大竹:「どこにいても異業種……」という半分笑い話はおいておくとしても、UDSは、不動産業でも、飲食業でも、観光業でもないながら、全てに関わっているというか、雰囲気も含めてトータルで運営をされるという独自の立ち位置をとっていると感じるんですが、そのあたりはいかがでしょうか?
中川:企画から始まって、実際の設計、完成してからの実際の運営という全てを一気通貫でやれる会社は、多くはないと思います。
大竹:企画、設計、運営というと、携わるのが全く別の種類というか価値観のヒトだと思うんですが、まとまるものなんですか?
中川:「まちづくり」が、会社のコンセプトになっていて社風もそうなっています。ホテルも単なる宿泊業ではなく、地域の核としての拠点という考えに共感するスタッフが転職してきているということもあるかもしれませんが、企画と運営が同僚ということへの違和感はないですね。
大竹:ついつい建物に目がいきがちですが、提供している価値の本質はまちづくりなんですね。
中川:当社の転換のきっかけとなった目黒の複合施設「クラスカ」も、あの地域に集まりつつあったハイセンスなインテリアショップなどと上手く共存しながら、まちの価値を上げることができたと思っていて、実際に地方自治体からのお話もいただくようになっています。
あと、お客様の視点に立つという考え方はよく言われていますが、これは言い換えると「おもてなし」です。これは常に大事にしていて本にも書いてあるんですが、エンドユーザーにとっては、街はあくまでも街であって、住宅とかカフェとかホテルとか建物別には分けて考えていないと思っています。
大竹:確かにそうですね。だから、外からみると多角化経営を推進しているようですが、あくまでもまちづくりをしている。
中川:そうですね、まちづくりというアイデンティティからすると、四方八方感はありません。
大竹:言葉は悪いかもしれませんが、計画的というよりも自然発生的に多角化というべきか事業領域の拡大をしていったと感じていましたが、まちづくりという言葉でくくるとある意味なんでもやれちゃうんですね。
中川:「1人ひとりのプロがチームを創ることで、相乗効果を生む」という意味なんですが、「TEAM UP(チームアップ)」という考え方で会社はまとまっています。
チームを創る「build up(ビルトアップ)」と相乗効果の「upgrade(アップグレード)」という概念が根底にあります。
まとめ
ストックビジネスの本質は収益構造が先々まで見えることと、事業の競争力を失わない仕組みにあります。一つの事業が競争力を維持できるのは今では10年が限界かもしれませんが、そんな事業超短命社会の中でクリエーター集団がいつまでも競争力を失わないための工夫が随所にありました。
今回お届けした中では、会社のコンセプト「まちづくり」と「TEAM UP(チームアップ)」という考え方で会社をまとめて企業としての競争力を維持する中川社長のマネジメントに学ぶ部分が多かったと思います。
では、フローからストックに至る数々の事業を作ってきた中川社長の発想はどこから来るのか? 次回はそのきっかけとなった出来事をお聞きします。
大竹 啓裕