はじめに

AI(人工知能)とは、IT用語辞典によれば「学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューター-システム」のことです。つまり、知的活動を人間と同じように行うことのできるコンピュータシステムのことを指します。現在、このAIをビジネスに活かそうという試みが広がっています。

この記事では、AIビジネスが現在どのような段階にあるのか、また、どういったビジネスとの相性が良いのか、そして今後どのように進展していくのかを解説します。

目次

1. AIビジネスとは一体何なのか?
2. 拡大を続けるAIのビジネス市場
3. AIを活用したビジネスモデルとモデル構築のポイントとは?
4. AIをつかったビジネスの成功事例
5. AIでビジネスチャンスがつかめる可能性も!
6. AIビジネスとベンチャー企業
7. AIとビジネスマッチングの組み合わせで経済活性化!

1. AIビジネスとは一体何なのか?

「人間が行うような知的活動を行えるコンピュータシステム」がAIの定義ですが、このAIの大きな可能性をビジネスに活かそうとするのがAIビジネスです。

しかし、ここで「会社では一日中パソコンを使って仕事をしているけれど、それとAIビジネスとはどう違うのか?」と疑問に思われた方もいるのではないでしょうか。その答えは、非構造化データを処理できるシステムかそうでないかという点にあります。

データには構造化データと非構造化データがあります。構造化データとはExcelファイルのように、決まった欄に数字や文字が入力されていて、形式が整えられているものです。一方、非構造化データは、そうした形式に整えられていないもの、例えば言葉や文章、画像などになります。そして、私たちが日常的に人とのコミュニケーションで使っているものは、ほとんどが規則性もなく、構造化もされていない非構造化データなのです。

AIではない従来のコンピューター技術やシステムは、構造化されたデータの処理しか行うことができません。様々なデータを収集しても、いったん適した形式に整理してからでないと集計を行うことができないのです。

一方でAIは、従来は分析や処理が出来なかった画像や言語といった構造化されていない情報を判断し、分析、処理を行うことが可能となっています。この点でAIは、コンピューターではあるけれども、より人間に近いものであるといえます。

こうした「人間に近い」ということを示す良い例として、AIは、ミスをするという点が挙げられます。そして、ロジック処理に関しては、その処理を専門的に行うコンピューターよりもスピードは遅くなるという特徴もあります。しかし、やはりコンピューターですから、人間と違って疲れを知らず24時間働き続けることができる上に、一度に大量の情報を処理することも可能なのです。また、AIの最大の特徴としては、多くのデータに触れ、ミスをして経験を積むことで、そこから学んで急速に学習・成長するという点が挙げられます。

これらAIの特徴を十分に踏まえて活用していこうとする動きが、AIビジネスであるといえるでしょう。

2. 拡大を続けるAIのビジネス市場

AIに関する研究自体は、海外では1950年代から行われてきたもので、それほど新しいものではありません。日本でも、研究自体はかなり以前からなされてきました。しかし、これまでの日本ではまだまだ研究のほうが主軸で、その成果をビジネスに活かすところまでは至っていませんでした。したがって、一般の人々がAIという言葉を耳にする機会は、チェスや囲碁の試合における、ロボット対(人間の)チャンピオンといった対決のニュースぐらいしかなかったのではないでしょうか。

しかし、ここ最近になって、急速にAIビジネスが拡大を見せ始めています。その理由の1つには大手検索サイトやスマートフォンにおける音声検索や、自動車の自動運転など、「AIをビジネスに活かす」ということの具体的な形が、ようやく見えてきたからということが挙げられるでしょう。こういった具体例に触れることにより、人々の中にも「AIビジネスとはこういうものだ」という認識が広がってきたことから、AIを他の分野のビジネスに活かしていこうとする取り組みが盛んになったといえます。

そして、もう1つのAIビジネス急拡大の理由としては、労働人口の減少という社会的要因にあります。日本はもちろんのこと世界中の先進国は軒並み少子高齢化社会を迎えています。足りなくなる労働力をどのように補うのかという問いに対して、解決策を考えることは喫緊の課題です。そうした中で、AI搭載のシステムやロボットがこの問題の解決策として注目を集めるようになったというわけです。

国内におけるAI市場はここ6年で15倍以上に拡大しています。今後も介護分野などを始めとして、AI市場の拡大が続くことが予想されています。

3. AIを活用したビジネスモデルとモデル構築のポイントとは?

AIをビジネスに活用するためのビジネスモデルの構築に当たっては、まず何よりもAIの特徴やメリットを改めてしっかりと認識することが大切です。

AIの大きなメリットであり可能性といえるのは、自ら学んで成長し、非言語化データも分析できるという点です。このような特徴を活かせるような受け皿を用意せずに、ただ目新しいからとAIを導入しただけでは、AI導入の意味はありませんし、現在のAI市場の拡大のスピードを考えると、すぐに目新しさは失われ、差別化の要因ではなくなってしまうでしょう。このため、AIをビジネスに導入する前には、その目的と最終的な構想を明確にした上で、取り組むことが重要です。

具体的なモデル構築の手順としては、まず1つ目に、長期的な視点でモデルを考えるということが挙げられます。AIは成長して熟練度を増すものなので、AIの成長と共に企業も変化しながら成長できるような仕組みを考えることが必要となるでしょう。そして2つ目として、AIによって現実世界とデジタル世界の融合を行うという視点から、新たな事業展開を考える、ということが挙げられます。現在、ショッピングの分野では、実店舗とネット店舗の融合ということが始まっていますが、こういった現象はショッピング以外にも今後ますます拡がっていくことが予想されています。このように、現実とデジタルの融合の分野で、AIの能力を活かせる余地はまだまだあるといえるのではないでしょうか。

4. AIをつかったビジネスの成功事例

4-1.コールセンター業務

大手の企業などでは、コールセンター業務に続々とAIが導入され始めています。コールセンターでは人手不足が課題となっていますが、これら企業に導入されているAIは、機械学習と自然言語処理を使って必要な情報をいち早く取り出したり、非構造化データの分析を行ったりするなどの能力があります。

この能力を使うことで、問い合わせをしてきた顧客との会話をリアルタイムにテキスト化することが可能になっています。さらに、業務マニュアルを元にして回答候補をオペレーターに提示するといったことも可能となっています。

これによって、オペレーターが電話で顧客とやり取りを行いながら調査をする手間が省かれ、より迅速かつ適切な回答をすることができるようになっているのです。

4-2.レジ業務(コンビニ無人化)

レジ業務にAIを導入することにより、混雑緩和と人手不足の解消を実現した事例もあります。アメリカではコンビニにAIが導入され話題となりましたが、このコンビニでは、入店前にスマホにQRコードを表示させれば入店が可能で、あとは、手に取った全ての商品の代金が請求される仕組みとなっています。

もし、手に取ったけれどキャンセルしたい商品があれば、棚に戻せばキャンセルが完了し、その分の代金は請求されることがありません。同じような試みはまだ実験段階ではあるものの、日本でも行われています。

5. AIでビジネスチャンスがつかめる可能性も!

AIをビジネスに導入することについて、資金が豊富にある大企業だけに関係のあることと考えている中小企業の関係者は多いかもしれません。確かに、数年前であればAIは非常に高価で、大企業が多くの予算を投じて導入するというイメージがありました。

しかし、AIの技術が進歩してきた現在では、中小企業でも、自社の希望に応じた規模でAIを導入することが可能となっており、導入や運用のコストも無理がないものが登場してきました。このため、むしろ、人的リソースが限られている中小企業こそ、AIを賢く利用することで、ビジネスチャンスを広げることが可能という状況になってきているのです。

例えば、先に挙げたように、コールセンターのような電話応対やレジにAIを導入することで、人手を減らすことができます。その分担当者は取引先の開拓など、他の重要な業務に専念できるようになります。

また、営業業務自体にAIを導入することも有効といえます。膨大な顧客データの分析をして次に優先的にアプローチすべき顧客を割り出し、最適なタイミングでメールアプローチを行うことなどはAIの得意分野になります。これまでのように手動で顧客データを操作したり、メールの送信タイミングを調整したりということは必要なくなることから、AIは、中小企業のタスクやサービス、マーケティングを自動化し、事業の拡大に貢献できる可能性があるといえるでしょう。

ただ、中小企業へのAIの導入にあたっては、導入すること自体が目的とならないように気をつける必要があります。社内の業務を整理し、どの業務を解決するためにAIを導入するのか、最終的にどのような業務フローの形を目指すのかを明確にしてから、導入を進めることが大切です。

6. AIビジネスとベンチャー企業

AIビジネスはベンチャー企業とも相性が良く、画期的なビジネス展開によって注目を集める企業も多数あります。

6-1.プリファードネットワーク

東大発のAIベンチャー企業です。ディープラーニングや機械学習など、人工知能技術が得意です。とくに同社の持つ「分散学習」という独自の技術は、個々のロボットそれぞれの学習経験をリアルタイムに共有できるという点で画期的なものといえます。

6-2.センシー(カラフルボード)

ファッションと人工知能を融合させたアプリです。人の「感性」を学習し、理解することで、そのユーザーが本当に欲しているコンテンツを世界中から探して提供します。現在はファッションコンテンツのみですが、ゆくゆくは分野を拡大し、ユーザーのライフスタイル全般を提案することを目指しています。

6-3.WACUL

アクセス解析ツールと連動し、データを自動分析する「AIアナリスト」サービスを提供する企業です。課題発見から改善案の提示までを全て自動で行ってくれるという特徴があります。

6-4.オルツ

第2の自己をクラウド上に作り出して、ユーザーの分身として受け答えすることができるアプリを提供しています。「パーソナル人工知能」と呼ばれる技術で、メールなどのやり取りをもとにして、ユーザーのその人らしさを学習していくところが最大の特徴といえます。

7. AIとビジネスマッチングの組み合わせで経済活性化!

AIは現在、ビジネスマッチングの分野でも活用が始まっています。

例えば、仕事のパートナーを探すためのAIビジネスマッチングアプリもその1つです。このアプリは、利用するユーザーとすでに登録済みのユーザーとの相性をAIがプロフィールなどをもとに判別、審査し、その結果、おすすめの相手をユーザーに紹介するというものです。

その結果、お互いに興味があればユーザー同士のやり取りを始めることが可能になります。AIはユーザーの好みを学習しますから、使えば使う程、紹介する相手はユーザーとより相性が良い相手になっていくという仕組みも特徴的といえます。また同じような仕組みで、転職先を紹介するアプリにAIが導入されている事例もあります。

こうした仕組みの導入が広がることで、企業は最適な仕事のパートナーや商談の場をあらかじめ把握できるようになります。ビジネスの見通しも立てやすくなりますし、ひいては経済活性化にもつながっていくとも考えられます。

また、転職アプリなど、人と企業とのマッチングにAIを利用することで、転職者がより自分の希望に近い企業を探しやすくなり、早期離職の防止にもつながることが期待できます。

おわりに

コンピューターでありながら、人間と近い判断や処理を行うことができるAI。AI市場は拡大を続けており、ビジネスへの活用の事例も増えつつあります。様々な分野にAIを十分に活用することができれば、人手不足や業務の効率化に繋がってゆくことでしょう。特に中小企業では、人手不足を解消しつつ、新たなビジネスチャンスをつかむ、事業拡大を図るといったことが可能になるかもしれません。

LIMO編集部