2019年5月15日に行われた、三菱ガス化学株式会社2019年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

スピーカー:三菱ガス化学株式会社 代表取締役社長 藤井政志 氏

2018年度 業績のポイント

藤井政志氏:本日はお忙しいなか、当社の2018年度決算説明会にお越しいただき、誠にありがとうございます。また、弊社経営に対する日頃のご理解とご支援に対し、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。2019年4月の社長就任後初めての決算説明会となりますが、何卒よろしくお願いいたします。

本日は、2018年度決算と2019年度業績予想に加え、2019年5月13日の決算発表と同時に公表いたしました、中期経営計画の目標値修正について説明いたします。

はじめに2018年度業績のポイントについて説明いたします。前年度に比べ増収も減益の決算となりました。ただし、持分法利益の増加や特別損失の減少などにより、当期利益にかけては減益幅が縮小いたしました。

営業利益段階では、プラス要因として、特殊ポリカーボネートの販売数量の増加がありました。一方で、ポリカーボネートと高純度イソフタル酸の市況下落、原燃料価格の上昇等のマイナス要因により、大きく減益となりました。

持分法利益は、海外メタノール生産会社の利益が増加したことから、増益となりました。また、前回公表した業績予想との比較においては、営業利益、持分法利益ともに前回予想を下回りました。なお、配当については、前年度に比べ11円増配の70円を計画しております。

2018年度 業績サマリー

5ページは2018年度の業績概要を示しております。売上高は6,489億円で、前期比では130億円の増収、営業利益は413億円で、前期比では213億円の減益、経常利益は691億円で、前期比では115億円の減益、当期純利益は550億円で、前期比では55億円の減益となりました。

2018年度 営業外損益・特別損益

6ページは営業外損益・特別損益を示しております。持分法利益は101億円増加しております。内訳は、天然ガス系化学品で100億円の増加になりますが、詳細については後ほど説明いたします。

特別損失については、前年度に計上した「カナダ シェールガス・LNGプロジェクト」に関する投資有価証券評価損が減少しております。

2018年度末 貸借対照表

7ページは貸借対照表になります。説明は省略させていただきます。

2018年度 キャッシュフロー計算書

8ページはキャッシュフロー計算書を記載しております。説明は省略させていただきます。

2018年度 経常利益 増減要因

9ページは2018年度の経常利益の増減要因を示しております。営業利益は、ポリカーボネートおよび高純度イソフタル酸の市況下落、原燃料価格の上昇に加え、修繕費等の固定費の増加などから、減益となりました。一方で、持分法利益が増加したことから、経常利益段階では減益幅が縮小しております。

2019年度 業績予想のポイント

11ページは2019年度の業績予想のポイントを示しております。2019年度では、営業利益は前年同期をやや下回る水準を見込むものの、持分法利益の減益幅が大きく、経常利益以下は大幅な減益を予想しております。

持分法利益の減益はメタノール関連の減少によるものですが、これは後ほど説明いたします。なお、配当につきましては、2018年度と同額の70円を予想しております。

2019年度 業績予想

12ページは2019年度業績予想の概要を示しております。売上高は前期比で10億円増収の6,500億円、営業利益は前期比で13億円減益の400億円、経常利益は前期比で241億円減益の450億円、当期純利益は前期比で210億円減益の340億円を予想しております。業績予想の前提となる為替レートは、1ドル110円でみております。

2019年度 経常利益予想 増減要因

13ページは2019年度経常利益予想の増減要因を示しております。

全般的な販売数量の増加でプラス142億円を見込んでおります。しかし、ポリカーボネート・高純度イソフタル酸のスプレッドの縮小、固定費・一般管理費の増加などのマイナス要因が上回り、営業利益は前年をやや下回る見通しでございます。

一方で、持分法利益は大きく減少する見込みです。次のスライドで説明いたします。

2019年度 持分法利益予想 増減要因

14ページは2019年度持分法利益予想の増減要因を示しております。2018年度実績の284億円から2019年度は70億円に減少する予想です。メタノール関連で188億円の減益、機能化学品で26億円の減益を見込んでおります。

メタノール関連の減益が大きくなっている要因の1つとして、2019年度のみに影響する一過性の要因による約67億円が計上されていることが挙げられます。内容は大きく2点ございます。1点目はAR-RAZI株式の売却関連損失の計上です。

2点目は、AR-RAZI持分比率の減少および延長対価の償却費用について、2018年度分、つまり2018年12月から2019年3月の4ヶ月分についても計上されていることでございます。

加えて、市況の下落や2019年度分のAR-RAZI持分比率の減少、合弁事業延長対価の償却等により、121億円の減益を見込んでおります。

株主還元方針・株主還元

株主還元について説明いたします。当社グループは、企業価値の向上を経営上の最重要課題と位置付けております。配当については、安定配当の継続を基本とし、業績動向などを考慮して決定しております。また、内部留保の水準と株主還元の水準を考慮して、自己株式の取得を機動的に実施し、資本効率の向上と株主還元の充実を図ることを基本方針としております。

以上の方針にもとづき、2018年度実績も踏まえまして、決算発表と同日の2019年5月13日に自己株式の取得および消却を決定いたしました。また、2019年度は減益を見込むものの、年間配当については2018年度と同額となる70円を予想しております。

セグメント別 連結 売上高・営業利益・経常利益推移

17ページにはセグメント別の売上高・営業利益・経常利益を示しております。次のページ以降で説明してまいります。

天然ガス系化学品

天然ガス系化学品について説明いたします。2018年度は、原料高に加え、ネオペンチルグリコールの市況下落や修繕費等の固定費が増加したこともあり、営業利益は減益となりました。

一方で持分法利益は、AR-RAZI社の持分法損益について、年間を通じて旧持分比率で計上していることに加え、2017年度の一過性要因の解消もあり、増益となりました。

2019年度については、メタノールの市況は2018年度に比べ、やや下落水準となる350ドルを見込んでおります。営業利益は、メタノール誘導品の販売数量増加や採算の改善、修繕費等の固定費減少などにより、増益を予想しております。持分法利益は、先ほど申し上げた要因により、大幅な減益となる見通しでございます。

なお、トリニダード・トバゴ新工場の運転開始時期は2019年度後半の見通しで、2019年度への収益貢献は限定的とみております。また、ベネズエラにおいて、2019年3月に大規模停電が発生しました。現在は稼働を再開しておりますが、今後、操業や損益への影響が懸念されます。

芳香族化学品

芳香族化学品セグメントについて説明いたします。2018年度では、特殊芳香族については、原燃料費が上昇したものの販売は堅調に推移し、増収増益となりました。一方で、高純度イソフタル酸は、スプレッドが縮小したことにより大幅な減益となりました。

さらに、水島工場が大型定修年に当たり固定費が増加したことや、発泡プラスチックが原燃料価格の上昇等で減益となったこともあり、全体として減益となりました。

2019年度については、MXDA(メタキシリレンジアミン)等の特殊芳香族は引き続き堅調な販売を見込んでおります。一方で、高純度イソフタル酸はスプレッド縮小を予想しております。水島工場の固定費減少やJSP社の損益改善などもあり、全体としては増益を見込んでおります。

機械化学品

機能化学品セグメントについて説明いたします。2018年度では、無機化学品は販売数量が増加したものの、エレクトロニクスケミカル事業の競争環境激化や米国新工場の立ち上げ費用等の増加もあり、減益となりました。ポリカーボネートは、スプレッドが縮小したことから大幅な減益となりました。

一方、特殊ポリカーボネートは、スマートフォンのデュアルレンズ化の拡大等を背景に販売数量が増加しております。全体としては、ポリカーボネートの減少幅が大きく、減益となりました。

2019年度についてです。無機化学品について、米国新工場の本格的な収益貢献は2020年度となる見通しです。2019年度は立ち上げにともなう固定費の増加などが見込まれることから、減益の見通しです。

ポリカーボネートのスプレッドは2018年度に比べて縮小を見込んでおります。特殊ポリカーボネートは、計画どおり2019年10月に新工場を立ち上げる予定でございます。

特殊機能材

特殊機能材について説明いたします。2018年度では、上期は電子材料で主力の半導体パッケージ向けBT材料が堅調に推移したものの、下期に入りスマートフォンやメモリー分野の需要が減退しました。

脱酸素剤は、国内外における競争激化や原料価格の上昇などにより、減益となりました。

2019年度についてです。上期は電子材料でメモリー事業の低迷が続く見通しであるものの、下期は需要改善、5G向け需要の拡大を見込みます。脱酸素剤は、引き続き医薬・車部品向けの開拓を推進します。

中期経営計画『MGC Advance2020』最終年度目標修正について

中期経営計画の目標値修正およびメタノール事業についてご説明申し上げます。

23ページに今回の中期経営計画の修正内容をまとめております。

スライドの右側の表のとおり、経常利益のみ当初目標から100億円減額として800億円に修正しております。セグメント別ではスライドの左の棒グラフのとおり、天然ガス系で100億円減額の150億円に修正しております。

中期経営計画 数値目標修正の理由

24ページに今回の修正理由を示しております。修正要因は1点のみで、本中期経営計画策定時に織り込むことが困難であった、サウジアラビアメタノール合弁事業の枠組み変更を反映したものでございます。

枠組み変更にともない、サウジアラビアメタノール合弁事業の持分比率が減少となること、合弁事業延長対価の償却費が計上されることから、持分法利益を減額させていただきました。

この要因による変更のみで、経常利益以外の中期経営計画の数値目標や基本方針、施策、前提条件等には変更はございません。

中計の5つの施策は不変:戦略投資の実行、新規事業創出の加速で収益力を向上

25ページは、中期経営計画で掲げている方針・施策をあらためて記載させていただいております。

方針・施策に変更はございません。中期経営計画で掲げた投資融資額2,000億円、研究開発費660億円を継続し、引き続き戦略投資を積極的に実行するとともに、新規事業の創出も加速することで、外部環境の変化に左右されない最適な事業ポートフォリオの構築を進めてまいります。

AR-RAZI事業継続の効果

最後に、メタノール事業について、AR-RAZI事業継続のメリットおよび当社の今後のメタノール事業展開等を説明いたします。

26ページのスライドはAR-RAZI事業継続のメリットを示しております。オールジャパンであること自体に大きな意味がありますが、政府の支援も継続し、既存の物流インフラの維持と活用も可能であることから、コンソーシアム全体で合意したものでございます。

これに加えて、当社グループにとって大きな効果が3点あると考えております。1点目は、メタノール世界戦略として活用できることでございます。具体的には、中東地区のプラントを保有することでグローバル生産拠点として活用できること、メタノール引取権が確保できることが挙げられます。

2点目は、メタノール事業等の今後のさらなる発展への寄与が期待できることでございます。具体的には、省エネ効果を高める新技術によるメタノール設備更新も今後検討していくことで、さらにプラントの競争力を高めていくこと、SABIC社との協業関係が継続されることが挙げられます。

3点目は、メタノール事業の収益確保への貢献です。具体的には、競争力のある天然ガスをベースとした、安定したオペレーション実績があることでございます。AR-RAZI事業継続が新設案件やM&Aよりも有利な条件と考えられることも挙げられます。

AR-RAZI自体も収益性のある事業ですが、申し上げたとおり、ほかにもさまざまな効果が期待できます。JSMCの主要株主である当社としても、期間延長は総合的な経済合理性があるものと考えております。

当社は、今後も競争力のあるAR-RAZIを最大限に活用することでメタノール事業の収益力を強化するとともに、当社の企業価値向上を図ってまいります。

参考:MGCのメタノール生産拠点(~2018年度)

この機会にあらためて、当社グループのメタノール世界展開について説明いたします。27ページは、当社のこれまでの3生産拠点体制を示しております。

参考:MGCのメタノール生産拠点(2019年度~)

28ページは、これまでの3拠点を維持し、2019年度にトリニダード・トバゴの稼働が開始されたあとの、実際のグローバル生産および物流体制を示しております。

競争力のあるサウジアラジアのプラントが維持できたことに加え、トリニダード・トバゴのプラントも稼働することから、従来以上にグローバルな生産・物流体制が構築できるものと考えております。

また、2016年度のパナマ運河拡張により、トリニダード・トバゴおよびベネズエラからアジア向けに、メタノールをより経済的に移送できるメリットも出てきております。

今後も、これらの拠点を最大限に活用することで、メタノール事業の収益力の向上に努めてまいります。私からの説明は以上になります。ありがとうございました。

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