はじめに

残業時間に関する詳細は、労働基準法にて定められているものの、実際には法律が守られていないケースや、本来支給されるべき残業代が支払われていないケースがあるようです。「自分の会社の残業制度は正しく守られているのだろうか。」と疑問に感じたら、まずは、残業制度の仕組みを正しく知り、どのような場合に残業として認定されるのかを把握しておきましょう。残業トラブルから自分を守るためにも、必要な知識を身につけることは、とても大切です。

目次

1. まずは押さえておきたい残業制度の基本
2. 法定労働時間と所定労働時間って何?残業代の正しい計算方法
3. みなし残業とは?求人票は隅々までしっかりチェック!
4. 着替えも残業になる?見落としがちなサービス残業に要注意!
5. 36協定って何?残業命令の拒否は可能?
6. 弁護士は残業トラブルの強い味方!無料相談を活用しよう
7. 求職者も安心!固定残業代のルールが厳格化へ

1. まずは押さえておきたい残業制度の基本

普段、何気なく使っている残業という言葉ですが、その正確な定義についてご存知でしょうか?ご自身の残業代を正確に把握するためにも、まずは、残業の法的な定義を把握しておきましょう。

日本の法律では、雇用契約や就業規則で定められた「所定労働時間」の制限を超えて仕事をした場合を残業時間とみなしています。残業制度が複雑であるといわれるのはこの残業制度内においても残業代の支払われるケースとそうでないものに別れるためです。今回の記事ではより 詳しく残業について解説していきます。

2. 法定労働時間と所定労働時間って何?残業代の正しい計算方法

残業時間を算出する前に、「法定労働時間」と「所定労働時間」の2つの違いを抑えておきましょう 。

「法定労働時間」とは、労働基準法で定められている労働時間の限度のことです。会社で設定された労働時間がどうであろうと、雇用主は従業員を法定労働時間以上、働かせることはできません 。一方、「所定労働時間」とは労働基準法で定められた上限の基準内で企業側が自由に設定できる労働時間のことです。具体的には就業規則や労働契約書に記載されている労働時間のことと考えるとわかりやすいでしょう。 

実際に残業時間を計算するうえでよく見落としがち な点は、企業側には「法定労働時間」を超えた残業のみに割増賃金の支払い義務があるという点です。

例えば、「法定労働時間」を8時間、「所定労働時間」を7時間とした場合、労働者が3時間の残業をしたとしても、会社側には2時間分の残業代しか支払いの義務はないということなのです。また、このときの割増賃金の割増率は25%以上50%以下と定められていますが、 大企業の場合は月60時間以上の「法定労働時間外」をさせた場合、50%以上の率で割増賃金の支払い義務があるとされています。 また、近年では「変形労働時間制」や「フレックスタイム制」などを導入している会社もありますが、この場合でも「法定労働時間」を超えた残業には割増賃金の支払い義務が発生します。よく誤解するポイントでもあるので、忘れずに申請するようにしましょう。

少々ニッチではありますが、会社によっては残業代を代休で相殺しようとする場合もあります。代休を与えて対応すること自体に問題はありませんが、代休を与える場合でも会社側は労働者に残業代をきちんと支払う必要があることはおさえておきましょう。

3. みなし残業とは?求人票は隅々までしっかりチェック!

みなし残業制度とは給与に一定時間の残業代を組み込んで支払う制度です。みなし残業代は固定残業代とも呼ばれることがあり、コンサルタントや営業職のように企業側が実際の労働時間を把握するのが難しい職種に適用される傾向があります。

名前で誤解されがちなみなし残業制度ですが、実は会社がみなし残業制度を導入している場合でも残業代はしっかりと発生することに留意しておきましょう。というのも、先述の通り、みなし残業制度とは一定時間の労働を残業代としてあらかじめ計上する制度であるため、想定されていた労働時間を超過した場合には通常通り、残業代の支払い対象となるからです。例えば、見なし残業時間が月30時間、実際の残業時間が月40時間であった場合、超過した10時間分は通常通り、残業代支払いの対象となります。

また、その逆に実際の労働時間がみなし残業時間に至らなかった場合であっても給与が減額されることはない点にも注意しましょう。例えば、みなし残業が月30時間、実際の残業時間が月20時間であった場合でも給与は減額されることはありません。会社によっては残業時間の不足分を給与の減額という形で対応しようとする場合もあるようですがりますが、そういった場合は専門家への相談を検討しても良いかもしれません。

4. 着替えも残業になる?見落としがちなサービス残業に要注意!

日々の労働時間で申告漏れしている残業時間はありませんか ?過去の裁判の判例では労働時間を「会社側の指揮命令下にある時間」と定義しています。そのため、名目上は労働時間外である場合でも、実際に労働をしていた場合は残業支払いを求めることができます。例えば、店内の掃除や仕込み、制服への着替えなど業務に必要な作業 をしていた場合は残業時間に含まれることをおさえておきましょう。

また、会社側から仮眠を指示されている場合も労働時間に含まれる可能性があります。というのも過去の裁判に、実際に仮眠時間が残業時間に含まれるかを争ったケースがあり、その際に会社のルールによらず、仮眠時間が労働時間に含まれる可能性があるという判断が下されているからです。 なお「可能性がある」という表現になっているのは、名目上、仮眠時間であったにも関わらず、仮眠を切り上げて来客や電話対応をしなければいけなかった場合や、施設内の警備・巡回などをしなければならなかったという場合を残業代が認められるケースとされているためです。

5. 36協定って何?残業命令の拒否は可能?

法定労働時間以上の残業や法定休日出勤を従業員に課す場合には、労使間で協定書を締結する必要があります。これを一般的に「36協定」と呼びます。

よく誤解しがちな点ですが、36協定を労使間で結んでいた場合であっても残業時間の上限が撤廃されるわけではありません。36協定を結んでいた場合でも週15時間、月45時間以上の残業をさせることは法律で禁じられ ています。もし、会社側からそれ以上の残業を命令された場合や、指示された残業をすることが自身の健康面や子どもの送り迎えなどの生活面に影響を与える場合は、残業を拒否することができます。健康に働き続けるためにも、こういった法律の知識は頭に入れておいたほうがよいでしょう。

6. 弁護士は残業トラブルの強い味方!無料相談を活用しよう

企業に残業代を請求するときは、弁護士に依頼するのも一つの手段です。違法性のあるケースの場合、素人のみで問題を解決することが困難な場合もあります。当事者間での解決が難しい場合は、専門家に相談するようことをおすすめします。

一口に弁護士といっても、それぞれの法律事務所で得意とする分野が異なります。残業代に関するトラブルを解決したいときは、残業問題を得意とする法律事務所を選ぶようにしましょう 。

法律事務所を探すときに役立つのは、無料相談です。最近の法律事務所は初回限定で無料相談を実施しているところも数多くあるので気軽に相談してみましょう。なお、相談の際は最初から一つの事務所に絞って決めるのではなく、まずは複数の法律事務所に相談することをおすすめします。複数の法律事務所 を比較することによって、それぞれの特徴や違いがわかりますので、より自分に合った法律事務所を選ぶことができるからです。

なお、残業に関する相談は社会保険労務士の事務所や労働基準監督署でも受け付けてくれます。法律事務所は少々敷居が高い、という人は、そういった機関を利用してもよいでしょう。

7. 求職者も安心!固定残業代のルールが厳格化へ

最近では固定残業代(みなし残業代)表記のルールが厳格化され、これまで努力規定だった固定残業代の中身の明示が義務化されるようになりました。具体的には、基本給と固定残業代がそれぞれ別々に記載され、残業代としてどの程度の金額が計上されているかが、一目で確認できるようになったということです。それに加えて、みなし残業を超える労働を行なった場合の追加支給なども記載されるようになっています。

これまでは、内訳が分からないだけに雇用契約を結んだあとにトラブルになりやすかった 固定残業代ですが、この改正により、求職者がより正確に労働条件を把握することができるようになったということがいえるでしょう。

おわりに

残業制度の仕組みについて正確に把握しておくことは、労使間の労働トラブルから自身を守るうえで非常に重要なポイントです。残業時間の中には素人では思いもよらないものが該当することもあります。残業代の支払いについては労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士などに相談を受け付けてもらうことができます。残業について、気になる点、悩んでいることがあれば、専門家に相談してみましょう。

LIMO編集部