DRAMは死なず、PC出荷が6年ぶり増

価格上昇は終わっても多様なアプリに盤石な需要

サムスンはDRAMの価格高騰などで17年に世界ナンバーワンの半導体メーカーに

 1980年代のニッポン半導体の黄金伝説は、そのほとんどがDRAMを中心とする製品構成にあった。1M DRAMで一時期世界シェア8割を占めた東芝は、「いつの時代にあってもDRAMを制したものは世界を制す」とまで言っていた。しかしその東芝はあろうことかDRAMを捨ててしまい、フラッシュメモリー一本に絞ってしまった。NEC、日立、三菱電機のDRAM連合軍であったエルピーダメモリは、あえなくも米国マイクロンに取られてしまった。

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 こうしたことで黄金製品のDRAMを失った日本勢は、やはり全体として世界での半導体マーケットシェアは低くなってしまうのだ。

 それはともかく、現在におけるDRAMの世界チャンピオンはサムスン電子である。2017年段階ではなんとそのシェアは46%に及んでおり、2位のSKハイニックス(28.7%)、3位のマイクロン(20.8%)に大差をつけている。そしてサムスンは総合半導体ランキングにおいてもインテルを抜き去り6兆円強の売り上げを達成し、世界首位に立っている。「DRAMを制する者は世界を制す」という格言が今になって蘇ってきた。

わずか2年間で2.6倍の値上がり

 DRAMは汎用デバイスであり、あらゆるセット機器に使われるが、やはりパソコン、スマホ、サーバーなどのコンピューター系に多くの需要がある。DRAM市場は実のところ、2006年から2016年までの10年間でいえば、ほとんど伸びていなかった。2006年のDRAM市場は約3兆5000億円であり、リーマンショックの余波で2009年にはなんと2兆2000億円程度まで落ち込んだ。その後、少しずつ回復してきたものの、2016年段階で4兆円強という数字にとどまっていた。

 ところがである。2017年は一気に伸びて7兆円強まで押し上げてきた。驚くべきことに75%増というウルトラ成長を達成したのだ。

 そしてまた、この2年間の価格高騰もすさまじいものであった。DRAMのASPは2016年8月に2.56ドルであったが、2年後の2018年8月には6.79ドルへと2.65倍も値上がりした。しかし2018年に入ってからは値上がりが鈍化し、この4月ごろからはほとんど価格が横ばいとなっている。それでもサムスンをはじめとするDRAM各社の営業利益は70~80%もあるといわれ、いわゆるボロ儲けの半導体製品なのだ。

 世間の焦点が、同じく2017年にすさまじい伸びを示したフラッシュメモリーに集まり、DRAMは比較的冷めた目で見られていた。フラッシュメモリーは2013年当時は3兆円程度であったが、この5年間で倍増し6兆円まで来たことで、あわやDRAMを追い抜くかという勢いにある。

 しかしながら専門家の見る目は違う。2020年段階のDRAM市場は、10兆円を大きく超えてくる見通しとなっているが、フラッシュメモリーについては7兆円くらいがよいところだろうと見る向きが多い。その最大の理由はNANDフラッシュメモリーの需要先がスマホとサーバーを中心とするのに対し、DRAMはパソコンがメーンであり、自動車にもテレビにもスマホにも、その他多くの家電製品、通信製品に使われることで、アプリケーションが広いということがある。

PC出荷増でDRAM復活?

 ここに来てサーバー向けDRAMがかなり伸びていたが、ユーザー側で在庫削減の動きが顕著になってきたことで価格下落がいよいよ始まるとみられていた。

 ところが直近では、パソコン向けが今後かなり伸びてくるという予想が出てきた。インテルのCPU供給が滞っているために一時的には需要減となっているが、重要なことはずっとこの数年間減り続けてきたパソコンの出荷がなんと6年ぶりにプラスになるという変化だ。調査会社のガートナーによれば、2018年4~6月期のPC出荷台数は前年同期比1.4%増の6210万台となり、2012年1~3月期以来、約6年ぶりに四半期ベースでプラス成長に転じた。

 巷の意見を聞けば、Windows7のサポート終了が迫り、パソコンを更新しなければならない時期が来ているという会社も多い。そしてまたゲーム需要の拡大も見逃せない。これを反映し、インテルは2018年設備投資を現在の140億ドルから150億ドルに増額修正している。

 パソコンが再び上昇するという信じがたい状況が出てくれば、またもやDRAMは復活してくる。現在においても全半導体の15%を担うDRAMはこれからも半導体の王者の座を譲ることはないと言えるだろう。

日本のメーカーにも期待

 それにしてもフラッシュメモリー一本で戦う東芝以外には、これといったメモリーメーカーが日本にはないということはとても寂しい。もちろん強誘電体メモリーのローム、ReRAMの富士通などが今後の拡大を狙っており、MRAMも東北大学がほとんどの特許を押さえていることから、今後東芝などを中心に量産化の動きが出てくるだろう。

 そして、もう1つ注目に値するのが、ソニーのCross Point ReRAM技術だ。かつて同社はSRAMを量産していたが、現状では全くメモリーを作っていない。だが、11月1日に京都で開催される電子デバイスフォーラム京都の「最先端メモリデバイス技術」セッションにおいて、ソニーセミコンダクタソリューションズ㈱ 新規事業部門 次世代メモリ事業準備室の荒谷勝久氏が「Cross Point ReRAM技術とSCMのアプリケーション」と題して講演する。どのような取り組みを語ってくれるのか、今から非常に楽しみだ。

産業タイムズ社 社長 泉谷 渉

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泉谷 渉
  • 泉谷 渉
  • 株式会社産業タイムズ社 社長

30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は電子デバイス産業新聞を発行する産業タイムズ社社長。
著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎氏との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)などがある。
一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。