村田製作所が発表した2019年度(20年3月期)業績予想は、売上高が前年度比横ばいの1兆5800億円、営業利益が同18%減の2200億円と減益を見込んでいる。MLCC(積層セラミックコンデンサー)の在庫調整が長引き、一部用途での価格下落や操業度損が発生するため。

7月から需要回復を予想

 業績予想の前提として、MLCCの在庫調整が民生市場を中心に長引いており、需給環境が悪化。これが価格面に影響を及ぼしており、売価値下げに関しても、かなり厳しい設定になると予想している。また、19年1月から在庫過多解消のため、稼働も落としており、操業度損として19年度は240億円の減益要因になると予想している。

 なお、稼働率は19年度上期がMLCCで95%、下期は回復を見込み100%、通期トータルで98%を予想する。18年度第4四半期(19年1~3月)は会社全体で90%、MLCCは95%(27日稼働ベース)で推移した。稼働調整に伴い、19年度は生産高ベースで前年度比500億円程度減少する見込みであり、合理化効果も従来に比べて乏しくなる見通し。

 19年4~6月期売上高は3580億円(前四半期比横ばい/前年同期比4%増)を見込んでおり、現状は「計画どおりに進んでいる」(竹村善人取締役常務執行役員)という。流通在庫の状況から7月から需要が回復するほか、スマートフォンや自動車向けの員数増加も貢献してくると見ている。

メトロサークは減収見通し

 製品別売上高予想では、MLCCを中心とするコンデンサーで前年度比8%増を計画。数量ベースでは5%増を計画しており、残り3%は値上げを含む品種構成によるもの。通信モジュールは同11%減を見込んでおり、うち樹脂多層基板の「メトロサーク」も19年度は減収となる見通し。

 メトロサークの中長期的な展望に変化はないものの、19年度は採用点数に変化がないこと、さらに採用機種の販売台数が伸び悩むことなどから、踊り場を迎えるかたちとなる。同事業を統括する中島規巨代表取締役専務執行役員は、「MPI(変性ポリイミド)など競合材料も出てきており、技術的優位性を生かしながら顧客カバレッジも広げていきたい」と言及した。

 設備投資について、19年度は3000億円(前年度実績2916億円)を計画する。短期的な能力増強投資などは抑制しており、能力増強投資には投資額のうち1000億円を充当するにとどめる。中長期な成長に向けて建屋・付帯設備関連は積極的に投資を継続する構えで、1650億円を投じる。

18年度は過去最高売上も計画未達

 18年度実績は売上高が前年度比15%増の1兆5750億円、営業利益が同63%増の2668億円となり、売上高は過去最高を記録したものの、売上・利益ともに従来計画を下回った。ただ、営業利益はモジュール事業(大部分がメトロサーク)で177億円の減損損失を計上しており、これを除けば達成できたとしている。売上面ではやはり、スマホの生産台数下ぶれが予想以上に悪影響を及ぼした格好だ。

 製品別ではコンデンサーが前年度比28%増と大きく拡大。数量ベースで数パーセントの増収効果があったものの、大半は製品ミックス改善と値上げ効果によるものだ。SAWフィルターなどの圧電製品は、スマホ向けで高付加価値品の数量減少や単価下落により同9%減。その他コンポーネントはソニーから取得した電池事業が年間通じてフルで寄与したことや、MEMSセンサーがカーエレクトロニクス向けで増加し同22%増を記録した。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳