2010年代に入ると、子育て中にスカウトされた「タキマキ」こと滝沢眞規子さんや、クリス・ウェブ・佳子さんといった元一般人のモデルが活躍。

ファッションのコーディネートページにカジュアルな要素が増えるとともに、働くママのためのコーディネートも充実していきます。

また、子育て世代のライフスタイルの多様化にともない、誌面の内容にも変化が見られます。

  • 「子育てがつらい私はダメ母ですか?」(2013年2月)
  • 「『いい母』の定義なんて誰が決めた?」(2016年10月)
  • 「ママだからって、夕食をがんばりたくない宣言!」(2018年3月)

このように「時々、子育てが辛い」という感情に寄り添いつつ、家事や育児をパーフェクトにがんばらなくてもいいという特集が組まれるように。

2015年には世の中の「イケダン」に向けて、<忙しすぎて洗えなかった夕食のお皿をとがめたことはありませんか?(中略)「ありがとう」という前に、ストックの切れそうなトイレットペーパーを買ってこよう。言葉より、そろそろ態度で示そうよ> というメッセージを発信し、SNS上で話題となりました。

冒頭で紹介した2019年1月号の特集に至るまでには、こうした様々な「前振り」があったのです。

親世代から引き継いだ「夫は稼ぎ、妻は家事と育児をすべき」という価値観は、まだまだ子育て中の男女にまとわりつき、不況から就職氷河期をくぐりぬけた世代に、「幸せとは何か」という疑問を投げかけ続けています。

「“家事をしろ”と言う前に、男と同じだけ稼いでこい」と妻を見下す夫、「育児の大変さを知らないくせに」と夫を見下す妻。

そんな不毛な争いの原因の1つがそれぞれの育ってきた家庭環境にあるとしたら、その連鎖をVERY世代で断ち切ろうという気概が感じられます。

今回の『VERY』の特集は、現代の子育て世代が社会の「過渡期」に置かれていることを自覚しつつ、子どもたちの未来を見据えた示唆に富む特集だと言えるのではないでしょうか。

北川 和子