では実質的な目減りも家計に響いてきます。

3. これからの備え方を考える

貯蓄の水準と、公的年金で暮らせている世帯の状況・生活意識をふまえて、これからの備え方の選択肢を解説します。一般的に挙げられる二つの方向をみていきましょう。

3.1 取り崩しのペースをつかむ、年金の受け取り方を工夫する

すでに退職している場合は、貯蓄をどのペースで取り崩していくかが家計の持続性を左右します。月々の生活費から年金収入を差し引いた不足分を計算し、何年分の備えになっているかを「見える化」しておくと安心です。

まだ年金を受け取り始めていない方には、繰下げ受給という選択肢もあります。原則、1か月繰下げるごとに0.7%、最大で75歳まで繰下げると84%増額され、増えた年金は一生涯続きます。長く働く予定がある人や、当面の生活費を貯蓄でまかなえる人にとっては、検討の余地がある仕組みです。ただし、本当に得かは個人差があるので慎重に検討しましょう。

3.2 固定費の見直しと、自分にあった働き方を続ける

家計を支える柱は、入ってくるお金と出ていくお金です。通信費や保険料など、長く払い続けている固定費を見直すと、年単位で大きな差になることがあります。

あわせて、自分にあった働き方で収入を続けるという選択肢もあります。年金を受け取りながら働く場合は、在職老齢年金(厚生年金)の影響を確認したうえで、無理のないペースを選ぶことが大切です。

また、資産運用については、新NISAやiDeCoといった税制優遇のある制度が選択肢の一つですが、運用には元本割れのリスクがあります。当面の生活資金は預貯金で確保し、余裕資金の範囲で考えるのが基本です。

4. まとめにかえて

60・70歳代二人以上世帯の貯蓄額は、平均でみると2400万〜2700万円台ですが、中央値は1100万〜1400万円台と差があります。「貯蓄ゼロ」の世帯と「2000万円以上」の世帯がそれぞれ1割超〜4割近くに分かれており、一つの数字で語るのは難しい実態がうかがえます。

そして高齢者世帯の所得は6割超が公的年金・恩給で構成され、公的年金だけで暮らせている世帯が4割を超えます。生活意識でも半数以上が「苦しい」と答えており、年金額や物価の動きが家計に与える影響は小さくありません。

貯蓄の平均・中央値だけでなく、所得の内訳や暮らしの感じ方もあわせて確認することで、いま自分の家計がどの位置にあるのかが見えやすくなります。ご自身の状況と照らしあわせながら、これからの備え方をゆっくり考えていきたいものです。

参考資料

宮野 茉莉子