2019年5月22日に行われた、オーウエル株式会社2019年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:オーウエル株式会社 代表取締役社長 飛戸克治 氏

当社の概要(オーウエル株式会社とは)

飛戸克治氏:当社の概要から説明いたします。オーウエル株式会社は、企業理念「オーウエルの社会的使命は、最適整合の創造」を掲げ、工業用塗料販売で国内トップクラスの塗料販売関連事業を主として、センサーを中心とする電気・電子部品事業をグローバルに展開する生産財商社です。

設立は1943年11月で、本店は大阪市西淀川区にございます。事業内容は大きく分けて2つあって、塗料関連事業と電気・電子部品事業になります。従業員数(連結)は、2019年3月末現在で626名となります。

連結売上高は646億円となり、関係会社として、連結子会社が16社と持分法適用の関連会社が4社という構成となります。

当社のあゆみ

当社のあゆみを簡単にご説明します。先ほど申し上げましたように、1943年11月に3社の塗料販売店が合併して、近江屋興業株式会社を設立いたしました。

そののち、1970年の10月に半導体の商社(東導株式会社)を買収し、グループ内での電気・電子部品事業を開始いたしました。

それから、1985年11月に研修施設である技術センターを神奈川県座間市に設立いたしました。

続いて、1992年4月に商号をそれまで用いていた近江屋興業から、現在のオーウエル株式会社に変更いたしました。

2008年の4月には、中国に奥唯(大連)貿易有限公司という現地法人を設立して、以降、韓国、インドネシア、中国(上海)、タイ、ベトナムに順次現地法人を整備してまいりました。

そして直近では、2017年9月にメキシコに100パーセント子会社(O-WELL Mexico Coatings & Electronics S.A de C.V. )を設立いたしました。

企業理念

弊社の企業理念は、「オーウエルの「社会的使命」は最適整合の創造」です。この「最適整合の創造」の意味合いは、いかなるときも最も適したものを整え、取引先のご期待にお応えすることと、定義しています。

そのあとには「企業目標」「その達成のための3つのポリシー」と並んでおりますが、現在の中期経営計画における、ビジョンは、「意匠や機能で、人々の未来を豊かにする」ということを掲げて活動をしております。

この「意匠や機能で、人々の未来を豊かにする」について少し解説します。意匠性をつける、あるいはいろいろな機能をつけていくといった活動の結果、我々のお客さまが作る製品をとおして、世界中の人々が贅沢ではなくとも豊かな暮らしを実現できるように、その支えになりたいという想いを込めております。

オーウエルの提供価値

そしてオーウエルは仕入先、あるいは協力会社と一緒になり、グローバルに展開するお客さまに対して価値を提供していこうと考えております。

その価値の中身については、まず我々が扱う商品・サービスである「PRODUCT 」、それからオーウエルの機能である「FUNCTION」、オーウエルの社員を含めて(の話になりますが)人が財やサービスをお届けすることになりますので、人の「MIND」、このP・F・Mの3つの掛け算によって、我々の提供価値の大きさが決まってくることになります。

セグメント別売上構成比

セグメント別の売上構成比について説明いたします。売上構成比はスライドの円グラフのなかで青色部分である塗料関連事業と、赤色部分である電気・電子部品事業で大きく分かれます。

弊社の連結売上高は約647億円で、そのなかの77.7パーセントが塗料関連事業です。残りの22.3パーセントである143.9億円が電気・電子部品事業という構成になっております。

塗料関連事業の事業内容をさらに分解しますと「塗料・表面処理剤」の販売が全体の48.9パーセントとなり、その次に大きな割合を占めるのが「化成品・物資」で全体の15.5パーセントとなります。「化成品・物資」には防音材・フィルム・接着剤、あるいは耐熱セラミックといったものが含まれます。

あとは「塗装・計測機器」関係、それから「完成工事」とありますが、このふたつは塗装プラントを中心とした、いわゆる設備の販売(に関係する項目)でございます。そのあと、「その他」と続きます。

電気・電子部品事業はほぼ磁気センサの用途で使われるホールICの販売を主としており、LED照明製品はメーカーポジションで弊社が展開しております。

塗料商社の存在意義

みなさまは塗料商社という言葉自体になじみがないと思いますので、少し説明させていただきます。

塗料商社の役割は、塗料メーカーとともに、あるいは塗料メーカーに代わり、お客さまの生産現場において塗膜になるまでの各工程で日々発生する様々な課題の解決に寄与することです。

スライドの図をご覧ください。様々な工程が書かれておりますが、図の一番左側が塗料の状態で、右にいけばいくほど塗膜の状態に近づいていくといった図になります。

オーウエルの業務は図の左側にある塗料の販売ですので、当然ながらロジスティックや、あるいは在庫管理を中心として、商品の供給が発生いたします。

それをお客さまの塗装ラインで塗装することになりますが、その工程にはいくつかあり、日々様々な問題が発生します。問題を解決するため、我々のスタッフが塗装ラインに入り、塗装メーカーやオーウエル単独で、技術サポートを行います。結果として、我々は塗料を正常な塗膜の状態にするための技術サポートを行っているということになります。

オーウエルは塗料を供給しておりますが、我々の子会社が中心となって塗装メーカーの製品の一部の塗料製造を請け負うビジネスもございます。

スライドの図ではお客さまの工程となっていますが、先ほど述べたような活動のように、お客さまの塗装ラインに入り、その工程の一括請負をしております。我々は塗料を材料として売るのではなく塗膜を売っていくといったビジネスを子会社を中心として展開しております。

塗料関連事業の概要 1/3

もう少し細かく見ていきます。「日々の技術サポートって何?」という問いに対しては様々な答えがありますが、素材の選択、塗り方、塗る環境といったものによって塗膜の性能や出来不出来が大きく変わってまいりますので、その部分を我々が対処しております。

スライド下側の図の一番上に「塗膜」という項目がありますが、塗膜ができあがっていくためにはいくつかの要素があり、おおまかですがこのような組み立てになっているということ示したものになります。図の「塗膜」の下側にある条件の、どれかが1つ崩れても正常な塗膜ができることはありません。とくに自動車工業用塗膜については、シビアな条件が求められることになります。

塗料関連事業の概要 2/3

このスライドは弊社が活動している現場・成果物をあらわしたものになります。スライド左側では自動車をロボットが塗装しておりますが、これは代表的な自動車の塗装ラインの上塗り工程の写真になります。

この写真の工程にいくまでに、我々がどのような活動をしているかについて説明いたします。まず、塗色のデザイン提案を行います。そして、その色相提案が採用されると、塗料の試作をもって確認していきます。試作を経たのち、量産・マスプロの段階に入っていきます。そして自動車の場合、みなさまのお手元に届くことになります。以上が大きな流れになります。

最近はデザイン提案から実際に自動車が出荷されるまでの期間が少し短くなっておりますが、短くてもおよそ2年、おおかたは3年ほどかかります。最初にデザイン提案したものをマスプロで生産して本当に再現できるかということも含めて、生産工程までの様々なところで、我々がサポートしていきます。自動車を代表例として挙げましたが、このような活動が代表的なものになります。

スライド右側の写真が建機関係になります。自動車ほど様々な要素で高いレベルの要求はありませんが、やはり建機自体が非常な重量物であること、それにともなって生産の条件面で様々な制約がありますので、それを踏まえて効率よく塗装していくにはどうすればいいのかということを提案し、お客さまと一緒に取り組んでおります。場合によっては、この工程を全て我々が請け負うこともあります。

塗料関連事業の概要 3/3

スライド左側に船の写真があります。船の塗装も技術的に非常に高度なものが求められますし、現在は海洋汚染の問題で海を汚染しない塗装の開発が求められています。以上のことを材料面から提案することと、これだけ大きなものをいかに効率よく塗装してくかということが求められます。

ペンキというと一斗缶というイメージがあるかもしれませんが、我々のように材料を提供する立場からすると、船のように大きなものを塗装していくには一斗缶のようなもので塗料を供給するのは大変なので、例えばコンテナを用いたバルクサプライシステムを我々が開発して、コンテナのリース・洗浄までを一貫したシステムを提供するビジネスもあります。

また昨今は住宅、建築・建材分野においても高耐久あるいは高機能といったものが求められております。代表例はスライド右の写真で示した戸建住宅の外壁等があります。

このような外壁板は工場で工業的に塗装されるケースがほとんどですが、我々は例えば耐久性を上げていくための塗料の提案をしたり、防汚性のように表面を汚れにくくする機能を付与していくために材料の提案をしたり、意匠性を高度にしたり、少量多品種短納期に追従していくためにインクジェットプリンターのようなシステムを提案したりなどの活動を日々行なっております。

電気・電子部品事業の概要 1/2

電気・電子部品事業の概要についてご説明いたします。先ほども申し上げましたが、ほぼセンサー用途で用いられるホールICをTDK-Micronas GmbHというドイツのメーカーから直接仕入れており、営業マーケティング、グローバル物流、一部の品質検査を我々が担っております。

ホールICの使用箇所と用途の説明は非常に難しいものがありますが、スライド右下の図にあるように自動車内で回転する部品や回転検出といったものに多く使われております。

また、自動車の電動化等に向けて、現在ホールICの対象部位はますます拡大しております。

電気・電子部品事業の概要 2/2

それから、我々が電気・電子部品事業で取り扱うもう一つのLED商品製品は、弊社がメーカーポジションで展開する商品です。メーカーとして展開するといっても、大きな取り組みとして製品のデザイン・設計は弊社で行いますが、製造は外部に委託しております。

我々がつくる製品はパナソニック等の大手に真っ向から勝負しても勝つことができないため、ある程度市場を絞っております。1つは工場のお客さまをメインとした工場構内照明、もう1つは植物育成関係などに用いられる特殊な波長を出すことができるLEDといったものに絞り込んで、ビジネス展開しております。

安定した事業基盤①

それらを包括すると、弊社は75年間ビジネスをさせていただいているなかで約2,000社の仕入先を持ち、実際に今期取引したお客さまに限っても約3,000社の得意先がございます。

このような仕入先・得意先に対しても国内45拠点・海外12拠点のネットワークを用い、我々の価値を提供するために活動しております。

お客さまに寄り添った営業体制 1/2

我々の拠点について、具体的に説明いたします。お客さまに寄り添った営業体制を構築するため、できるだけお客さまの生産拠点に近いところへ展開していこうということで、国内の拠点や、海外ではアジアを中心に拠点を整備して、活動しております。

お客さまに寄り添った営業体制 2/2

我々の主な活動範囲は、お客さまの製造工程、つまり製品の企画開発段階から品質保証のところまでです。

お客さまの幅広いモノづくりの工程に対してオーウエルはもちろんのこと、オーウエルのグループ会社も含め、総力を挙げて各工程を支えていくために事業を行なっております。

決算のポイント

2019年3月期決算のポイントは大きく分けて3つあります。

1つ目ですが、2019年3月期は予想比では若干の未達であったものの、増収増益を達成することができました。

2つ目は、そのなかの当期純利益において、過去最高益を更新いたしました。

3つ目は、配当について前期より8円増額し20円とすることを総会に諮りたいと考えております。

決算実績サマリー

決算実績サマリーの数字についてご説明いたします。スライドの表の左から3つ目の欄が2019年3月期の実績となります。先ほど申し上げたように前期比よりプラスとなりましたが、予想比では若干マイナスとなりました。

売上高の内容についてご説明します。大型塗装設備の受注、主要顧客の増加、カーナビ関係の受注が好調で、それぞれの売上高は前期比で増加しましたが、造船向け塗料、ホールICが若干出荷減となりました。加えてある自動車メーカーの生産減がございまして、その影響を受けました。

利益面については自動車部品メーカー向けのビジネスが増えたのと、鉄鋼向けの塗料受注が増加したことなどにより、前期比で増加しましたが、これもホールICの出荷減や為替影響により、予想比では減となりました。

セグメント別動向 塗料関連事業

セグメント別動向についてご説明いたします。塗料関連事業の売上高は502億8,000万円となり、前期比で100.9パーセント、セグメント利益は前期比で104.4パーセントという結果になりました。一部自動車メーカーの生産減があったものの、大型塗装設備、Tier1を中心とする自動車部品メーカーの受注拡大、鋼材向け塗料といったものが増加してプラスになりました。

あとは塗装工程の高度化・省人化や環境配慮型塗料の開発・販売も一部結実して、売上・利益に寄与いたしました。

セグメント別動向 電気・電子部品事業

電気・電子部品事業の売上は前期比で103.2パーセントと、増収となりましたが、セグメント利益は前期比で79.9パーセントと、減益となりました。

増収のおもな要因についてですが、子会社のユニ電子が展開している車載向けのモジュール、カーナビ向けソフト販売が好調に推移したことが挙げられます。また、LED照明では植物工場向けが出荷増となりました。

一方で主力のホールICは、とくに2019年3月期の第4四半期を中心に中国市場向けの生産減や円高ユーロ安となった為替の影響により、売上高・利益ともに減少しております。

業種別売上構成比

業種別構成比についてご説明します。2018年3月期と2019年3月期で全体構成に大きな変化はありません。ただ、先ほど申し上げたいくつかの要素の関係で「鉄鋼」の比率が若干上昇し、建機を中心とした「機械」の比率も上昇しました。全体のパイが少し拡大して、そのなかでとくに伸びたところが「鉄鋼」と「機械」だったということになります。

安定した事業基盤②

弊社は約3,000社の得意先が様々な業種にくまなく存在するおかげで、安定した業績を上げることができております。スライドのグラフは安定的な売上を俯瞰したものになります。

株主還元方針

株主還元方針ですが、2019年3月期は8円増配し、20円とすることを総会に諮りたいと考えております。

2020年3月期については中間配当を実施したいと考えております。中間配当として10円、期末配当として17円、トータルで27円を計画しております。これにより配当性向は、現在の計算上では31パーセント程度となります。

2020年3月期 連結業績予想

2020年3月期の見通しについてご説明します。2020年3月期の連結業績予想ですが、売上高は655億円、営業利益は11億5,000万円、経常利益は13億6,000万円、当期純利益は9億円ということで、売上高以外は減少となる計画を考えております。

内容について一言で説明すると、2019年度の業績は2018年度と比較してほぼ横ばいになると見ております。いわゆる米中関係等の不確定な要素を除き、ほぼ横ばいという見込みで計画を立てております。

ただ、とくに2020年3月期第1四半期では為替の影響が若干残り、ホールICビジネスが受ける為替の影響を年度内にすべて吸収しきれないだろうということで、その分が若干減少した計画になっております。

売上高については国内自動車メーカーの生産動向に不透明感が残りますが、自動車部品メーカー向け、その他主要顧客向けは堅調に推移し、前期並みになると予想しております。

利益については、とくに上期にホールICの中国市場向けの減少や為替影響が発生するため、前期比で減益となると予測いたしました。

成長戦略

今後の成長戦略についてご説明します。我々がどうやって成長していくのかということについては、従来と同じで「塗膜形成に関する課題解決力の向上」と「市場の拡大を捉えたセンサー販売の拡大」という2つの大きな方向で展開していきます。

「塗膜形成に関する課題解決力の向上」というのは、塗装高度化・省人化の実現、グローバル化への対応ということです。

高度化・省人化の実現とはどのようなことかを説明します。先ほど申し上げたようにほとんどの塗装工程はすでに自動化されていますが、塗装を管理していくことはまだ人手がかかる要因が多くございます。

そのような部分に対して労働力対策の観点から効率化を図り、活動の精度も上げていきたいと思います。つまり、人の経験と勘と度胸に頼るだけではなく、その部分を科学的に標準化することを進めていきます。そのような取り組みの結果、塗装の高度化・省人化を実現します。

そのために、弊社の電気・電子部品事業とのシナジーで現在システムを組み上げている最中です。システムができましたらそれをグローバルへ展開することが1つ目の「塗膜形成に関する課題解決力の向上」の内容です。

それから2つ目の「市場の拡大を捉えたセンサー販売の拡大」についてです。車載向けセンサーの需要はますます拡大していきますが、この分野にも様々な参入があって、今やレッドオーシャン化しつつあります。

しかし、我々はそこから逃げず、我々のお客さまである製造業の塗装工程以外の工程にもさまざまなご提案をしていきます。

塗膜形成に関する課題解決力の向上 1/2

スライドのイラストは自動車の塗装ラインで、ほとんどの工程はすでに自動化されています。人手がかかるところはごく一部でしかありません。ただ、人手によってこの工程を管理していく部分がまだ多くございますので、そこを合理化していきたいと考えております。

塗膜形成に関する課題解決力の向上 2/2

グローバル化について、アジアを中心に塗装の品質向上に対する意識や効率化・環境問題に対する意識が高まっています。中国や東南アジアにおいても人件費のコストはどんどん上がっておりますので、省人化というのは1つの大きな課題になってまいります。

その課題を背景に、日系企業の世界展開に対応し、日本と同一の基準・品質のものづくりに最適な商品・サービスを提供しております。それから、国内外で取引のある取引先に対して、連携を強めております。以上が具体的な内容です。

市場の拡大を捉えたセンサー販売の拡大

「塗装だけでなく、製造現場環境の見える化を実現」とありますが、現在我々の持つセンサーを中心に現場環境の見える化に取り組んでおります。

これについてはお客さまに様々なリサーチを行い、見えてきた課題に対して我々がパートナーと組み対処した結果、いくつかのシステムがテストランに入っております。

そういった大きなシステムを組み上げるのは非常に時間もコストもかかりますが、各現場、局部の最適化という意味で、スピード感を持って展開できるものを提供していきたいと考えております。

中長期的な成長イメージ

中長期的な成長イメージについてご説明しますと、塗料関連事業、電気・電子部品事業ともに伸ばしていきますが、我々はその2つの事業をやっておりますので、可能ならば塗料関連事業に電気・電子部品事業のシーズを組み合わせ、シナジーを持って展開できるものを生み出すことを重点的に考えております。

簡単ではございますが、弊社の概要、決算の概要、これからの展望についてご説明しました。ありがとうございました。

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