皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

12月に入り、さすがに寒い日も増えてきたように思います。ご自愛ください。

さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。

  • ダウ・ジョーンズ工業株価平均(以下、ダウ平均)は、足元で、2営業日合計で1,000ドル近い下落があった。
  • 下落の背景としては、米国を中心とした景気後退懸念が強いと思われる。他の市場の動向としては、一部投資家から景気後退期入りの兆候という捉え方をされた米国の「5年国債利回りー2年国債利回りの金利差」は依然ややマイナス。一方で、上海総合指数(中国株)は、10月18日の足元の安値と比較すると、現時点で一定の底堅さがみられる。
  • 米国の経済指標を見た場合、貿易・知財問題の先行きに対する不透明感から、企業の景況感は悪化、一方で、個人関連の経済指標は底堅さを維持しているという評価ができると考える。
  • 現在の株式市場の地合いは相当悪く、悪材料に反応しやすい状況であるとの認識。このような局面では、雰囲気に流されない冷静な投資判断が重要。目先では米連邦公開市場委員会(以下、FOMC)の結果に注目。

 

ダウ平均は、12月14日、17日と2営業日連続で、各500ドル程度下落し、2営業日合計の下落幅は1,000ドルを超えました。12月18日、19日に開催される米国の金融政策を決定するFOMCを前にしたリスク回避的な動きもあるといわれています。

加えて、17日に発表されたニューヨーク連銀製造業景気指数(12月)が10.9と、前月の23.3から-12.4ポイント悪化したこと(予想比でも下振れ)など、底流には米国が景気後退局面入りするのではないかという懸念が強いことが下落の理由として挙げられます。

ニューヨーク連銀製造業景気指数は、ニューヨーク州の製造業における景況感を示す経済指標で、仕入価格、販売価格、新規受注、受注残、雇用者数などに関する調査結果を指数化したものであり、0が景況判断の分岐点となっており、指数がプラスの場合は景況感が良く、逆にマイナスの場合は景況感が悪いことを示します。

現状は、0を上回っていますが、前月比、及び予想比の悪化は、将来の指数の悪化の兆しという解釈も可能なように思われます。

この指数は、2014年9月の29.9から2016年2月の-16.9まで1年半近くの下落トレンドに見舞われました。

2015年は皆様がよくご存じのように、中国株の下落などに代表されるチャイナ・ショックが起こった年です。2015年のダウ平均は、2%程度の下落となっており、この先もこの指数が下落を続けるのであれば、株価の調整直面に入ると考えることもできそうです(この悪化局面では、いわゆる景気後退期(リセッション)には陥っていません)。

この指数の内訳をみると、出荷の数字が21.0と前月比-7.0、新規受注、受注残がそれぞれ-5以上の悪化となっています。一方で、雇用者数は26.1と、前月比+12の改善となっています。

これに先立ち、14日に発表された小売売上高(11月)は前年同月比+4.2%の増加となり、堅調な数字でした。これらの数字をみると、米国の経済はごく簡単にいうと「①米中の貿易・知財問題を抱え、企業部門の景況感は慎重」。一方で、「②雇用が好調で、賃金にも底堅さがある中、個人部門は底堅い」と整理できると考えます。

それでは、10~12月期の米国の経済成長を示すGDP成長率(実質ベース)については、どのような数字になると予想されるのでしょうか。10~12月期の数字は、当然のことながら、12月が終わらないと発表されないのですが、米国のアトランタ連銀とニューヨーク(NY)連銀は、これまで発表されたデータに基づく予測値を計算しています。

この中では、アトランタ連銀のGDP予測(10-12月期)が、足元で3.0%まで上昇したことが特徴的です。

現在のマーケットは、景気後退の兆候と解釈できる経済指標に非常に敏感になっており、これは昨今の株式市場の地合いの悪さを示すものと思われます。ただ、投資家にとって重要なことは、雰囲気に流されず、実際の景気後退に至る可能性を冷静に見極めることだと考えます。

図表:アトランタ連銀・NY連銀のGDP予想モデル
(2018年7-9月期、2018年10-12月期)

※前期比年率、アトランタ連銀:2018年9月4日~2018年12月14日
※ニューヨーク連銀:2018年9月7日~2018年12月14日
※2018年7-9月期実績:改定値
出所:アトランタ連銀、ニューヨーク連銀が提供するデータをもとにアセットマネジメントOneが作成。

(2018年12月18日 9:30頃執筆)

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柏原 延行