私たちが普段何気なく使っている「貯蓄」と「貯金」という言葉。しかしこれらの言葉の意味を正しく理解している人は意外にも少ないのではないでしょうか。 そこで今回は「貯蓄とはいったい何か」、「貯蓄と貯金の違い」、「守りの貯蓄と攻めの貯蓄」の3つをみていきましょう。

貯蓄とは何か

総務省によると、「貯蓄」とは大きく以下の3つの総称とされています。

  • 銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金
  • 生命保険及び積立型損害保険の掛金
  •  株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計

貯蓄と貯金の違いとは

こうしてみると「貯金」や「預金」は、「貯蓄」の一部ではありますが、イコールではないということが分かります。さらに気を付けておきたいのは、「貯蓄」とは、生命保険などの積み立て資産や価値変動のある有価証券などの資産を含むという点で「預貯金」よりもカバーしている範囲が広く、「預貯金」のような安全資産ばかりではなくリスク性資産を含むということです。

守りの貯蓄と攻めの貯蓄

「貯蓄」の定義が分かったところで、「貯蓄」と「貯金」のどちらが大事となってくるのでしょうか。 両者の意味の違いを踏まえると答えは「貯蓄」の方が大事だと言えます。では、何をもって「大事」かというのをみていきましょう。

守りの貯蓄が必要な環境

日本において円資産で構成されている「預貯金」は現在ではわずかではありますが、利子や金利が付きます。利率が低い時代、たとえば極端な場合では金利がゼロであったとしても、物価が下落しつづけるデフレの世界であれば、金額が減らなない「預貯金」の魅力はありました。「日本人は海外と比べて資産に占める預貯金の比率が高すぎる」という声はありましたが、マクロ経済環境を考えれば、資産を防衛する上では合理的な判断の結果であったということもできます。

しかし、物価が金利よりも速いスピードで上昇し続けるという環境を想定するのであれば、「預貯金」の魅力は薄れることになります。そこは資産形成に対するスタンスの変更、具体的には資産構成の変更(アセットアロケーション)が必要になるといえるでしょう。

攻めの貯蓄が必要な環境

「貯蓄」とは、ここまで見てきたように「預貯金」だけでなく株式や不動産、投資信託、生命保険といった多様な金融資産から形成されているものです。デフレ環境からインフレ環境に転じたとすれば、「預貯金」という「貯蓄」の手段だけではなく、資産形成を考える方にとっては、様々な選択肢を検討せざるを得なくなるということが多くなるのではないでしょうか。

物価水準がデフレからインフレに転換するような環境では株式で運用することも有効な資産運用先の一つです。また、個別株の取引はよくわからない、忙しくて時間が割けないという人には株式を含んだ投資信託なども活用できるでしょう。それらに加え、株式市場の動きとは必ずしも相関性がない金融商品が良いという投資家にはヘッジファンドなどもあります。こうしてみると、極端なインフレは困りますが、マイルドなインフレであれば、様々な資産での運用も検討できる状況になるといえるでしょう。

まとめにかえて

「貯蓄」とはどういうものなのかご理解いだけましたでしょうか。少しでもお金を増やしたいと思うならば、闇雲に「預貯金」をするよりも、「貯蓄」とは何なのか、「貯蓄」のメリットやデメリットとは何なのかを理解した上で、金融資産を形成することが重要です。

「貯蓄」の方法には様々な方法があります。自分がとりうるリスクや自分に合った方法で「貯蓄」をすることこそが、金融資産を着実に増やす第一歩といえるかもしれません。

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

LIMO編集部