皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

先日、東京ミッドタウンのイルミネーションを見る機会がありましたが、とても綺麗で、かつ寒さもあまり感じず、快適でした。しかし、冷え込んでくれた方が衣料品の売上増に繋がりますね。

さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。

  • 足元では、株式市場について強気の見方を取る市場関係者が大きく減少しているようであるが、私は引き続き強気の見方を維持する。
  • 現在の米国株式市場は際立って不安定であると考えているため、米国株式市場の値動きを整理した。
  • 2018年は大幅下落(2%以上の下落と仮定)した日が、(過去5年と比較して)突出して多い。また、過去5年間では、大幅下落となる日は時期を集中して発生することが分かる。
  • 2018年に大幅下落した日が多いことは、「1980年代初頭から35年以上、低下し続けた米国10年国債利回りが反転した可能性があること」を、どのように解釈すべきか市場が迷っていることの表れであると考えており、大規模・長期にわたる景気後退の前兆であると考えていない。


足元では、株式市場に対して強気のスタンスを維持している人は大きく減少しているようです。先日も証券会社の著名なストラテジストから、強気スタンスを維持している(少数派である)私の意見が聞きたいとお電話をいただきました。

また、先週の水曜日には、日経モーニングプラス(BSテレ東)で、弱気の見方に立つ人と対談させていただきました。私はメディアの方にも、強気派と認知されているようです。(皮肉な見方と感じる方もいると思われますが)相場がコンセンサス通りに動かないのであれば、そろそろ底打ちの時期が近づいてきているのかもしれませんね。

基本的に、私は経済のファンダメンタル(基礎的な条件)を投資判断の根拠としていますが、現状の米国株式市場は、過去と比較して、その不安定さが際立っていると考えているため、米国株式市場の値動きを今回のコラムでは整理したいと考えます。

株式市場を重視した資本主義が、「米国の基本的な経済の仕組み」と捉えることができると感じるほど、米国の株式市場は持続的に上昇しています。

株式市場の大きな出来事といえば、1987年のブラックマンデーを挙げることができますが、この年10月末のダウ・ジョーンズ工業株価平均(以下、ダウ平均)は約2,000ドルでした(執筆時点で同指数は約24,600ドル、約12倍)。また、もう少し短い時間で考えても、約5年前の2012年12月末のダウ平均は約13,100ドルであり、約90%上昇しています。

それでは単なる騰落率だけでなく、リスク的な観点から、下落率が大きかった日数(2%以上を大幅下落と仮定)が、過去5年間でどの程度あったかを考えてみましょう(図表1)。

図表1:ダウ平均が2%以上、下落した日、下落率、回数

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成
2013年1月から執筆時点まで、日次、2017年の大幅下落はなし


まず、2018年にダウ平均が大幅下落となった日は、執筆時点で10回(日)に及んでおり、過去5年と比較して突出して多いことが分かります。特に、2015年はいわゆるチャイナショックがあった年であることを考えると、2018年のダウ平均は相当不安定であったことがよく分かります。

次の特徴としては、大幅下落となる日は比較的ある時期に集中して発生することが分かります。2015年の夏、2016年の年初、そして2018年の2月〜3月、同じく2018年の10月〜11月が大幅下落が集中した時期です。

このデータを見て、2018年の値動きは、大規模・長期にわたる景気後退などの前兆という解釈も可能であると思われます。しかし、私は「1980年代初頭から35年以上、低下し続けた米国10年国債金利が反転した可能性があること」を、どのように解釈すべきか市場が迷っていることの表れであると考えており、大規模・長期にわたる景気後退の前兆であると考えていません。

2018年1月〜3月の株式市場が不安定な時期は、約2か月間続きました。今回も12月上旬で2か月を迎えます。そろそろ、日柄的な調整が終わると考えることも可能なように私は思います。

(2018年11月27日 9:30頃執筆)

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柏原 延行