2019年7月22日に行われた、大江戸温泉リート投資法人2019年5月期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料
スピーカー:大江戸温泉アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 今西文則 氏
今西文則氏:改めまして、みなさま、本日はお忙しいなかありがとうございます。本日は決算説明会ということで、直近の業績等がメインのテーマではございますが、せっかくの機会でございますので、中長期的な視点から少しでもみなさまのご疑問にお答えできる説明会になればと考えております。最初に概括を申しますと、私どももようやく第6期の決算を迎えました。この8月には上場してから丸3年が経ち、もうリートとしての初期段階は過ぎまして、次の段階へ向けてステップアップをしていかなくてはならない時期であるかと考えております。
みなさまの中には正直「このリートは最近あまり大きなニュースもなく、粛々としているように見えるけれど、次のステップに向けた動きはどうなっているのか」といったご懸念や、とくに最近は「外部成長が少し滞っているのではないか」というご懸念をされている方がいらっしゃるかもしれません。
すでに一部リリースされていますように、スポンサーである大江戸温泉物語グループは引き続き新規店舗の取得・再生・出店を続けております。したがって、スポンサーパイプラインそのものは順調に積み上がってきておりますが、当社への組み入れについてはどうなのかということについては後ほど少しご説明したいと思っております。
水面下の話になりますが、一方でこの一年ほど我々はスポンサー以外からの物件のソーシング活動にも注力しておりまして、大江戸物件をコアとしつつも次の外部成長の機会を伺っております。多様性と分散の強化につながるポートフォリオの質的な成長も目指すべく、ブリッジストラクチャー等の活用も含めて、現在ソーシングの積み上げに取り組んでいるところでございます。
したがいまして本日はテナントである大江戸温泉物語グループの動向、それから今期決算の内容をご説明し、合わせて今後のポートフォリオの構築戦略についても少しお話しさせていただければと思います。
以下はスライドに沿いまして説明させていただきますので、ご協力よろしくお願いいたします。
ポートフォリオ全体の運営実績
それではまず、今期の運用ハイライトをご報告いたします。テナントである大江戸温泉物語グループの営業収益、すなわちトップラインにかかるいくつかのKPIの状況を物件全体の平均値を用いて示しております。
スライド右上のグラフをご覧いただきますと、前年同期との比較におきまして、おかげさまで稼働率・ADRとも少しずつですが上昇し、RevPARについては前年同期比で2.6パーセントのプラスとなりました。
後ほど説明しますが、正直に申し上げると施設ごとに好調と不調の差はございますものの、全体としては好調組が引っ張り、さらに今年はゴールデンウィークの10連休等もあったことが寄与したかたちとなりました。
総じて、大江戸温泉物語グループのメイン顧客であります国内のシニア層、ファミリー層からのお手頃価格帯温泉レジャーのニーズは安定的に強く、おかげさまで大江戸モデルも競合先に対して一定の優位性を保ち続けているといえるかと思います。この点は後ほど、時間軸を長くとったトレンドによってご確認いただきたいと考えております。
変動賃料の増減
次に、変動賃料の増減をご覧ください。第4期のはじめに取得した5物件はすべて前期までは固定値でございましたので、全物件についてGOPに連動した変動賃料が始まったのはこの6期からでございます。
ちなみに第5期については当初の旧保有物件について2017年9月から2018年8月まで、第6期については全物件について2018年3月から2019年2月までのGOPの1年間の実績にリンクして変動賃料が発生しております。
右端にございますように、GOPレベルでは好調と不調の差が見られました。好調の維持、もしくは不調からの改善が見られる施設としては、伊東ホテルニュー岡部やあたみなど伊豆半島所在の3施設、長崎ホテル清風、きのさき等でございます。
残念ながら苦戦している施設としては、既に前回の業績予想にも織り込んではおりましたが鳴子温泉の幸雲閣が変動賃料発生基準のGOPに達せず大きく落ちこみ、会津若松に近い東山グランドホテルも取得時の想定より少しマイナスとなるなど、今後の対策を要する施設もございます。
各物件の営業状況については、スポンサーでありテナントでもある大江戸温泉物語と原則として月に1回マネジメントレベルの意見交換を行い、課題施設については私どもからも強く対策を求めるなどして個別に具体的な施策を講じてもらっております。
例えばで稼働率の嵩上げについては、販売促進、バス便等のアクセス改善、団体客の多い施設では営業の強化、また幸雲閣などで比較的空室の多い時期に大江戸温泉としては今まであまり働きかけていなかったインバウンドへ向けての営業などにも取り組んでおります。
しかしながら、こういった施策はともすれば販促費等の経費が先行することにもなるため、一時的にはGOPの落ち込みを増幅するきらいもございます。今後も引き続きテナントとのコミュニケーションを充実させ、対応を続けたいと考えております。
全体としては、今期の変動賃料額は前期に比べ約100万円の減少となりましたが、もともとご案内していたように第一賃料に占める変動賃料の構成比は7パーセント台と低く、賃料収入全体の安定性は継続していると合わせて申し添えさせていただきます。
財務の状況〜リファイナンスの実施
次にハイライトとして財務面についてです。2019年5月末に上場した際の長期借入の一部が返済期日を迎えたため、リファイナンスを行いました。
長期の借入が合計66億7,600万円でございましたが、これを3年間のものと4年間のものに分けてリファイナンスをしております。また合わせて、1年前に実行した貯金残高4億円の借入金についても、5,000万円を手元資金で減額し、折り返しまして3億5,000万円の短期借入を同時に実施しております。
この結果、有利子負債合計約157億円に対する平均の残存年数は、前期末の1.4年から1年伸びまして、今期末は2.4年になっております。また、地域に根ざしたポートフォリオという特徴も踏まえ、地方銀行さまを中心に新規レンダーの獲得に注力し、今回のリファイナンスでは群馬県の東和銀行さまに新規に加わっていただいております。
主要指標の推移(1)
先ほど申しましたように、主要な指標の推移についてIPOからのトレンドを長期でご確認していただければと思います。リートにとっての重要指標を6ページに並べております。
1口当たり分配金は、変則決算となった第1期を除きましておおむね2,400円前後で安定的に推移しております。後ほどご説明する第7期と第8期の予想においては、遺憾ながら2,300円台に低下いたしますが、第8期については2年に1度の投資主総会の費用が含まれるという一時的な要因もございます。
しかしながら、一旦2,400円台半ばにまで上昇した1口当たり分配金が少しずつ低下したのは、主として減価償却費が原因でございます。現状のポートフォリオでは比較的築古物件が中心で、貸与年数の短い設備等の帳簿上の価額が少なくございまして、毎年の更新キャペックスによって新たな償却資産が増えていく一方、既存の資産の償却が減ることが少ないために、半年間で500万円、600万円程度の減価償却費の増加がございます。
このことは右上の1口当たりFFOのグラフでご確認いただけますが、FFOは4,200円程度で安定していることがわかります。この減価償却費の負担と、他の大手リートさんの6割後半という数字に比べると現状で57パーセント程度という低めのペイアウトレシオが本投資法人の課題の1つであると考えております。
以上を踏まえ、今後の外部成長において築浅の物件や都市部の物件など償却負担率の低い物件を入れまして、ポートフォリオのバランスをある程度改善する必要がございます。これは課題であると同時に、実現できればポテンシャルにもなると思っております。
減価償却が多いということは内部キャッシュ・フローがあるということでもございます。現在の年間で約8億6,000万円ほどの減価償却に対し、必要キャペックスは年間で平均3億6,000万円程度でございますので、その差額の一部が借入金の返済に回り、LTVはご覧のように緩やかに低下してきております。
とくに鑑定評価に基づく時価ベースのLTVは30パーセント台半ばとなっており、将来に向けた資金調達の余力を創出していきたいと考えております。
1口当たりNAVにつきましては上場以来着実に上昇を続けております。安定した賃料収入に基づく鑑定評価に加え、先般決定したレオマリゾートや長崎ほか3施設での賃料の引き上げといった賃料改定も、全体としては鑑定評価額を引き上げる結果となりました。物件の簿価の償却スピードも速いことから、含み益の増加に寄与しております。
主要指標の推移(2)〜テナントの運営実績
テナントの運営実績を長期トレンドで見て、季節変動ということで申しますと、投資法人にとっての奇数期、例えば第3期、第5期などはハイシーズンである夏休み時期を含みますので、自然と稼働率およびRevPARは偶数期より高い傾向にあるものの、あまり大きな差はなく、年間を通じて80パーセント台後半の高い稼働を安定的に実現しているといえます。第4期からは、物件数が9から14に増加しています。
これらの指標は安定的ではありますが、逆にいえば大きく伸びているわけではございません。しかしながら今期は、ADRについて3万円台を確保しております。これは、偶数期であるにも関わらず3万円を確保しているということで、トレンドとしては少しづつですが増加傾向にあると考えているところでございます。
第6期(2019年5⽉期)の決算概要
前置きがたくさんありましたが、ここから今期の決算および収支予想について少し詳しく説明いたします。
このページでは第6期についてまとめております。2019年5月に終わった期は前期比較で賃貸事業損益が2,100万円ほどの減少、当期純利益が1,800万円ほどの減少となりましたが、前回の決算発表時の予想に対しては若干上振れての着地でございます。
全体では前期比は想定どおりでございますが、2019年の固定資産税の評価替えにともなう支払いの税額減少と本来パススルーされる第二賃料の改定とのタイムラグによって約1,200万円の差異が解消したこと、前期にあった保険金収入等が剥落したこと、先ほど説明しました減価償却費の増加が賃貸事業利益の対前期での減少要因でございます。
一方販管費においては運用会社の報酬減、開示関係およびIR関係費用の圧縮を行いまして、営業利益での減少幅は1,500万円ほどとなり、経常利益の段階では先ほど説明しましたリファイナンスにともなう、シンジケート関連費用等の増加による金融関係コストの増加が反映されまして、前期比で約1,800万円減で着地しております。
予想比については、一部の好調物件の寄与で変動賃料がわずかですが上振れたこと、並びに販管費の圧縮により営業利益で380万円ほど上振れたことにより当期純利益でも予想比で230万円ほどの上振れとなりました。この結果、アスベスト等の資産除去債務見合いで実施する超過分配の1口12円を含む1口当たり分配金は2,390円となり、これは予想比で10円の増加になりました。
下段にございますように、今期の資本的支出は1億8,400万円で、これもほぼ予定どおりで着地しております。バランスシートは、減価償却が進みまして期末総資産が387億円、簿価ベースのLTVは40.6パーセントとなってございます。
なお、鑑定評価につきましては先ほど申しましたように、2019年6月からレオマリゾートほか計4施設の賃料改定を反映しまして、総額は403億9,200万円で、前期比で鑑定評価額は3億1,000万円増加しております。
これにともないまして、期末の含み益は前期末より5億6,500万円ほど増加し、40億1,300万円が期末の含み益となっております。これを反映した時価ベースの期末LTVは36.8パーセント、1口当たりNAVは10万7,149円となっています。
第7期(2019年11⽉期)の業績予想
2019年11月期については前回予想を項目ごとに少しずつ修正しましたが、1口当たり分配金の予想は結論として2,380円で据え置いております。
トップラインにつきましては、前回の予想では鳴子温泉の幸雲閣で2019年11月期から再び変動賃料が見込めると想定しておりましたが、誠に残念ながらこのエリア全体への旅行客の入れ込みが厳しい状況であり、テナントでもさまざまな施策を講じているものの回復には若干の時間がかかるものと判断しまして、第7期と第8期については幸雲閣の変動賃料を引き続き織り込まないという前提にしております。
一方、比較的好調なレオマリゾート、伊東ホテルニュー岡部、きのさきなどで上方修正を行い、変動賃料全体としましては前回予想比で31万円程度の下方修正に留めております。
さらに毎期のキャペックス実施にともなう減価償却費の増加を織り込み、販管費では前期に圧縮したIR費用が若干増加するため、営業利益では359万円の下方修正となりましたが、第7期は金融関連費用が減少することで、経常利益段階ではほぼ前回予想並みと想定しております。
金融関連費用の減少につきましては、前期末5月のリファイナンスによって負債の平均年限、つまりデュレーションが伸びたことで、シンジケーション関係の投資コストの償却が平準化されたこと等が寄与します。なお第7期もキャペックスは今期と同じ水準の1億8,000万円を予想しており、期末のLTVは少し下がりまして、簿価ベースで40.3パーセントと見込んでおります。
第8期(2020年5⽉期)の業績予想
続きまして、第8期目の予想でございます。遺憾ながら、少し分配金が下がる予想になりました。第8期は2年に一度の定時投資主総会を予定しております。一過性のものではありますが、そのための費用として600万円を販管費に織り込んだこと、並びに減価償却費の増加を主な要因としまして、スライドの数字になっております。
変動賃料については、レオマリゾートや伊勢志摩などの堅調な予想を織り込んで、全体としては第7期比で86万6,000円と、若干の増加を見込んでおります。販管費は先ほど申した総会費用の600万円、営業利益段階では前期比で890万円ほどの減で、6億8,200万円の金額を見込んでおります。
金融費用については第8期末と2020年の5月に一部長期借入金のリファイナンスがあり、融資関連費用の増加を少し織り込んだため、最終的なボトムラインは約5億4,700万円になります。1口当たり分配金は前期比で43円減という予想になってしまいますが、総会費用として1口当たり換算で25円程度の影響、減価償却の増加によって22円ほどの影響があります。
予想LTVについては、約定返済が進むことで第8期末には簿価ベースでちょうど40.0パーセントとなることを見込んでおります。
1⼝当たり分配⾦の主な変動要因〜安定したキャッシュ創出⼒
ブリッジチャートを作成いたしました。1口当たりFFOと1口当たり分配金を棒グラフで表しています。主な変動要素はリファイナンスにかかる金融費用の変動と販管費で、とくに第8期は総会の費用による影響が大きいことがわかります。
グラフの薄い赤色の部分は減価償却費を示しておりますが、この増加がペイアウトレシオ低下の要因となっております。このキャッシュ・フローにつきましては、今後、外部成長の機会を捉え、次回の物件取得の際には有利な資金調達ができるように、また巡航時においては約定返済を中心にLTVの引き下げと資金調達余力の創出に努めてまいりたいと考えております。