ブラジル株式は史上最高値

2018年は好調なパフォーマンスを示した資産クラスがほとんどなく、投資家にとって厳しい年でした。その中で、1人勝ちの様相を呈していた米国株式も年末に大幅下落し、通年のパフォーマンスはマイナスに終わりました。このような変動幅が大きい市場環境で、かじ取りの難しい株式ですが、好パフォーマンスを遂げている株式があります。ブラジル株式です。

ご存知の通り、新興国株式は2018年で最も下げ幅が大きかった資産クラスの1つです。トランプ政権の保護主義的な通商政策による貿易摩擦や世界的な景気減速懸念の高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ・米ドル上昇を受け、米ドル建て債務の多い新興国の借り入れ負担増への懸念が広がり、さらに、トルコ、アルゼンチン等の政治動向を巡る不透明感など、新興国市場にとってマイナス材料が浮上したため、リスク回避の動きが優勢となり、新興国市場からの資金流出が拡大したことが背景にあります。

一方、ブラジルの主要株価指数であるボベスパ指数は、世界の株式市場が下落した昨年末にかけても上昇基調を続け、1月には史上最高値を更新しました。 

改革志向の新大統領

ブラジル株式市場の上昇の背景には、昨年10月に行われたブラジル大統領選挙で、改革志向のジャイール・ボルソナロ氏が勝利したことが考えられます。2019年1月1日に大統領に就任したボルソナロ氏は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、基調講演に登壇し、構造改革による経済開放の実現を訴え、新政権の経済政策を国内外にアピールしました。経済相に指名されたパウロ・ゲジス氏は、複数の省庁をまたいで経済政策を運営する権限を与えられており、年金の受給開始年齢を引き上げる社会保障制度改革や、国営企業の民営化、税制改革等に取り組みます。

新政権の政策の中でも社会保障制度改革が特に重要視されるのは、社会保障収支の赤字が財政問題の構造的な原因となっているためです。ブラジル財務局によると、社会保障費の赤字は2018年1~11月の期間に、2014年同期実績の2.5倍に増加しています。社会保障制度改革を通じた財政健全化はブラジル経済にとり最大かつ喫緊の課題であり、ブラジル株式市場の見通しにとっても重要なポイントになります。

回復基調の経済成長と安定したインフレ率

ブラジル経済は2014年から2016年にかけて政局の混乱と景気後退に直面し、大幅なマイナス成長に落ち込みましたが、V字回復を遂げ、今後も回復基調が継続する見込みです。先月発表されたIMFの世界経済見通しでも、2019年の世界経済成長率が下方修正されましたが、ブラジルの経済成長率は2.5%と0.1ポイント上方修正されました。

加えて、インフレ率もこの数年で大幅に低下し、インフレ率目標圏(3~6%)内である4%程度と安定的に推移していることから、今後も中央銀行が緩和的な金融政策を維持すると見込まれています。政策金利が低水準に維持されれば、民間銀行セクターの貸し出し拡大を通じ、内需主導の景気回復を後押しするでしょう。

好調な企業業績に裏付けられた株価上昇

新政権による改革への期待と堅調なファンダメンタルズに支えられ、史上最高値を記録したブラジル株式市場ですが、ボベスパ指数のPER(株価収益率)は、米国の主要株価指数であるS&P 500指数のPERと比較しても低水準にとどまっています。また、循環的景気回復を背景に企業収益は改善方向にあります。長期的に株価は企業業績に連動する傾向にあることから、今年は好調な企業業績に裏付けられた株式市場のさらなる上昇が見込まれます。

個人消費拡大に期待

長かった不況を脱し、回復基調が続くブラジル経済では、GDPへの寄与度が高い個人消費の伸びが期待されます。2018年12月の正規雇用統計(CAGED)によると、2018年の正規雇用純増数が、2014年以来の高水準を記録しました。また、ブラジルの人口規模は世界第5位、2億人以上に上り、膨大な国内消費需要の拡大も期待できます。収益性とバリュエーションの両面でも、一般消費財・サービスセクターに注目が集まります。