サムスンがノートPC用有機EL量産へ、伸び悩むスマホの穴埋めなるか

大画面化で工場稼働率アップを狙う

SDCが量産する15.6インチ4K有機ELディスプレー

 韓国のサムスンディスプレー(SDC)は、ハイエンドのノートパソコン向けに15.6インチ4K有機ELディスプレーを開発し、2月中旬から量産を開始すると発表した。

 開発したパネルは0.0005~600ニットの範囲の明るさレベルと、12万:1のダイナミックコントラスト比を実現。液晶と比較して、黒色は200倍暗く、白は2倍明るく表示されるため、HDR(High Dynamic Range)の利点を最大限に活かした最高解像度のビデオ・画像を再現することができる。

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 同サイズの液晶パネルの2倍となる40万色を表現することができ、DCI(Digital Cinema Initiatives)を満たす色で、生き生きとした画像を可能とする。デジタルシネマの規格であるDCI-P3の全色域を完全に損なわないように設計されており、目に害を及ぼす可能性がある青の波長が大幅に短くなり、長時間使用しても画像が見やすくなるという。

 また、同サイズの液晶と比較して1.7倍のカラーボリュームを備えているため、屋外での画像の劣化を抑えながら視認性を向上することができる。VESA(Video Electronics Standards Association)の最新のDisplayHDRトゥルーブラック規格も満たした。

 これまでSDCが量産してきた有機ELディスプレーでは、タブレット端末「Galaxy Tab S4 10.5」などに採用した10.5インチが最大だったとみられ、15インチクラスの本格量産は今回が初めて。

スマホ向け需要が伸び悩み大画面化を推進

 SDCの親会社であるサムスン電子は、18年11月に米サンフランシスコで開催した開発者会議「2018 Samsung Developer Conference」で、フォルダブル(折りたたみ可能な)7.3インチの有機ELディスプレーを搭載したスマートフォンの試作端末を公開し、これに搭載するフォルダブル有機ELディスプレーの量産を数カ月以内に始める予定と述べ、19年の早い段階でフォルダブルスマホを発売する考えを示した。

 このように、量産する有機ELディスプレーを徐々に大画面化しつつあるのは、スマホ向け有機EL需要の伸び悩みが背景にある。

 SDCが生産するスマホ向けフレキシブル有機ELユーザーは、現状でサムスン電子と米アップルが大半を占めている。だが、アップルは有機ELの搭載モデル数こそ増やしているものの、iPhone新モデルの販売が伸び悩んでおり、人気が液晶を搭載した旧モデルに集まる傾向にある。

 一方で、サムスン電子はスマホ出荷台数の減少が止まらない。調査会社IHS Markitの調べによると、サムスン電子のスマホ出荷台数は17年の3.16億台から18年は2.91億台へ減少したとみられ、ファーウェイやシャオミー、オッポ、ビーボといった中国ブランドがスマホ市場でシェアを伸ばすなかにあって、19年も回復を見込みづらい状況にある。

有機EL投資再開を占う要因の1つに

 今後、中国ブランドがスマホへの有機EL搭載比率を上げてくることが予想されるが、現状ではまだ高いパネル価格を嫌い、中国ブランドはBOEやビジョノックス、天馬微電子といった中国ディスプレーメーカーが安価にスマホ用有機ELを量産できるようになるのを待っている。

 つまりSDCは、主用途であるスマホ用でサムスン、アップル向けの需要拡大が見込みづらいなか、フォルダブル対応やノートパソコン用へ有機ELの用途を拡大し、端末1台あたりに搭載されるパネル面積を拡大して保有する生産能力を埋め、工場の稼働率を高めていく必要があるのだ。実際のところ、モバイル機器用有機ELを生産しているSDCのA3工場の稼働率は18年通年で平均60%程度だったとみられ、常に90%以上を保っていた17年夏ごろに比べて低い水準のままにある。

 SDCは現在、A3工場の生産能力でほぼすべての需要に対応できるため、A4工場への装置導入や新工場A5の拡張投資を延期・凍結している。ライバルの韓国LGディスプレーも同様で、これによって韓国向け有機EL製造装置の需要が大きく低迷している。フォルダブル端末の発売やノートパソコン向け有機ELの需要が今後どう推移するかが、韓国ディスプレーメーカーの有機EL投資再開の行方を占う要因の1つになるだろう。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏

参考記事

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津村 明宏(電子デバイス産業新聞)

1995年3月 関西大学 経済学部卒。1999年3月 ㈱産業タイムズ社に入社。
電子デバイス業界の専門紙である電子デバイス産業新聞(旧・半導体産業新聞)の記者として、2007年より副編集長、2009年12月より編集長