2019年3月、大手ソフトウエア会社「サイボウズ㈱」の青野慶久社長が、夫婦別姓を選択できない戸籍法の違憲性について国を訴えました。これに対し東京地裁は「請求棄却」、つまり「合憲」と判決を下しました。働く女性が増えた現在、戸籍上は夫婦同姓にしながら旧姓で仕事を続ける女性も増えています。または、籍を入れずに「事実婚」をしている夫婦もいます。

筆者は今まで深く考えてきませんでしたが、いざ自分が離婚を経験して「夫婦同姓」であるが故の苦しさ、辛さを経験し、「姓を選択できていたら・・・」と思うようになりました。結婚時に姓を選択できないのはなぜなのか。令和こそ、選択的夫婦別姓制度が導入されるのでしょうか。

姓が変わった、それだけで増える心の傷

「結婚したら、配偶者の姓を名乗る」

結婚と同時に配偶者親族の所有物になるみたいで筆者は嫌でしたが、仕方のないことと思い夫の姓を名乗っていました。結婚後に就職した会社では、夫の姓で呼ばれていました。その後事情があり離婚しましたが、上司に相談すると

「旧姓になるんだよね? じゃあ社内文書で報告させてもらうから。いいよね?」と言われ、承諾するしかありませんでした。

もちろん、離婚しても元夫の姓を使用する「婚氏続称」は法律で認められています。しかし「配偶者親族の所有物になるみたい」と初めから思っていたわけですから、これは望んでいません。また子どももまだ幼かったので、「姓を変えるなら、今!」という気持ちが強かったのです。

社内文書が回った日は、逃げ出したい気持ちになりました。様々な視線にさらされ、旧姓で呼ぼうと努力してもらっているので頭を下げながら仕事をしました。

また、銀行口座やクレジットカード、保険証などの姓の変更の手続きは煩雑なものです。結婚した時はまだ、良かったんですけどね・・・。

幼子も抱えていたので「さあ、これから頑張って働かなければ!」と思っている時に、仕事を休んで役所へ行かなければならず、仕方のないこととはいえ気持ちが塞ぎました。これとは別に、子どもの親権変更の手続きも同時にこなします。

その後何カ月かして休憩中、同僚の男性社員から「離婚しました!」と個別で報告を受けました。彼も色々大変だったようですが、彼の場合の離婚報告は雑談の一部でした。

『同じ離婚でも姓が変わらない離婚ってこんなものなんだ・・・』彼に失礼かもしれませんが、彼の離婚報告には一種の明るさも含まれているように感じました。

仕方のないこと・・・それでも、社内文書で離婚を報告されたのはつらいものでした。

なぜ姓を選択できないのか