村田製作所は、2021年度(22年3月期)に売上高2兆円、営業利益率17%以上(為替前提1ドル=110円)を目指す中期計画を発表した。スマートフォンおよび車載分野の伸びを中心に、年率約9%の成長を見込む。

車載は年率15~20%成長

 村田恒夫社長によれば、スマホ向けなどで構成される主力の通信分野は年率5~10%、近年急激な伸びを見せる車載分野は年率15~20%の伸びが期待できるという。さらに、25年度に向けてはエネルギー、ヘルスケア分野にも再度注力していく構えを見せた。

 主力事業の1つであるMLCC(積層セラミックコンデンサー)は、車載向けの高信頼性品を中心に今後も大幅な数量増を見込む。今後はこれら高信頼性に加え、ECU小型化ニーズの進展に伴い、小型・大容量化が進展すると見ている。

 足元では電装化の進展により、クルマ1台あたりのMLCC搭載数が劇的に増加。多いもので8000個、最近では1万個以上を搭載する車種も出てきている。さらに、自動運転を含むADAS(先進運転支援システム)の普及も需要を押し上げる材料となり、車載用MLCCの数量拡大が今後も進む見通し。

 こうした状況下、同社では国内外でMLCCの生産能力増強に取り組んでいる。17年度にフィリピンで生産棟を建設したのに続き、19年11~12月に福井、出雲、中国・無錫の3拠点で新棟が竣工する予定だ。

メトロサークは新材料との競合発生

 MLCCに並ぶ主力製品であるSAWフィルターでは今後、モジュール向けを中心に増加が見込まれており、従来のSAW製品に加え、独自の「I.H.P.-SAW」のラインアップなどを拡充していく。重点分野であるRFモジュールについては、「ほぼ狙いどおり交渉は進んでいる」(代表取締役専務執行役員の中島規巨氏)として、来年以降、主要顧客でのシェア拡大に自信を見せた。また、5Gに向けた取り組みも強化しており、サブ6GHz帯を中心にモジュール製品のサンプル対応などを強化していく。

 樹脂多層基板「メトロサーク」についても、5G導入を事業拡大の好機と位置づける。周波数対応だけで需要が2倍になるほか、20年以降の5G搭載でさらに数量増が見込めるという。特にミリ波帯においては高い特性を有しており、他製品と差別化できると期待を寄せる。

 ただし、今後は同社が用いるLCP(液晶ポリマー)と異なり、コストダウンを念頭に置いたMPI(変性ポリイミド)を用いた新工法も提案されており、同社の独占状況からアジア系企業との競合状況が発生することを示唆した。

電池事業は20年度に黒字化

 ソニーから取得した電池事業は、園芸や電動工具向けに需要拡大が見込まれる円筒形が年率15%の成長を遂げる見通し。ラミネート型では同社が培ってきたノウハウを生かし、生産プロセスの改善やケミカル技術の強化などを進める。これにより、現状赤字の事業体質から20年度での黒字化、21年以降の健全な財務体質の構築を目指す。また、積層技術を生かした全固体電池においては、ウエアラブル向けに19年度に製品化する意向だ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳