言うところのフィラデルフィア半導体指数は、10月に12%下落し、3月の過去最高水準から見れば17%も下げてきた。これはすなわち半導体株が全般的に超割安になってきたことを意味する。すなわちスーパーサイクルとまで言われてきた半導体の市況後退が表面化してきた、との判断が投資家に働いているのだ。

18年9月は月次ベースで過去最高

 しかしながらそれにしても、半導体市場の好調は相変わらず続いている。2018年第3四半期(7~9月)の世界半導体市場規模は1227億ドルを記録し、前年同期比13.8%増となり、過去最高を更新している。9月の単月だけでも409億ドルとなり、月次としても史上最高を更新しているのだ。確かに、NANDフラッシュメモリー、DRAMが引っ張ってきたメモリーの爆裂的な成長は止まってきた。18年6月までは15カ月間連続で前年同月比20%以上の成長を遂げてきた世界半導体市場は、減速し始めたのだ。

 しかしこれを持って半導体景気ももうおしまい、というのはいくら何でも乱暴だろう。米国半導体工業会(SIA)によれば2018年通期の世界半導体市場は、2017年の4120億ドルを大きく上回るとみているのだ。

製造装置分野では足元減速感

 筆者はこの2カ月の間に半導体製造装置メーカー大手各社の社長たちを次々と取材したが、ほぼ共通して彼らが言っていたのは「IoT革命が続く限り、半導体の高成長は止まらない。今は一時的なリセッション」という見解であった。

 トップを行く東京エレクトロン(TEL)は2018年度の売り上げ予想を1兆4000億円から1兆2800億円に引き下げた。NANDやDRAMが従来計画に比べそれぞれ25%前後引き下がったからである。しかしそうはいっても同社の4~9月期の純利益率は20%を維持しており、純利益額は49%増の1353億円となっている。そしてまた、19年3月期は設備投資全体で過去最高ともいうべき510億円を投じる計画であり、全く投資を引き下げる気配がない。

 エッチング装置ならびにCD-SEMなどの評価装置を主軸に半導体製造装置事業を展開する日立ハイテクノロジーズの業績にも減速感が見て取れる。中間決算にあわせて18年度通期の半導体製造装置売上高を当初計画に比べて約200億円引き下げた。同社も4~9月期の純利益率は22%を保持しており、純利益額は22%増の246億円をたたき出している。そしてまた、積極的な設備投資を断行しており、埼玉県本庄の土地の活用および笠戸の隣接の土地を買うなどの手当てを行った。R&Dも高水準を維持しており、つまりは積極投資に変わりはないということだ。

アドバンテストなどテスト分野は好調

 前工程分野では下方修正が目立つ一方、後工程とりわけテスト分野は好調だ。半導体テスター大手アドバンテストの4~9月期売上高は前年同期比62.4%増、営業利益は何と4.6倍の伸び率となった。通期売上高については従来予想から15%増の2650億円、営業利益は54%増の530億円に増額修正した。そしてまた同社は240億円を投じて米国アストロニクス社からシステムレベルテスト事業を買収することを決定した。

 プローバー大手の東京精密は19年3月期全体で純利益率14%、純利益額136億円(7%増)を見込んでおり、5期連続で最高利益を更新する勢いであり、売上高も13%増の1000億円を見込んでいる。八王子の本社工場でもこれ以上の拡張余地がなくなったため、近隣に新たな用地を取得。21年度の本格稼働を予定しており、その間はレンタル工場などを活用し需要増に備える。

 ディスコもまた4~9月期の純利益率は20%を保持する。設備投資面では主力の桑畑工場(広島県)の拡張投資を進める一方、茅野工場(長野県)でもダイサーの生産を新たに開始。将来的な拡張に向け新棟の建設も検討している。

 こうした装置メーカーの積極投資は何を物語るのだろう。一時的なリセッションに振られることなく、着実に生産能力を引き上げていこうという強い意志がそこにはあるのだ。今やっている投資は2年後から3年後に備えているわけだから、装置各社は20~22年の世界半導体市場は間違いなく、またもかなり拡大すると見据えているに違いない。

産業タイムズ社 社長 泉谷 渉