筆者の母は60歳になり、終活に取り組んでいる。エンディングノートもすでに書いたようで、その終活はなかなか本格的だ。

墓地の購入にも積極的に動いており、見学会にも足しげく通っている。なぜ急ぐのかというと、飼っているペット(犬)がもう高齢で、死期が迫っていることも影響しているようだ。母はペットとお墓に入りたいようで、樹木葬を検討している。樹木葬は墓石のお墓に比べ費用が安く、承継者を必要としない場合が多いようだ。「子どもの負担になりたくない」と思う高齢者も多く、墓石のお墓以外の選択をする人も増加傾向にあるという。

「自然に還りたい」などの理由で散骨を希望する人も増えているようだ。しかし自治体で散骨を禁止しているところもあり、今後増加すれば規制する自治体も増える可能性がある。

その他にも遺骨の一部を粉骨してアクセサリーにしたり、納骨しない手元供養など、供養方法は多様化している。

「お天道様が見ている」信仰は薄くなっている

日本人は「無宗教だ」とよく言われる。これが遺骨置き去り増加に影響しているのだろうか。

NHK放送文化研究所も参加している国際比較調査グループ(ISSP)が18年10~11月に実施した「宗教」に関する調査によると、「信仰している宗教はない」と回答した人は62%にもおよぶ。しかし、08年の調査でも「信仰している宗教はない」と答えた人は61%となっており、増減はない。「宗教を信仰している」と回答した人も08年は38%、18年は36%と変化はない。

だが、『信仰心があるかどうか』との問いに対し、「ない」(「あまり」+「ほとんど」+「まったく」)は52%となっている。対して「ある」(「とても」+「かなり」+「まあ」)は26%にとどまる。1998年の調査では「ある」が32%となっており、減少傾向といえる。

「ない」は98年では50%と2018年とほとんど変わらないが、その中でも「まったくない」は1998年では14%だったのに対し、2018年では22%に増加している点が大きな変化といえる。

さらに同質問に対し「わからない」という回答もあるのだが、これが3%から7%に増加している。「どちらともいえない」も選択肢としてあるわけだが、『そもそも知らない』『考えたこともない』人が増えているのかもしれない。

核家族の増加や晩婚化などの日本社会の変化により、祖父母に「お天道様が見ているよ」と教わる機会も減り、またそんなことも考えない人が増えているともいえるだろう。

それでも遺骨置き去り問題は経済的理由が大きい

遺骨の置き去りは犯罪であり、逮捕者も出ている。信仰心が減少傾向にあることも少なからず影響しているだろうが、やはり経済的な負担、子どもへの申し訳なさから遺骨の置き去りに発展しているケースが多いのではないだろうか。

そもそも信仰について、考えたり話したりする機会が日本人には少ないのかもしれない。墓石のお墓だけではなく供養方法も多様化している現代、どのように供養して欲しいか、また残される家族の希望など、元気なうちに話し合っておく必要があるだろう。

【参考】

『日本の超高齢社会の特徴』公益財団法人長寿科学復興財団

『人の遺骨置き去りか 8割以上「落とし主」が見つからず』毎日新聞

『日本人の宗教的意識や行動はどう変わったか』NHK放送文化研究所

尾藤 ちよ子