FPD露光装置、ニコンが再びキヤノンを上回る

ディスプレーの供給過剰で19年市場は縮小

ニコンの10.5G用露光装置「FX-103S」

 2018年10~12月期のFPD(Flat Panel Display)露光装置の出荷台数は、キヤノン、ニコンの主要2社で35台となり、11四半期連続で30台を超えた。これにより18年通年の出荷台数は2社合計で142台(17年は149台)となった。わずかながら4年ぶりに前年実績を下回ることになったが、それでも10年以降で過去2番目の出荷台数を記録した。

キヤノンとニコンで市場を独占

 FPD露光装置は、テレビ用やスマートフォン用など、様々な画面サイズの液晶ディスプレーや有機ELディスプレーを駆動する薄膜トランジスタ(TFT)回路の形成に使用される。FPD製造のもとになるガラス基板(マザーガラス)のサイズに応じて使い分けられており、一般的に第6世代(6G=1500×1850mm)以下を中小型、第7世代(1870×2200mm)以上を大型と呼んでいる。

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 近年は、4K/8Kなどの登場でディスプレーの解像度が上がっており、同一サイズ内に作り込まれるTFTの数が増え、回路をより微細に露光する必要がある。このため、FPD露光装置にも高解像度対応が求められており、形成できる回路線幅は従来の3μmから現在は1~2μmに微細化している。

 半導体の露光装置市場にはキヤノン、ニコンに加えてオランダのASMLがおり、このASMLだけが最先端のEUV(極端紫外線)露光装置を製品化し、世界市場をリードしている。だが、FPD露光装置はキヤノンとニコンが市場を独占しており、現在のところ世界中のFPDメーカーは日本の2社無くしてディスプレーを製造することはできない。もともと、キヤノンはテレビ用などの大型ディスプレー向けが強く、ニコンはスマホ用などの中小型ディスプレー向けにシェアが高いといわれてきた。

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キヤノンは15台減の69台を出荷

 キヤノンは、15年に高精細中小型ディスプレー向けの露光装置を強化。ここに、韓国サムスンディスプレーを中心として、スマホ用有機ELディスプレーへの大型増産投資という追い風が吹いた。グループ会社のキヤノントッキが手がける有機EL蒸着装置への需要が急増したことに後押しを受けて、17年は中小型向けの出荷を大きく伸ばし、大型向けの出荷台数を中小型向けが上回った。

 直近の18年10~12月期にキヤノンは前年同期比4台減の17台を出荷した。これにより18年の年間ベースの出荷台数は69台となり、17年の84台から減少した。スマホの販売不振で中小型への投資が調整局面に入ったことが要因だが、高精細技術を活かして中小型向けを中心にシェアを高めた。

 19年通年の出荷台数は56台を見込んでおり、18年からさらに減少する見通し。独自の一括露光システムでつなぎ目が出ないパネルを生産できる強みを活かし、大型テレビ用に需要増が見込まれる高精細パネル向けの需要を捉えていく考えだ。

ニコンは10.5G用が寄与し73台

 17年こそ出荷台数首位の座をキヤノンに譲ったものの、18年は再びニコンが巻き返した。ニコンは、18年10~12月期に前年同期比4台増の18台を出荷した。内訳は、10.5G(2940×3370mm)用が4台、7/8G用が6台、5/6G用が8台。中小型向けが減少したものの、同社が世界で唯一提供している10.5G用が計画どおりに拡大し、大幅な増収増益になった。これによって18年の通年出荷台数は73台(17年は65台)となり、台数ベースでキヤノンを上回った。

 ニコンは18年2月、10.5Gマザーガラスに対応したFPD露光装置の新製品「FX-103S」「FX-103SH」を正式発表した。販売自体は17年10~12月期から開始しており、この販売が順調に推移したことが18年度の業績に寄与している。

 10.5G用露光装置は、既存の10G用露光装置「FX-101S」に比べて露光やキャリブレーションのシーケンスを刷新し、高タクトタイムを達成した。また、計測精度を向上するためFX-101Sの位置計測システムを新たに設計し、±0.5μmの高精度アライメントも実現した。また、スループットも大幅に向上した。65インチを生産対象とした場合、FX-101Sに対して77%増の毎時480枚、75インチでは毎時322枚を達成した。

 18年度通期(19年3月期)では70台の出荷を計画している。内訳は5/6G用が16台、7/8G用が36台、10.5G用が18台で、従来予測を据え置いた。これにより19年1~3月期は16台(5/6G用4台、7/8G用5台、10.5G用7台)の出荷を見込んでいることになる。

19年市場は縮小が確実視

 FPD市場では現在、iPhoneをはじめとするハイエンドスマホの販売不振に加え、テレビ用では中国FPDメーカーが10.5G工場での生産を継続的に増強しているため、ディスプレーの供給過剰が懸念される状況になっている。このため、FPDメーカーの投資意欲はスローダウンしており、19年はFPD製造装置メーカーの苦戦が予想されている。キヤノンの19年計画を見る限り、FPD露光装置市場も19年は縮小を余儀なくされそうだ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏

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津村 明宏

1995年3月 関西大学 経済学部卒。1999年3月 ㈱産業タイムズ社に入社。
電子デバイス業界の専門紙である電子デバイス産業新聞(旧・半導体産業新聞)の記者として、2007年より副編集長、2009年12月より編集長