米中貿易・知財問題の勘所は? 株式市場への影響を考える

「柏原延行」のMarket View 2018年12月5日

皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

今年も12月を迎えました。1年がたつのは本当に早いですね。

さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。

  • 米中首脳会談の結果をごく簡単にまとめると、①米国は関税引き上げを延期すること、②中国は農産物の購入を速やかに開始すること、③強制技術移転、知的財産保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス産業や農業の観点での交渉が90日間という期限を設けて開始されることである。
  • この内容は、ホワイトハウスのホームページから整理したものだが、この内容をみるかぎり、一方的に米国にとって有利であると評価することもできると思われる。
  • 中国にとってメリットがある内容は、①時間的な猶予、②(とてもうがった見方をすると)中国の国策である「中国製造2025」について、これを妨げるような直接的な文言がなかったことであると思われる。
  • 株式市場への影響という観点からの解釈を、ポジティブ、ネガティブに分けて整理した。私は、ナバロ氏など対中強硬派の本件への影響力が強まる懸念はあるが、全体としてはポジティブに解釈することが素直であると考える。
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米中首脳会談が終わりました。今回のコラムでは、(政府高官等の追加的な発言も散見されますが)この会談に対する評価を整理したいと考えます。

ホワイトハウスのホームページには、12月1日付けで本件に関する声明が掲載されています。私が重要と考える部分を抜き出してみると、「On Trade, President Trump has agreed that on January 1, 2019, he will leave the tariffs on $200 billion worth of product at the 10% rate, and not raise it to 25% at this time(筆者による仮訳:貿易に関しては、トランプ大統領は2019年1月1日に、2000億ドル相当の製品に対する関税を10%に維持し、今回は25%に引き上げないことに同意した)」とされています。

さらに、「China has agreed to start purchasing agricultural product from our farmers immediately(同:中国は速やかに米国の農家から農産物の購入を開始することに合意した)」とされており、トランプ大統領の支持基盤と思われる農業州に(速やかに)メリットを与えると思われます。

そして、米中の交渉は「with respect to forced technology transfer, intellectual property protection, non-tariff barriers, cyber intrusions and cyber theft, services and agriculture(同:強制技術移転、知的財産保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス産業や農業の観点で)」、「the next 90 days(同:90日)」と期限を定めて交渉が行われ、同意できない場合は、「the 10% tariffs will be raised to 25%(同:関税が10から25%に引き上げられる)」。

この声明をみると、(米国の声明であることを考慮する必要がありますが、)米国に一方的に有利な内容と評価できると考えます。中国にとってメリットがある内容は、①時間的な猶予、②(とてもうがった見方をすると)中国の国策である「中国製造2025」について、これを妨げるような直接的な文言がなかったことであると思われます。

それでは、今回の合意を株式市場に対する影響という観点から、ポジティブ、あるいはネガティブな解釈に分けて、整理してみましょう(図表1)。

図表1:会談を受けた貿易・知財問題に関する評価

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出所:各種報道資料などから、筆者作成
筆者が重要と考えるもの。株式市場への影響という観点から整理したもの


率直にいって、米中の貿易・知財問題などの行方を、精度高く予見することは困難なように思います。

そうした中、どちらかと言えば、私は、(ナバロ氏など対中強硬派と言われる勢力の本件への影響力が強まることに対する留意は必要ですが)今回の会談結果は、全体としてはポジティブに解釈することが素直であると考えます。

(2018年12月4日 9:30頃執筆)

柏原 延行

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柏原 延行
  • 柏原 延行
  • アセットマネジメントOne株式会社 
  • 運用本部調査グループ チーフ・グローバル・ストラテジスト

現みずほ銀行の運用担当者(外国債券など)を経て、運用会社にて、株式運用部長、企業調査部長、運用戦略部長などを歴任後、現在はアセットマネジメントOneにて、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めております。
運用会社に勤務して、はや25年を超えました。遊び心も忘れずに、皆さまのお役に立てるコラムをお届けしたいと考えます。妻、娘の3人家族です。
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター非常勤講師、日本証券アナリスト協会検定会員。大阪大学卒業、筑波大学大学院修了。