2019年の半導体設備投資は年初想定とほぼ変わらず、前年比14%減の820億ドル規模となる見通しだ(本紙調べ)。DRAM、NANDなどメモリー投資は市況回復の遅れなどにより、案件の先送りが目立っており、20年中ごろ以降の本格的な投資再開となりそうだ。一方で、ロジック/ファンドリーやCMOSイメージセンサー(CIS)などの非メモリー投資は活況を呈しており、メモリー投資の減少分を補う存在となっている。

データセンター投資は回復の兆し

 メモリー投資は韓国メーカーを筆頭に軒並み投資計画を見直しており、年初段階から厳しい状況が予想されていたが、それがさらに下ぶれている。メモリー投資のカギを握っていたデータセンター投資が依然として力強さに欠けており、メモリー需要そのものが回復していない。

 グーグルは19年設備投資について前年比で大幅に減少するとコメント。19年4~6月期の設備投資実績もコンセンサスを下回った。ただ、直近の決算発表でデータセンター建設に向けて3カ所で土地整備を開始したことを明らかにしており、下期以降、ハイパースケーラーからの需要回復も期待できる展開となってきた。

 これに関連して、HDDガラス基板を展開するHOYAも4~6月期の決算カンファレンスで「7月から受注が戻ってきた」とコメント。データセンター向けニアラインHDDの回復を示唆した。ただ、これがメモリーメーカーの投資回復につながってくるのはしばらく先となりそうで、19年中の本格的な再開が期待できない状況に変わりはない。

注目のNAND新ファブ投資は試作ラインどまり

 実際に、メモリー投資の今後を占う意味でも大きな注目が集まっていたサムスン電子の中国・西安工場第2棟(X2)、東芝メモリの北上工場(K1)の装置導入規模は、まずはパイロットライン(月産5000枚程度)の設置にとどまりそうだ。ただX2に関しては、月産2万枚規模の装置導入について検討が進められており、19年秋にも投資を行うか否かの意思決定が行われる見通しだ。

 サムスン電子も直近の4~6月期決算で、X2ならびに平澤工場第2棟(P2)の新規投資スケジュールは予定どおり行っていくとコメント。建屋完成時期はX2が19年末、P2が20年中を予定している。

 一方の東芝メモリは、一部で四日市工場第6製造棟(Y6)の投資再開に対する期待も高まったが、現状で具体化した様子はない。同社とJV(ジョイントベンチャー)パートナーを組む米ウエスタンデジタルも、新会計年度となる20年度(20年6月期)の設備投資が5億ドル以下(19年度実績13・6億ドル)になると言及。必然的に東芝メモリの19年度設備投資もこれに歩調を合わせた投資計画となるもようだ。

TSMCは投資増額を示唆

 対照的に、ロジック/ファンドリーなど非メモリー投資は活発だ。インテルは19年設備投資が155億ドルと過去最高で、アイルランドやイスラエルなど各前工程拠点でクリーンルームの拡張投資を実行。10nm世代の立ち上げなどに重点投資を行っている。TSMCは直近決算で19年設備投資について従来ガイダンス(100億~110億ドル)を上回ることを示唆。主要顧客の1社である米アップルが「20年版iPhone」で同社の5nm世代を採用することが決まったため、7月以降、前工程装置メーカー各社に対して納入時期の前倒し要請があった。

複眼・高画素化でCMOSセンサー投資が活発化

 さらに、ソニーやサムスン電子が主要供給メーカーとして名を連ねるCIS分野の投資も旺盛だ。スマートフォンを中心に複眼化の進展が進んでいるほか、4800万/6400万画素といった超高画素品に対する要求が増しており、需要増に応えるべく、設備投資を拡大している。

 ソニーは19年度半導体設備投資3000億円のうち、2800億円をイメージセンサー分野に充当。19~21年度までの3カ年で半導体設備投資として6000億円を計画しており、生産能力をこれまでの月産10万枚から同13万枚に引き上げる。さらに、新工場建設の検討も進めており、これが具体化されれば3カ年の投資金額は7000億円に増額される見通し。

 サムスンも17~18年にCISの生産能力を増強すべく、DRAM製造ラインであった華城の第11ライン(L11)をCISライン(S4)に転換。足元では第13ライン(L13)の転換計画も浮上している。決算カンファンレスでまだ転換投資の決定は行っていないとしたが、これが計画として具体化していくのはそう遠くないと見られている。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳