しかし、新卒の初任給比較では、アメリカのシリコンバレー周辺にある世界トップクラスのIT企業の初任給は年俸1000万円を超えるケースも珍しくありません。企業は優秀な技術人材を引き抜かれないように給与を上げています。それに比べれば低い水準ですが、一昨年、日本でもファーウェイ(中国)日本法人の「2017年新卒初任給40万円」の求人が話題になったので、覚えている方も多いでしょう。

一般の日本企業では、新卒初任給は20万円台が常識ですので、人材獲得競争では勝負になりません。新卒の場合、就職して経験を積みたいときには安い給与でも良いかもしれませんが、ある程度経験を積んでくれば思った以上に上がらない給与に満足できず、日本を去って非日系企業へ流れてしまうかもしれません。

多くの日本人は給与水準以外の諸条件、たとえば新たな挑戦ができる、誘われて意気に感じるなどの定性要因に大きな影響を受けるような気がしますが、マネジメント層や高度スキル人材を国内外から本格的に採用しようとする場合は、日本の人気凋落という深刻な現実を直視すべきでしょう。

政策レベルでは高度人材受け入れへ

政策レベルでは、昨年12月に出入国管理法改正案が可決され、この4月1日から施行されます。

今回の改正では、「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格が創設されました。「1号」は日常会話程度の日本語能力や一定の能力・知識を条件に、最長5年の滞在を認めました。「2号」は熟練した技能を持っていることを条件として在留期限の更新と家族の帯同を認めています。

政府側からは初年度に最大4万7,550人、5年間で最大34万5,150人を受け入れるとの試算が示されています。

しかし、今後、日本が経験と技術を持った海外の高度人材を呼び込むには、さらなる対策が必要ではないかと推察しています。アジア人にとって日本は憧れの国といった古い感覚を引きずった日本人はまだ絶滅していないようです。停滞が続いた平成で時間が止まっているのかもしれませんが、そろそろ目を覚ました方が良いでしょう。

また、多くの日本企業の採用・人事においては、日本を取り巻く不利な諸条件をカバーするような高い給与水準・高待遇を用意しなければ、高度人材の採用や保持はままならないでしょう。

今後、日本の政府・企業は井の中の蛙にならず、日本がどう評価されているか現実を正確に理解した上で適切な対応が必要でしょう。さもなくば、中長期的には日本人を含む優秀な高度人材が日本にあまり残っていないという悲惨な状況になってしまうかもしれません。

大場 由幸