貴乃花親方の引退問題どころではない? 相撲協会が抱える”必達ノルマ”とは

貴乃花親方の引退問題が発生

9月25日、大相撲の貴乃花親方が日本相撲協会に“引退届”を提出しました。貴乃花親方は退職の理由として日本相撲協会から様々な圧力を受けたことを挙げています。早速、相撲協会は貴乃花親方が挙げた理由を否定するなど、両者の言い分には大きな溝があるようです。

今後の推移を見守るしかありませんが、横綱時代の大功労者である貴乃花親方の取扱いをどうしたらいいのか、相撲協会も悩んでいるでしょう。

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日本相撲協会が抱える最大の懸案とは?

しかし、日本相撲協会が最も頭を痛めているのは、今回の貴乃花親方の引退問題ではありません。実は、相撲協会の面子どころではなく、少し大げさに言えば、日本の国技である相撲そのものの面子がかかっている問題があると考えられます。

それは、ズバリ、来年2019年5月場所(夏場所)において横綱の土俵入りが行われるか否かなのです。

新たな元号の下、祝賀ムードの中で行われる最初の大相撲

ご存知の通り、2019年4月30日に今上天皇が退位され、翌5月1日に皇太子様が天皇に即位されることが決定しています。つまり、来年5月場所は新たな元号の下で行われる最初の大相撲になるのです。

そして、従来(例:昭和から平成へと元号変更)との最大の違いは祝賀ムードで実施されることです。今まで、少なくとも最後の天皇譲位(生前退位)となった1817年以降、元号の変更は即ち、喪に服すことでありました。

しかし、今回は違います。華やかな祝賀ムードの中で行われる、誰もが経験したことのない華やかな本場所になるでしょう。しかも、5月場所の初日(2019年5月12日)は、退位・即位に伴う10連休後の最初の日曜日です。否が応でも注目度は高まるはずです。

歴史的な初日に横綱不在は絶対に許されない

そうした特異な状況下で迎える初日に際し、何としても日本人横綱がいてほしいというのが相撲協会の本音ではないでしょうか。そして、仮にそれが無理だとしても、最低でも一人は、元気な横綱がいることを願っているはずです。

つまり、歴史的な初日に、横綱の土俵入りは必要不可欠なのです。これは、日本相撲協会に課せられた“必達ノルマ”と言えましょう。

しかしながら、現状を鑑みると、この必達ノルマの達成は不透明と言わざるを得ません。それが端的に表れたのが、先日無事に千秋楽を終えた大相撲9月場所(秋場所)でした。

秋場所の最大の注目点だった横綱・稀勢の里の進退問題

秋場所での最大の注目点は横綱・稀勢の里の進退問題でした。稀勢の里は横綱昇進直後の2017年3月場所(春場所)に2場所連続優勝を果たしたのを最後に、翌5月場所から8場所連続で休場し、しかも、直近3場所は全休となっていました。

休場の原因が怪我の影響とはいえ、8場所続けて皆勤を果たしていないのは異例であり、横綱失格と言われても仕方ないと言える状況です。

ちなみに、冒頭の貴乃花親方は、横綱時代の終盤に7場所連続で全休したことがありましたが、当時は大変な批判を浴びました。事実上の引退勧告も受けていたと記憶されます。

稀勢の里にとって秋場所は、進退を賭けた場所だったはずです。

稀勢の里の2桁勝利に思わず出た本音「ホッとした気持ちだ」

しかし、場所前の合同稽古で稀勢の里の調子が上がらないと判ると、進退を申し渡していたはずの日本相撲協会や横綱審議会(横審)のトーンが大きく下がりました。結果的に稀勢の里は2桁勝利(10勝5敗)を遂げ、かろうじて引退を回避したと言えます。

ただ、休場明けとはいえ、この成績は横綱として立派とは言い難いものがあります。にもかかわらず、相撲協会幹部や横審委員からは、高く評価するコメントが目に付きました。実際、相撲協会幹部よりも厳しい姿勢が目立つ横審委員長は「心配して見ていたが、委員全員がホッとした気持ちだ」と思わず“本音”を漏らしています。

白鵬の相撲内容に対する注文も大きくトーンダウン

もう一つ、優勝した白鵬に対する意見でも、今までよりトーンダウンしたものが目立ちました。

確かに、全勝優勝した白鵬は立派な成績です。しかし、その内容を見ると、立ち合いでは批判されていた張り差しが多く、逸ノ城との対戦ではダメ押しも行っており、相撲協会や横審の注文に沿うならば、必ずしも全面的に褒められた内容ではなかったはずです。

しかし、場所後の白鵬への批判が聞こえることはほとんどありませんでした。これは以前とは異なる状況です。

白鵬、稀勢の里、鶴竜の3横綱はいつ引退しても不思議ではない

秋場所に進退問題をかろうじてクリアした稀勢の里ですが、まだ怪我の影響が残っており、来年5月場所を迎えるまでの3場所(今年12月、来年1月、3月)で何が起きるかわかりません。

また、既に大横綱の地位を確立したと言える白鵬も、最近は怪我による休場が多く、年齢的に峠を越えているのは明らかです(来年3月で34歳。横綱の引退時の平均年齢は31歳)。

白鵬にしても、稀勢の里にしても、そして、秋場所に精彩を欠いたもう一人の横綱である鶴竜(現在33歳)にしても、いつ引退しても不思議ではないと言えるのです。

貴乃花親方の引退騒動という新たな問題が発生した相撲協会ですが、来年の5月場所を控えて、心配で眠れない日が続くのではないでしょうか。

葛西 裕一

参考記事

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国立大学卒業後、国内・外資系の金融機関にて23年勤務後に独立。証券アナリストなどの職務を経験し、ファイナンシャルプランナー関連等の金融系資格を多数保有。専門は株式投資、貴金属投資、年金、相続、不動産。