皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

花粉症の季節が本格化していると感じます。私は、外出時にマスクが手放せなくなっています。

さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。

  • 政府による財政支出が景気を支える局面もあるが、経済成長のエンジンとしては、個人消費と(企業の)設備投資が重要であると考える。
  • そして、設備投資動向を考える上では、日本工作機械工業会が発表する工作機械受注データが重要。2018年暦年の受注は前年比10%超となっているが、地域別にみるとアジア(特に、中国)からの受注が弱い。加えて、2018年12月の単月データを確認すると、弱含んでいる地域が増加していることに加え、中国向けは前年比-56.4%と大きな落ち込みになっている。
  • 中国は「レバレッジ縮小」から「景気対策」に経済政策の軸足を移している可能性がある。そして、仮に米中の貿易協議がなんらかの進展をみせれば、中国からの工作機械受注は現在大きく落ち込んでいるだけに、反発する可能性があると考える。


経済成長のエンジンとして、個人消費と(企業の)設備投資が重要なことは皆さんがご承知の通りです。そして、個人消費と設備投資を比較した場合、個人消費は数字の振れが小さい一方でその(GDPに占める)ウェイトが大きいという性質を持ちます。これに対して、設備投資はウェイトは小さいものの、その数字の振れ幅が大きいという性質をもっています(我が国での例、図表1)。

そして、設備投資の動向を予測する上では、日本工作機械工業会が発表する工作機械受注が重要と思われます。工作機械は、自動車、家電製品などの製品を部品から加工して製造するための機械であり、生産能力の増強のためには工作機械が必要で、設備投資の先行指標になるといわれています。

図表1:我が国名目GDPに占めるウェイト

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※2018年4Qのデータ、支出サイド、季節調整済み。


暦年ベースでみた場合、工作機械の受注額は2018年に前年比10.3%増加し、1兆8158億円となり、2年連続で過去最高を更新しています。

これを、地域別に分解したものが、図表2です。

図表2:日本工作機械工業会 受注統計(2018年)

出所:日本工作機械工業会のデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
*その他地域があるため、構成比の合計は100とならない。


2018年暦年の地域別データをみると、(皆様も予想される通り)アジアが落ち込んでいることが分かります。アジアの内、中国をみると、2018年暦年では前年比マイナス17.9%と大幅減少となっており、中国からの受注が厳しいことが分かります。

目を転じてもう少し直近の動きをみるため、2018年12月の単月データを確認すると、弱含んでいる地域が増加していることに加え、中国向けは前年比マイナス56.4%と極めて大きな落ち込み幅となっています。

「わが国製造業の強みのひとつである工作機械」の受注において、国内(内需)に次ぐ構成比を持つアジア向け(特に中国向け)が大きく落ち込んでおり、前述の中国からの受注が前年比マイナス56.4%という状況は、設備投資が振れ幅の大きい項目であることを考慮しても、大きなものであると考えます。

このような状況の中、1月の中国の新規人民建て融資や社会融資総量は、いずれも過去最高となりました。(単月の数字で評価すると見方を誤る可能性はあるものの)中国はレバレッジの縮小から景気対策にジワリと経済政策の軸足を移していると考えています。

景気対策に加えて、仮に米中の貿易協議がなんらかの形で進展をみせれば、本日ご紹介した工作機械受注データは(一定の時間は必要なものの)反発する可能性があり、これはわが国株価の上昇要因になると考えます。

暦年ベースで好調だった工作機械受注は、中国に代表されるように、足元で落ち込みがみられます。

今後の数字の推移に注意したいと考えます。

(2019年2月25日 9:30頃執筆)

柏原 延行