最近銀座にできた話題の「MUJI HOTEL GINZA」をご存じですか? 無印良品のブランドを冠したこのホテルは、私が尊敬する経営者である中川敬文社長のUDS株式会社が企画・設計・運営・経営しています。
中川社長は、フロービジネスだった事業から今ではストックビジネスの安定企業に転換し、競合の少ない独自の業界ポジションを確立しています。今回は、日本で最初にコーポラティブハウスを仕掛け、現在ではホテルの運営までを手がけるようになったUDSの中川敬文社長へのインタビューを通して、ストックビジネスのエッセンスをお届けします。
事業領域の拡大と収益構造
大竹:中川さんは多角化の感覚はないとおっしゃっていますが、元々は企画・設計事務所で、設計すれば終わりというフロービジネスから考えると事業領域は広がっていますし、創業時とは確実に違ってストック化がかなり進んだといっていいと思います。現在の収益はどのようになっていますか?
中川:ホテル運営の比率が大きくなってきています。
大竹:ホテル事業の方が、安定した数字がみえる?
中川:ある程度、安定してみえる部分はありますが、ライバルもいるので、そう簡単ではありません(笑)。
大竹:昔はともかく、現在のホテル業界はインバウンドの影響もあり好調というイメージがありますが?
中川:全体的には好調だと思いますが、供給も増えていますので競争は激しくなってきています。
大竹:会社の構成としては、施設が増えると売上が増えて安定するように感じましたが、他にはどのような事業があるのでしょうか?
中川: 飲食ですと文京区にある凸版印刷内のレストラン「小石川テラス」があります。
大竹:写真を見て行ってみたいと思っていましたが、一般の人も入れるんですか?
中川:はい、入れますよ。実はこの原宿本社の応接スペースも、もともとは自社の社員食堂の一角です。
大竹:もともと社員食堂だったところに売り上げが立つとはユニークですね、それにこんなにお客さんが入っているんですね(14時なのに応接のまわりには遅いランチのお客様であふれていた)。
中川:今では、一般の方が6割以上です。
大竹:他に、特徴ある施設はありますか?
中川:代々木上原にある「NODE UEHARA」は、複合施設として非常に特徴的だと思っています。
大竹:複合施設というと色々な業態が入っているビルのような空間をイメージしますが……。
中川:普通はそうなんですが、上層階は住宅になっています。
大竹:1階がテナントのマンションは多いですが、それはかなり珍しいですね。
中川:あとは、東京神保町にある岩波ブックセンター跡地を開発した「神保町ブックセンター」です。これは「書店」「喫茶店」と「コワーキングスペース」という複合施設です。
大竹:本屋ビジネスはかなり分析したことがあって少し詳しいんですが、厳しい業界ですね。
中川:はい、普通に本屋さんでは難しいですね。ですので、コワーキングのラウンジは、著者を招いたトークイベントを開催できるようにしたり、「本の街・神保町を元気にする会」の理事にもなって、地域の皆さんと協力してまちづくりなどに絡めた活動をしています。
大竹:ホテル以外の施設でもまちづくりというコンセプトは変わらないんですね。
中川:はい。神奈川県海老名市にあるRICOH(リコー)の施設「RICOH Future House」では、バーベキューができる地元食材を使ったレストラン「PUBLIE(パブリエ)」や、「コサイエ」というアフタースクールなども運営しています。
大竹:アフタースクールというのは、学童保育のことですか?
中川:学童保育と科学教室の複合施設です。
大竹:これも地域とつながったまちづくりになっていますね。