結局、9割の人は儲からない!? サラリーマン大家さんの厳しい現実

このところの不動産投資に関する話題は、「スルガショック」と言われるように、「かぼちゃの馬車」をきっかけに発覚したスルガ銀行の不正融資の実態がクローズアップされています。また、「アパート1棟モノ」の投資を勧めていた上場企業のTATERUも書類改ざんに手を染め、西京銀行が融資手続きを進めていたことが発覚しました。

こうした実態が露呈し始めてから、金融機関の融資が見込まれなくなったアパート・マンション1棟モノの不動産投資を勧めることができない会社が多くなっているといいます。不動産投資をめぐるこのところの大きな流れ、そしてサラリーマンの不動産投資の実態について、『不動産投資は出口戦略が9割』の著者で、アネシスプランニング代表取締役の寺岡孝さんが解説します。

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業者はアパート1棟モノの販売から区分マンションにシフト

不動産投資を手がける会社は、「1棟モノ」の物件をいったい誰に勧めているのか? その多くはサラリーマンで、しかも年収が400~500万円程度の人が多いようだ。そもそも、「土地を購入してアパートを建築してまで不動産投資をする」というスキームについては、大半は全額ローンで購入する形であり、あまり儲かるとは思えない。

それらは、高額なローンが組まれて融資されることで成り立っていた感があるが、スルガ銀行の件が大きなニュースになってからは、金融機関がアパート1棟モノに対する融資の受付をしない傾向があるという。

たとえば、最近、週刊誌報道が話題となった投資用不動産販売のシノケンなどは、もともとは区分所有のマンションを勧めていたが、その後、つい最近までアパート1棟モノの投資を勧めており、テレビCMなどでもおなじみであった。しかし、「スルガショック」以降、アパート1棟モノの話から、また区分マンションを勧めるという流れに戻っている。

このように、不動産投資会社は、アパート1棟モノの融資が難しくなったために、価格的には手ごろな区分マンションを勧める構図になっている。しかしながら、区分マンションもそう簡単には儲からないことを知っておくべきだ。

儲かるサラリーマンはごく限られた人だけ

つまるところ、不動産投資で儲かるサラリーマンは、節税(所得税等)がかなりできる人、いわゆる高額所得者か、もしくは地主である。高額所得者は給与収入等が高く、必然的に税金も高い。したがって、源泉徴収税を節税するための1つの手段として不動産投資を行って所得の損益通算を図る(不動産投資にかかった費用を、高い給与収入等から差し引くことで、全体として課税対象となる金額を減らす)のである。

もともと、源泉徴収税が低い人は、所得税が初めから減税されていると考えるべきで、年収400~500万円の人の源泉徴収税は高くても15~20万円程度。しかも配偶者や子どもがいる方であれば所得控除が多いので、その分の源泉徴収税はさらに低くなっているはずだ。したがって、サラリーマンで所得が低い場合には、いくら不動産投資で損益通算をして減税効果を生み出そうとしても難しい。

それに比べて、年収が1500万円前後になれば、所得控除があったとしても所得税が高いので、そういった人には不動産投資による節税効果は高いと言えるわけだ。

[実例]ワンルームマンションを3戸も購入

ここで、普通のサラリーマンの不動産投資がどれだけ儲からないのかをシミュレーションしてみよう。ただし、ここではわかりやすくするために、数値や計算方法を簡略化しているので、その点は留意してほしい。

では、事例で簡単に説明してみよう。

Aさんは妻と二人暮らしで、最近結婚、年齢は32歳。Aさんの勤め先は一部上場企業で、年収は620万円ほど、源泉徴収税は約20万円であった。将来の生活に不安を抱くところに、たまたま不動産投資の話を聞く機会があって、より詳しい説明をその不動産投資会社の担当から受けることになった。

担当者からはワンルームマンションの投資話を聞かされ、「年金や生命保険の代わりになる」など、セールスの常套句を信じて、マンションを3戸も買ってしまった。

プラスになるのは30年後以降!?

マンション購入の借金は5300万円で、担当者からは「毎月2~3万円の持ち出しで、年金や保険代わりになる」と聞かされていたが、マンションの管理費や修繕積立金、固定資産税などの固定費は収支に算入されていないことがわかり、結局のところ年間で約60万円の持ち出しがあるのだとわかった。

仮に、源泉徴収税の全額が損益通算で所得税還付されても、20万円-60万円=▲(マイナス)40万円は持ち出しという結果になる。つまるところ、買った当初からまったく儲からないというわけだ。

では、いつになったら儲けの時期は来るのか?

ローンの返済期間は30年だから、返済が完了する30年後以降でないと儲からない。現時点での賃料収入は毎月約18万円あるが、管理費などの固定費や室内のリフォーム代もかかるので、平均すれば月に10万円程度の収入である。

そう考えると、5000万円以上もの借り入れをして、しかも投資マンションを維持するために持ち出し金を累計で1800万円も費やさないと、30年後の毎月10万円の家賃収入は得られないという内容だ。冷静に考えれば、絶対に儲からないということがわかる。

高収入の勤務医の場合は?

では、逆に高額の収入がある人ではどうか見てみよう。

Bさんは勤務医のドクターで、年収が1300万円。すでに結婚はしているが、子どもはなく、夫婦で働いている。年齢は43歳。

この人の源泉徴収税額は140万円ほどあり、結構な税金を払っていることがわかるが、仮に先ほどのAさんと同じ投資マンションを持ったと仮定した場合、年間の持ち出しが60万円あったとしても、持ち出し以上の源泉徴収税を支払っているので、損益通算の効果で持ち出し分ぐらいの所得税還付は見込まれそうだ。

ただ、不動産所得は実質的に赤字のため儲かっておらず、所得税還付だけではその赤字解消にしかなっていないので、赤字体質には変わりがない。

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お金と向き合う習慣を

このように、サラリーマンの誰もが不動産投資で儲けられるというわけではなく、しかも「節税ができる」とセールストークで言われても、実質的にごく限られたサラリーマンしか効果的な節税はできないということが理解できる。すべてのサラリーマンにとって儲かるような話に見せているが、実態はそう簡単にはいかないのである。

セールストークに負けないためにも、業者が聞かれたら嫌な質問を知っておくといいかもしれない。たとえば次のようなものだ。

「ローン借り入れ期間(たとえば30年分)の税金や管理費・修繕積立金、所得課税対象額も含めた実質の収支計画表を出してほしい」
→ほとんどの不動産投資会社は出してこない。このシミュレーションを出すと儲かるかどうかすぐにわかる

「ローンの借り入れ先を自分で探してみたいのだが、構わないか?」
→不動産投資会社指定の金融機関以外では物件の高値取引ができないから嫌がる場合が多い。また、他行で審査した場合にいかに市況より高値の物件かわかってしまう

「この投資案件を専門家に相談したいので、契約書や重要事項説明書、賃貸借契約書やローンの借り入れ契約書の雛形が欲しい」
→ためらいもなく関係資料を出してくるのであればいいが、嫌がるケースが多い

また、「本当にそうなるのか?」「何か見落としていないか?」「環境が変わるのではないか?」など、一度冷静になって「自分に問いかける」ということも意識していく必要があるのではないだろうか。

普段の生活の中の小さな買い物や会話から意識することで、お金と向き合う習慣を身につけてほしい。


■ 寺岡 孝(てらおか・たかし)
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、現在の会社を設立。住宅の建築・不動産購入・不動産投資物件売却などのアドバイスやサポートを行っている。著書『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』など。

寺岡氏の著書:
不動産投資は出口戦略が9割

寺岡 孝

ニュースレター

1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。
大手ハウスメーカーに勤務した後、現在の会社を設立。住宅の建築・不動産購入・不動産投資物件売却などのアドバイスやサポートを行っている。著書『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』など。