ニュージーランドのペットショップを覗いてみると、ちょっと意外な光景に出くわします。フロアにはペット用品ばかりが並び、動物といえば金魚やモルモット、ウサギをほんの一角で扱う程度。犬や猫は見かけません。

それでも公園に行けば、飼い主と一緒に散歩する犬に会いますし、家々の窓辺に猫がのんびり昼寝しているのを目にします。いったい、こうした犬や猫はどこからやって来るのでしょうか。

人々の熱意で支えられる保護施設

筆者宅で飼う猫のウェンズデーは動物保護施設出身です。犬や猫を飼おうと思ったら、施設から譲り受けるのがニュージーランド流※。そんな施設の代表が、「ロイヤル・ニュージーランド・ソサエティー・フォー・ザ・プリベンション・オブ・クルーエルティ・トゥ・アニマルズ」。(※ブリーダーから入手するなどの方法もあります)

通称「SPCA」と呼ばれ、世界で最も長い歴史を誇る英国の同名団体の流れをくんでいます。国内拠点は38カ所。捨てられている動物を引き取り里親を探すだけでなく、法的権限を持っているので、動物を虐待する飼い主を訴えることもできる組織です。

運営にあたっての政府からの援助金はゼロ。寄付とボランティアだけで支えられています。筆者は毎年数回SPCAの街角募金に携わっていますが、人々が気前がいいのには驚かされます。小銭でもありがたいのに、20ドル(約1,500円)札を躊躇なく寄付する人もいるのです。ニュージーランド人の動物保護への熱心さを感じます。

雑種の猫でも、1つの大切な命

ペットの飼育状況について調査した「コンパニオン・アニマルズ・イン・ニュージーランド2016」によれば、ニュージーランドはペットを飼う世帯の割合が世界で2番目に多い国だそうです。1位は米国で65%。ニュージーランドは64%と僅差で1位に迫っています。

一番人気は猫。全世帯のうち44%が1匹以上の猫を飼っているそうです。向こう三軒両隣に猫が住んでいると言っても過言ではありません。

筆者宅にウェンズデーがやって来たのは3年ほど前のこと。保護施設に家族全員で「お見合い」に出かけました。施設内は飼い主候補でいっぱいでした。待ち受ける猫たちは雑種とはいえかわいく、猫好きとしては全部連れて帰りたい衝動にかられます。

娘が一目ぼれした、元気よく遊ぶ猫はすでに里親が決まっているとのこと。次に目に留まったのは、周囲が騒がしいのにマイペースで昼寝をしていた子猫。この小鳥のように高い声で鳴くスリムな黒猫が我が家の新しい家族になりました。

動物保護施設から我が家にやってきて1カ月たった頃のウェンズデー