今日は2018年ボージョレ・ヌーボー解禁の日

本日(11月15日)は、ワイン愛好家が心待ちにしていたボージョレ・ヌーボーの解禁日です。ボージョレ・ヌーボーとは、フランス南東部のボージョレ地区のぶどうでつくるワインの新酒で、毎年11月第3木曜日に販売解禁となります。

日本では恒例イベントとしてすっかり定着しており、第3木曜日の午前0時になると街のあちこちで初飲イベントが開催されています。今日の仕事帰りに飲もうと思っている方も多いでしょうし、既に何杯か飲んだ人もいるかもしれません。また、ボージョレ・ヌーボーの解禁によって、年末シーズンの訪れを感じる人も少なくないと思われます。

国内の市場規模を他の酒類と比べると?

新酒の解禁が恒例イベントになっているくらいですから、日本にはワイン愛好家が多いのでしょう。また、近年は昔とは違い、駅前の居酒屋でも安価なワインが飲めるようになりました。高級酒というイメージが強かった昔に比べ、庶民にも身近なものになったのかもしれません。もちろん、今でも本当の高級ワインはなかなか手が出ない価格になっているようです。

実際、日本国内でのワイン消費量はどうなのでしょうか。

まず、国内のワイン市場ですが、ビール市場比で約15%、発泡酒の約半分、チューハイの約3分の1、焼酎の約45%という規模ですので、かなり小さいことになります。ただ、ウイスキーよりは大きい(約3倍)ようです。やはり、増えたと言っても、ワイン愛好家はまだまだ多数派ではないのでしょう。

2012~2015年度の国内消費量は4年連続で過去最高を更新

それでも、ワイン市場は緩やかな拡大を続けています。国内の消費数量(単位:kl)の推移を見てみましょう。

  • 1980年度:  43,965(輸入ワイン構成比:24.8%)
  • 1985年度:  62,142(同:31.6%)
  • 1990年度:118,186(同:49.6%)
  • 1995年度:144,294(同:54.2%)
  • 2000年度:266,068(同:60.7%)
  • 2005年度:238,207(同:61.7%)
  • 2010年度:262,475(同:67.9%)
  • 2015年度:370,337(同:70.2%)
  • 2016年度:352,492(同:69.3%)

2016年度は8年ぶりに前年割れとなりましたが、2012~2015年度は4年連続で過去最高を更新しました。また、直近10年間で約5割増、直近20年間で約2.4倍、30年前比では約6倍にも拡大しています。元々の規模が小さいとは言え、漸減傾向に歯止めがかからないビール市場とは好対照と言えましょう。

ブームと低迷期を繰り返してきたワイン市場

ワイン市場の特徴は、幾度かの“ワインブーム”を経て市場拡大が続いていることです。バブル経済期には高級ワインブーム、バブル崩壊後には低価格ワインブーム、赤ワインブーム等がありました。そして近年は低価格輸入ワインブーム(注:一般には第7次ワインブームと称されています)が市場拡大の牽引役となってきたのです。

一方で、そのブームが終焉を迎えると、ワイン市場は反動減による低迷期や過渡期を迎えてきたことも事実です。その低迷が続くと、また次のブームが訪れるという歴史の繰り返しだったような気もします。

そして、現在はその過渡期にあるという見解も少なくありません。実際、2018年の序盤における販売状況は、値上げ等の影響もあってやや芳しくない状況が続いている模様です。ワイン市場は次のブームを待つのか、それとも、足許の低迷は一過性で現在のブームがさらに続くのか、今後の推移を注目したいところです。

健闘が目立つ近年の国産ワイン

ところで、前述した国内ワイン消費量の推移の特徴として、輸入ワインの拡大が挙げられます。これは、1985年のプラザ合意以降の円高定着により、輸入ワインの価格が大きく下がったことが主な要因ですが、逆に言うと、国産ワインが伸び悩んだことになるのかもしれません。

これには国産ワインの知名度不足が影響していると見られますが、そうは言っても、最近は国産ワインも健闘しています。2016年も輸入ワインに比べると減少量は小幅に留まっています。これは、国産ワインの品質が向上したことに加え、いわゆる“ご当地ワイン”を始めとした商品ラインナップ拡充も一因と見られます。また、アベノミクス始動後の円安で輸入ワインの値上げが続いたこともあるかもしれません。

国産ワインの産地表示の厳格化とは?

さて、その国産ワインですが、今年(2018年)10月から「果実酒等の製法品質表示基準(国税庁告示)」に従って、ワイン産地の表示方法が厳格化されました。ご存じでしたか?

本当にザックリ言うと、その産地で採れたブドウを85%以上使用しないと、ワイン名に産地を表記できません。実際、従来は「〇〇ワイン」といったご当地ワインでも、ブドウは△△産(例:山梨県産)だったケースが少なくなかったのです。つまり、単に製造しただけの地域をワイン名として表示することが禁止されたと考えていいでしょう。

この法律の施行に伴い、早速、いくつかの有名なご当地ワインが製造中止となったり、広く浸透したワイン名の表示変更を強いられたりしています。

ちなみに、原料のぶどうや濃縮果汁が海外から輸入されたものであっても、国内で製造されたものを「国産ワイン」といい、100%国産ぶどうで国内製造されたワインは「日本ワイン」と呼ばれます。

産地表示厳格化が市場に与える影響は?

ちなみに、この規制は、海外ではとうの昔に実施済みですが、ようやく日本でも適用されるに至りました。それは、これから国産ワインを輸出していく上で、世界と同じルールにする必要があったためですが、遅過ぎると言えば遅過ぎます。海外ではワイン産地の正確な表示を厳しく求められます。

そして、輸出云々の前に、この産地表示の厳格化が、少しずつ人気を高めつつあった国産ワインの需要動向にどのような影響をもたらすのか注視しなければなりません。有名ご当地ワインの減少により、市場縮小につながる懸念もあり得ましょう。そんなことを考えながら、2018年のボージョレ・ヌーボーを楽しむのもいいでしょう。

葛西 裕一