2019年5月14日に行われた、株式会社ラック2019年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:株式会社ラック 代表取締役社長 西本逸郎 氏

連結決算ハイライト(前期比)

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西本逸郎氏:今日はお足元の悪い中、お越しいただきましてありがとうございます。基本的に、お手元に資料もございますので、内容的にはお読みいただければ、ざっとおわかりいただけると思います。細かいご説明は割愛しまして、ポイントになるところに絞ってお話をさせていただこうと思っています。

まずは決算のハイライトですが、ご覧いただいたとおり、昨年対比となりますと、売上が横ばいです。ぎりぎりなんとかキープしたというところです。

営業利益に関しては、のちほど出ますが、目標まで届いていません。しかし、前年対比では上げることができました。まったく満足はできていませんが、売上があまり伸ばせない中、よくここまで利益をもってきたなというのが正直なところです。

またのちほど話が出ますが、NEXI(日本貿易保険)の件が十数億円、仕掛で乗っていますので、その分の売上寄与がまったくない状況でのこの数値といった面で、例の件が順調に進んでいれば、胸を張った報告ができたのではなかろうかというところが非常に残念なところです。こちらがハイライトのトピックになります。

セグメント別業績(前期比)

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続きまして、SSS事業とSIS事業です。SSSは、セキュリティソリューションサービスです。SISが、システム開発系の事業になりますが、それぞれの状況になります。

売上に関しては、SSS事業は増収増益です。SIS事業は、NEXIの件があるにもかかわらず、減収ですが増益をキープしています。

NEXIの件で影響を受けているのがSIS事業で、この部分が本来であれば十数億円の売上のプラスでした。利益は、そこからいくばくかプラスというのが本来見込めた部分ですが、非常に残念なところです。ある面では、現場は非常によくがんばっている状況かと思います。

また、前期の4月に、アジアンリンクという会社を買収しました。この会社は、今期からSSS事業の連結の中に組み込まれていますので、それも増収の部分で寄与しています。

セグメント別業績ポイント セキュリティソリューションサービス(SSS)事業

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SSS事業の詳細に入っていきますが、コンサルティングサービスが苦戦しています。とくに、普通のコンサルと教育関係が苦戦しました。やはり競争の激化が原因です。どちらかといいますと、当社は監視やその他のサービスは積極的な投資を行っており、サービス開発やメニューの開発を積極的に行ってきたのですが、教育およびコンサルに関しては、昨年度はほぼ新規のサービスについてはそのままとなっていましたので、このあたりは投資し続けると言いますか、戦い続けていなければいけないという部分で、非常に反省しています。

コンサルティングについてはそういった点がありましたが、運用監視、診断あたりは非常に順調に伸びています。とくに運用監視におきましては、中部地域の大手製造業の本格導入がスタートしていますので、ここがかなり増収増益に寄与しています。

診断サービスも非常に競争が激化していますが、当社もいろいろなメニューを出して対抗していますし、関連の同業会社ともアライアンスを組んで、幅広い受注ができるような体制等を整備していますので、対抗できています。

セグメント別業績ポイント システムインテグレーションサービス(SIS)事業

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続きまして、SIS事業ですが、ハードウェア、ソフトウェアの販売はかなりコンサバに計画を立てておいたのですが、それでもクラウド化へのシフトが思った以上に推進していまして、伸びなかったというのが、ハードウェア、ソフトウェアの部分です。

開発サービスが一番の屋台骨になるのですが、一番大きな部分は大手銀行系の開発で、かなり収縮しています。青い銀行は新システムの稼働がかなり進んできており、当社もかなり依存していた部分です。それを他の業に転換していまして、転換そのものは順調ですが、主力の金融サービスの部分はかなり減ってきています。

ただし、他の部分が非常に好調に推移しており、ある面ではNEXIの仕掛の部分が増加になっているというのが、イレギュラーな点になります。

そこがポイントで、あとはのれんの償却代です。10年前にスタートしましたアイティークルー、旧ニイウスの事業買収ののれん代が、ようやく昨年度の第1四半期でほぼほぼ終わりました。その分がざっくり1億5,000万円残り、残りの3億円がプラスに寄与したこともあって増益となっています。

連結決算ハイライト(期初予想比)

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予想比ですが、我々からしますと計画対比になります。前年対比よりも、我々から見ると、この計画対比が非常に重要になるわけです。その計画対比では、売上が大幅未達で、10.8パーセントのマイナス。つまり(達成率が)89.2パーセントで、90パーセントを割り込んだのが4月末にわかりました。そこで、連休前に修正開示を行いました。

同時に、利益予測も立てています。利益面に関しては修正開示をする必要がなかったのですが、内容的にはその時に概算を出しています。

売上高としましては、ざっくり言うと(予想比で)47億円のマイナスで、着地としては387億1,900万円となります。営業利益、経常利益等は、(予想比で)ざっと1億3,000万円のマイナスで、(前期比で)4,000万円ほどのマイナスです。営業利益が25億円の計画に対して、1億3,300万円マイナス、5.3パーセントマイナスで着地しました。

ROEに関しては、基本的には15パーセントを経営指標にしていますが、前期に対しては割り込んで14.5パーセントという結果で着地しています。

セグメント別業績(期初予想比)

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各々のセグメント別の計画対比の成績になりますが、計画対比ではSSS事業もSIS事業も売上は未達です。

SSS事業は、(計画比で)13億円ほどのマイナスで、SIS事業は、(計画比で)33億円ほどのマイナスです。

セグメント利益に関しては、先行投資や、原価を使わない部分といったものもありまして、SSS事業については計画より6,200万円……わずか2.4パーセントですがプラスになっています。SIS事業は、(計画比で)約4億円のマイナスで、12.5パーセントのショートで着地しました。

これは、先ほどお話ししましたNEXI分のところが、全部仕掛に乗っているというかたちでの着地になります。

連結貸借対照表ハイライト(前期末比)

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バランスシートに関しては、仕掛が増えており、NEXIの仕掛です。もう1点、ある会社で、先行で当社が資産を保有して、少しずつ料金を回収する案件がありましたので、大きくこの2つの案件でキャッシュの部分が減っています。

その分を長期借入で補填をかけていますが、今のところ、財務基盤としては引き続き安定したままキープできていると思っています。

連結キャッシュ・フロー計算書ハイライト

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キャッシュ・フローですが、初めてフリーキャッシュ・フローがマイナスになりました。これは一時的なものだと思っていますが、今期の段階でこの分を早めに回収をかけて、改善していきたいと思っています。

中期経営計画『TRY 2021 ステージ2』の進捗(事業部制)

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中期計画との進捗の部分です。中期計画の一番のポイントは事業部制です。みなさまもご存知のように、お客さまが今、変化しています。当社はSIといっても、どちらかというと情報システム部門や、大手SIerのアンダーといった部分を主力としてこれまで進めてきましたが、直案件もかなり増えてきています。

そうすると、単純に当社のリソースを部品としてお客さまに提供するのではなく、きちんとしたインテグレーションをする必要があるという観点でお客さまと相対する意味で、事業部制を敷いています。そして、事業部の中でSIメンバー、セキュリティコンサルタントといったものを配備して、業界に特化した営業を揃えて、しっかりと事業展開していこうという狙いで進めています。

いずれにしても、セキュリティ対策、システム開発を一本にして、お客さまに切り込んでいくかたちを取っています。その中の1つとして、スライド右側にあるとおりアジャイル開発センターを昨年開設しました。

昔とは違って、システム開発が、お客さまのほうでもかっちり計画を立てて、検証して、それから協力会社に発注するという手段をなかなか取れなくなってきています。

非常に時代変化が激しく、新たなテクノロジーをどんどん活用していかなければならない時代においては、どのテクノロジーを、どういった分野で、どのように使えば事業の役に立つのかを、素早いサイクルで検証しながら、お客さまと一緒になって立ち上げていくというスタイルが重要です。それをアジャイル開発と呼んでいますが、当社の中でアジャイル開発センターを作り、お客さまと一緒に事業開発をしていくということをスタートしています。

また、事業部ごとの切り口で、金融事業部、エンタープライズ事業部、サイバーセキュリティ事業部というかたちで動いてきましたが、各々の事業カテゴリーの戦略が立てにくくなりますので、SIの事業戦略、セキュリティの事業戦略、両事業の戦略を立てるSSS事業統括部、SIS事業統括部を作りまして、ここで戦略面をステアリングしていくようなフォーメーションとしました。これが昨年度の大きなポイントになります。

中期経営計画『TRY 2021 ステージ2』の進捗(メニュー充実)

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当然のことながら、セキュリティが非常に注目されていますので、さまざまなチャレンジをしています。

1つ目が、次の事業基盤となる「スレットインテリジェンスサービスへの対応」です。どういうことかといいますと、まずはエンドユーザーさま……例えば銀行さまや、社会インフラを支えるような企業さまが、自社でどんどんセキュリティを進めています。

もちろん、こうしたところに人を派遣したり、そこにサービスを提供するといった部分は行っているのですが、同時に競合もどんどん出てきています。当然競合の方たちも、そういった会社さまにサービスするのですが、当社の作戦としては、競合との協調をいかに図っていくかというところです。

競合にもレベルの高いサービスを提供してもらうにはどうすればいいのか。なぜなら、日本全体のすべてのサービスをラック社で提供することはできないからです。そうした場合に、競合と徹底的に競合するよりも、競合と手を握れるところは握ったほうがいいと考えています。

その分野が、実はスレットインテリジェンスの部分になります。つまり、基本的な脅威に対する動向に対する知見です。ここでどれだけ厚みを持っているかが、セキュリティ事業に対する厚みになりますし、信頼になっていくわけです。当社としては、従来よりさらにここを強化してやっていこうということで手を打っています。

外に見える点としては大きく2つあります。現場のメンバーが名前を付けていますので、横文字が多くて大変申し訳ないのですが、「Threat Landscape Advisory サービス」です。最近話題の「ダークウェブ」などは聞かれたことがありますか? それは、犯罪者が使うようなネットワークのことです。

そういう人たちが情報交換するような場所……端的にいうとサイバー系の武器を売買するようなサイト、ネットワークがあるのですが、そこを監視して、次の行動を予測して対応するといったことを行うのがこのサービスです。

2つ目ですが、「FalconNest」というサービスをリリースしました。これは無償で提供するのですが、多くの企業さまはセキュリティ事項が起きても、なにをしていいのかがわからないです。そのため「これは怪しいファイルだよね?」というようなものを、この「FalconNest」にアップロードしてもらいます。

クラウドで提供しているサービスですが、「このファイルは怪しいですから、専門家を呼んだほうがいい」「どうも、うちが管理しているサーバーがおかしな振る舞いをするので、ちょっと見てほしい」といったことがあれば、手順書に従ってデータを「FalconNest」にアップロードしてもらいます。すると自動分析します。

これを「なぜ無償でやるんだ」と疑問に思われるのですが、こういったことから、日本中で起きている事象を、当社がどこよりも早く把握できるのです。また、駆け込んでくるお客さまも、「これは本当に動かなければいけないのか? いやいや、放っておけばいいのか? ただ単に勘違いなのか?」といった温度感もわかり、次のセールスのリードを取ることができるのです。

こうした部分で、2つのサービスをスタートしました。ここから集まる知見が、当社の1つの大きな武器になっていくだろうと思います。

2つ目が、クロスセル、アップセル・ダウンセルによる監視サービスを拡充しています。当社のセキュリティの一番の売り物はこの監視サービスです。今、お客さまが1,000社弱いらっしゃるのですが、だいたい大手さまで、超大手さまがほとんどです。

ここで、いわゆる一般の企業さまや、中堅・中小企業さまにどう販売していくかの部分で、「CloudFalcon」を開発して、代理店経由で売っていくということをスタートしています。

既存の「JSOC」に「事故補償パック」を付帯したものもあります。中堅企業さまや一般企業さまは、セキュリティ対策の前に、補償、保険を重要視するところがありますので、そこを目立たせて販売していこうということで、アップセル・ダウンセルになります。

またクロスセルとしては、「SeeLAC」というものを配備して、とくにパートナーさまと一緒に拡大していこうとしています。

もう1つ、当社が狙っている市場は、大手さまのグループ企業です。グループ企業といっても、例えば銀行さまのグループといったら、非常に高度なセキュリティ対策をする銀行さまもいらっしゃいますし、子会社では不動産をやっていたり、人材派遣サービスをやっていたりなど、さまざまな企業さまがいます。このあたりを一括してマネジメントしていきたいという要望に応えるサービスを推進しています。

また、ご存知のとおり、IoT関係です。IoT関係でいいますと、とくにコネクティッドの自動車の中や、工場などにどれだけ当社が入っていけるかが勝負だと考えています。まだまだ発表できるほどの成果は出ていませんが、非常に大きな分野だと考えて、手は打っています。

中期経営計画『TRY 2021 ステージ2』の進捗(パートナーシップ強化)

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パートナーシップについてですが、当社の大株主であるKDDIさまとの合弁会社を設立しました。ラックの出資比率が49パーセント、KDDIさまが51パーセントというかたちです。いまのところ、非常に順調に立ち上がっており、規模的には150名ぐらいです。

これを立ち上げて、どんどん進めています。KDDIさまの事業のことを当社がとやかく言うことはないのですが、基本的にはKDDIさまの……インハウスと呼んでいますが、内部のセキュリティとして、まずはしっかりKDDIさまを押さえていこう、KDDIさまのグループ企業にもしっかりサービスを提供していこうとしていますので、ここもしっかり進めていきます。

さらに、KDDIは地方でのお客さまも作っていますので、その部分も当然カバーしていこうと考えています。KDDIさまは現在、「au経済圏」といったものを構築しようとしていますので、そのセキュリティを一緒にやっていこうというところを目標に、一歩一歩進めています。

まだ今年度で2年目ですので、大きくなっていくには、あと1〜2年はかかるとは思いますが、こういったものも取り組んでいます。

事業強化としては、TISさまとエンタープライズ向けのクラウドおよびセキュリティの領域で協業を行います。またNECさまとアジア・パシフィックの部分で協業します。さらに、NISCと呼んでいますが、内閣サイバーセキュリティセンターとともに……先般できました「サイバーセキュリティ基本法」の改定で、官民協力して情報共有するということが決定されたのですが、それに則った第1号の民間企業として選ばれまして、NISCと協業を開始しています。

NISCとの部分は、売上にダイレクトに紐づくというよりも、当社が提供するスレットインテリジェンスといったものが国も認めているクラスだという、1つのブランディングになると考えていますし、それに負けないようなことをしっかり行っていかなければ日本も守れませんので、そこは当社としてもしっかり強化していく部分になっています。

中期経営計画『TRY 2021 ステージ2』の進捗(拠点拡充など体制強化)

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拠点の拡充も行いました。1つはシンガポールです。これまで、他社の間借りをしていましたが、ビザの関係等もあり支店を設置しました。

とくにASEANは、日本企業がかなり進出しています。シンガポールは金融の拠点になっていますが、お隣、とくにタイやマレーシア、インドネシアは製造業が非常に盛んですので、そのあたりへの対応を、シンガポール支店をベースに拡大していきたいと考えています。ここもまだまだ投資の段階で、回収は先になると考えています。

また、東京だけでは人材がなかなか採れませんので、北九州市からの応援もいただきまして「ラックテクノセンター北九州」を開設して、4月から稼働を開始しています。ここからの人材供給面がかなり当たっています。とくに九州地区や、広島・山口あたりまでが採用エリアになっていると実感しています。

以前は「それなりに、世界に通用する仕事をするなら東京」といったところがあったのですが、最近は地方でも、そうした活動を活発に行う風土が整ってきています。この北九州の例をプラスにして、他の地域にも応用していきたいと考えています。当社の体力等を鑑みながら進めていきたいと思っています。

そして、ガバナンスの強化です。不幸なことに、NEXIの件がありましたが、当社としましては公開しているとおり、先方の不適切な行為に不当に関与したという認識はまったく持っていません。しかし、疑義を生じさせたのは事実です。

交通事故等でも、ぶつかったからにはなんらかのことが原因、遠因としてはあるだろうということで、法律さえ守っていればいいということでありません。ましてや当社はセキュリティを推進していますので、他社から見てもしっかりした、透明性のあるガバナンスを確保する必要があるということで、まずは昨年度に審査部を設置しました。

さらに今年度から、「リスク統括委員会」というものにさらにレベルアップしました。「リスク管理委員会」から「統括委員会」に格上げしまして、活動を強化し、いわゆる「三戦」での防御態勢を確立しています。

市場背景

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今期の連結の業績予想になります。市場の背景としましては、「Society 5.0」に向かうということです。ご存知のように、とくにデジタルにおけるテクノロジーが世の中を支える、変えるということが言われていると思うのですが、私たちの年齢になると、なかなか使いこなせなかったり、身体に障がいがある方が、なかなかそのメリットを享受できないといったことがあります。

Society 5.0は、SDGsの件も含めて、あらゆる人がまんべんなくそのメリットを享受できるということが、その目指すべき姿です。そこに対して、先ほどお話ししたアジャイルといった部分は強化していくのですが、当然のことながら、いろいろな面でセキュリティは入っていきますし、当たり前のことになるでしょう。

ある面では、セキュリティを意識しなくても、そこそこ安全な世の中にしていかなければいけないということで、使命は非常に大きくなると捉えていますので、ここはしっかり攻めていくべき領域だと思っています。

2020年3月期の重点施策(体制強化)

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前期は、先ほどもお話ししましたが、「金融事業部」「エンタープライズ」「中部」といった事業部制をベースに敷いていたわけですが、一部を改定しました。フロントに立つのが「金融」「エンタープライズ」「中部」と「サイバーセキュリティ・公共」です。こうしたところにフロントのラインを置き、また事業戦略系とアジャイル開発センターをこういったかたちで置いて、事業フォーメーションをとって推進していこうと考えています。

従来、セキュリティの分野に関して、当社は他社に比べて比較的PRを打ってきています。市場を創出してきたという自負もありますし、「これからのセキュリティはこうあるべきだ」という方法論も提案し、実現してきた自負もあります。

これまでSI系では、そういった分野はなかなか取り組まなかったのですが、このアジャイル開発センターをベースに、経験したことから「新しい事業はこうやって立ち上げる」という部分に対する情報発信……当然、セキュリティもベースになるわけですが、「セキュリティを担保した事業立ち上げはこうするべき」ということで、積極的にアプローチしていこうと思っています。

昨年、仮想通貨取引事業者などで仮想通貨が盗まれる事件がありましたが、スタートアップ企業では当然ありがちなことです。セキュリティというのは、スタートアップ時にはほぼ考えられないわけです。ところが、あっという間に変異したときにどうすればいいのか。よって、立ち上げの時点から、鉛の翼をつけることなく軽快に飛び立てるけれども、しっかりしたセキュリティはなされている、という状態を作るのに、当社はアジャイル等で活躍できるのではなかろうかと思っています。

2020年3月期の重点施策(攻めの経営)

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ラック自身のところでは、こういう時代だからこそ攻めていかなければいけないと思っています。つい最近も、経営環境、経済が悪化したことがありますが、悪化したからといっても人は食べないわけではないですし、服を着ないわけでもない。買うものは買うわけです。

ご存知のとおり、米中の貿易戦争も、5Gというベースを睨んだ覇権争いです。そうしたところに端を発しているということで、当社の事業市場は十二分に存在していると考えています。

まずは、当社自身がデジタルトランスフォーメーションを推進する必要があるということで、次世代の次期システムです。正直なところ、我々は旧ラック、旧A&Iシステム、旧アイティークルーのシステムも個別で作っています。

世の中では「日本の情報システムは、2025年に死滅する」とよくいわれています。その前に、当社では次世代に対抗するような基幹システムにリニューアルしようと取り組んでいます。

同時に、クラウドを徹底活用した業務推進ということで、セキュリティ会社がクラウドを徹底活用するというのがポイントです。「ラックが活用しているなら大丈夫」というものを、いかに作っていくかということで実践していきます。

そして、働き方改革についてです。現在、雇用契約がどんどん変わってきています。政府の方針、法令が変わり、それに伴って働き方を変えるように言われています。いずれにせよ進めなければいけないのであれば、プラスに変えていかなければならず、我々はしっかりと真正面から取り組んでいます。

まずは、社内の人材をしっかり育成して、どのようにして今よりも活躍してもらうかという土俵を作っていくことが重要です。2つ目が、ベテランエンジニアがけっこういまして、これを人月単価だけ考えるのは非常にもったいないです。ここをいかに多面的に活用するかです。3つ目は、雇用契約が変わってきまして、SIもアジャイル等になっているということで、この新しい時代に対抗できる契約を、お客さまとどう結んでいくかは非常に大きなポイントだと思っております。

つまり、テクノロジー、マネジメント、契約の3点セットが、我々の事業推進の武器になると思っていますので、このあたりを率先して推進していこうとしています。

そして、事業拡大に向けた拠点拡充ということで、今期から東陽町のオフィスをスタートしています。ここ(今日の会場のあるエリア)の坪単価より、東陽町はその半分ぐらいの価格です。

確かに、ロケーションのブランドは落ちるのですが、中の設備や働き方でブランド化できれば、人が集まる環境を作れると確信を持っていますので、コストは下げつつ、いかに意欲を持って働く環境を作っていくかが非常にポイントだと思っております。

2020年3月期の重点施策(SSS事業)①

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SSS事業の大きな部分は、先ほどお話ししましたスレットインテリジェンスを活用したサービスの拡大を基本線に置いています。「CloudFalcon」は、我々の監視システムです。「FalconNest」は、先ほどお話しした無料でいろいろな診断をするツールです。また「JLIST」は脅威情報で、こうしたもので対策を支援していこうと考えています。

支援する先ですが、エンドユーザーだけでなく、同業に対しても支援していくということで、我々の間口を広げていきたいと考えています。

2020年3月期の重点施策(SSS事業)②

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マーケットは、大きく3つあります。1つ目が、スライドのAの部分です。大手企業はクラウドがどんどん進展していますので、ここに対応していきます。

Bが中小企業です。経産省などからも、セキュリティをきちんと対応してほしいというお話が出ていますので、そこをしっかり後押ししていきます。ただ、このあたりはラックが直接手がけるというのはなかなか難しいため、パートナーシップを武器に展開していきます。

そして、Cの部分は大手企業のサプライチェーン、グループ企業向けの一括サービスということで、ラックが直接見ていく必要があります。この「A・B・C」の作戦で展開していこうとしています。

2020年3月期の重点施策(SIS事業)

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SIS事業については、先ほどもお話ししていますが、お客さまのデジタルトランスフォーメーション、Society 5.0への対応ということで、ITソリューションを提供していきます。

ポイントは、クラウド、アジャイル、企業生産性向上です。当社から見ると、セキュリティの部分は最初から入っているのが1つのポイントで、フットワークよくITソリューションを出していこうとしています。

とくに働き方改革は、大手ファイナンスグループ向けにもサービスを提供しており、ニュースリリースもしています。そうした先行した事例で引き合いも増えてきていますので、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションといった切り口で、我々が切り込んでいける機会はかなりあると考えています。

連結業績予想(通期)

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(連結業績予想の)数字の部分です。売上高は440億円で、かなりチャレンジングな数字です。営業利益についてですが、「なぜ売上高が13.6パーセント増なのに、営業利益は5.7パーセント増なんだ」ということですが、非常にコンサバな数字を積んでおります。まずは、前期達成しなかった25億円をクリアします。

足元を固めて、売上高が440億円となりますので、その部分を利益に変えていこうという作戦を考えています。

ROEが昨年度の14.5パーセントから0.5ポイントマイナスになり、14パーセントを見込んでいます。経営指標からすると1ポイント足りないのですが、ROEは14パーセント、当期純利益は17億円を計画しています。

セグメント別業績予想(通期)

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セグメント別では、SSS、SISともに増収増益を見込んでいます。こちらはスライドをご覧いただいたとおりです。

2020年3月期 セグメント別業績予想(通期)

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このスライドは補足資料ですが、ポイントはSIS事業の開発サービスの部分で、約26億円のプラスを見込んでいます。そして、SSS事業のコンサルティングサービスでは約7億円の増収を見込んでいます。我々からすると、ここがチャレンジの部分です。

その他、多少前後はあるにせよ、そこそこまではいくだろうという見通しですが、(今お話ししたとおり)開発サービスの約26億円プラス、コンサルティングサービスの約7億円プラスがポイントです。

とくに、業界別にコンサルティングサービスをどこまで打ち込めるかというところです。開発サービスも、1発で20億円の大型案件でクリアしようとは考えておらず、だいたい2億円前後の案件を複数とって、この約26億円を作っていこうと考えています。

私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。

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