筆者は都内在住で働く母親であり、長男がASDとADHDの診断を受けています。まず「自分の子は発達障害かもしれない…」と思ったら、近くの発達障害者支援センター(支援センター)へ連絡すると思います。都内の場合は、「相談」するだけで3カ月以上待つところがほとんどです。もちろん一般的には平日なので、土日休みの共働き夫婦は仕事を休んで行く場合が多いと思います。

筆者の場合は息子が2歳半の時に連絡したこともあり、低年齢のため「すぐに診断」とはなりませんでした。何度か相談に通う日々が続きました。しかし共働き夫婦だと、仕事との兼ね合いで通い続けることが困難になりがちです。また発達障害が疑われる子どもは、体調や機嫌の悪化が頻繁に起こります。ですが、ここで挫折してしまっては診断にたどり着けません。

まだまだ困難は続きます。ようやく「検査」できることになっても、1年待ちがほとんどです。筆者の場合は3歳過ぎの時に「田中ビネー知能検査」の予約を取れましたが、やはり1年待ちでした。「空きがでたら連絡して欲しい」と希望を伝え、ひたすら待つ日々…。その後運良く3カ月後に連絡が来たのですが、『今日2時間後に検査できます。いかがですか?』とあまりにも急な連絡でした。

共働き夫婦の場合、このような突然の連絡に対応できない場合がほとんどだと思います。そうなると、やはり1年待ちは覚悟しなければならないでしょう。ですが、知能検査を自費で受ける場合はもう少し早くできる可能性が高いです。料金は医療機関によって様々ですが、数万円~がほとんどのようです。

第二の壁・・・保活より過酷な療育施設探し

「発達障害」へのケアは、投薬や療育が一般的です。低年齢の場合は、療育のみのケアが多いようです。筆者も「療育施設一覧」を握りしめ、息子を受け入れてくれる施設がないか電話をかけまくりました。10以上の施設へ問い合わせたところ、待機児童が多すぎて予約すら受け付けていないところが大半でした。また、特定の宗教団体や営利集団が運営する施設は除外しました。筆者が予約できた施設は5施設でした。もちろん支援センターの療育の空きは1つもありません。

待つしかありませんが、医師には『早期療育が重要』と言われているので焦る親も多いと思います。

家庭内療育の教材セットなどは数十万円~といったものが多く、なかなか手を出せません。

仕方なく我が家では短期の療育サービスなどを利用しましたが、全額自費なので1回1万円~と家計を圧迫。

予約から1年半後、1つの療育施設から空きが出たとの連絡がありました。しかし希望していた土曜日ではなく、平日とのこと。やはり土曜日は人気が高く、なかなか空きはでません。平日だけ空きが出ても、土日休みの共働き夫婦の場合諦めてしまうこともあるでしょう。

第三の壁・・・母親が働くことの難しさ

育児にはお金がかかります。そして発達障害児の育児には、もっともっとお金がかかります。そのため共働きを維持せざるを得ない家庭もあるでしょう。

診察の際、『土曜日だけではなく、平日も療育に通えるようにできませんか?仕事はどうにかなりませんか?』と言われました。もし私が父親だったら、同じことを言われたのか分かりません。しかし「私が働いているせいで、この子は療育を受けられない・・・」と思い詰めてしまうのは、母親が多いのかもしれません。

地域・経済格差、母親の負担をもう一度考えてほしい

かつて、自閉症の原因が母親の育児によるものと考えられてきた時代がありました。現在は生まれつきのものとの認識が広がっていますが、そのケアについては親の責任、とくに母親の責任がとても大きくなっています。

また、療育が受けられる子どもの経済・地域格差も大きいのが現状です。送迎付きの療育を週に何度も受けられている子どもがいる一方、1度もケアを受けられないまま小学生になる子どもも存在しています。

どの子どももケアを受けられる社会へ、そう願わずにはいられません。

参考資料:

「精神保健福祉資料」(厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業(精神障害分野))精神科医療提供体制の機能強化を推進する政策研究)より

尾藤 ちよ子