最新の喫煙率は17.9%、3年連続で減少して最低値を更新中

近年、健康意識の高まりや、喫煙に対する規制強化を背景に、たばこ離れに歯止めがかかっていないのは既にご承知の通りです。実際、たばこの国内販売数量は、20年前のピークから約▲6割減少しました(2017年実績)。

そして、この7月末に日本たばこ産業(JT)が発表した「全国たばこ喫煙者率調査」を見ても、たばこ離れの実態を見ることができます。当該調査の結果によれば、たばこを吸う成人の割合は17.9%(男性27.8%、女性8.7%)となり、前年から▲0.3ポイントの低下となりました。

喫煙率の低下はこれで3年連続であり、調査開始以来の最低数字を更新しています。

男性と女性の喫煙率の推移~50年前は男性の5人に4人が喫煙者

ただ、喫煙率は元々、男女間に大きな差があるため、男女別喫煙率の推移を見る方が実態を表しているかもしれません。まずはその推移を見てみましょう。

  • 1965年 男性:82.3%、女性:15.7%
  • 1975年 男性:76.2%、女性:15.1%
  • 1985年 男性:64.6%、女性:13.7%
  • 1995年 男性:58.8%、女性:15.2%
  • 2005年 男性:45.8%、女性:13.8%
  • 2010年 男性:36.6%、女性:12.1%
  • 2015年 男性:31.0%、女性:  9.6%
  • 2016年 男性:29.7%、女性:  9.7%
  • 2017年 男性:28.2%、女性:  9.0%
  • 2018年 男性:27.8%、女性:  8.7%

いかがでしょうか。約50年前には男性の5人に4人が喫煙者という、今では少し信じられないような時代だったことがわかります。現在は約4人に1人が喫煙者ですから、男性の喫煙者激減によって、全体の喫煙率低下がもたらされたのは間違いありません。

女性の喫煙率低下は思いのほか緩やか

一方で、女性の喫煙率の低下は、思いのほか緩やかであることも分かります。上記の調査結果によると、2018年の喫煙者は、男性で1965年の3割強、女性は5割強です。確かに、元々の喫煙率が低いと言ってしまえばそれまでですが、それを割り引いても、女性の喫煙率の低下が緩やかであることは事実でしょう。

さらに、成人(20歳以上)の絶対数は、中高齢者を中心に女性の方が多いことを勘案すると、女性の喫煙者は意外に多いということが言えるのではないでしょうか。

そこで、同じくJTが発表した「全国推定喫煙人口」を見てみましょう。10年前(2009年)との比較です。

  • 男性 2009年:1,957万人→2018年:1,406万人(▲551万人、▲28.1%減)
  • 女性 2009年:   644万人→2018年:   474万人(▲170万人、▲26.3%減)

やはり、わずかではありますが、ここでも女性の喫煙率低下が緩やかであることが見て取れます。では、わずかな差とはいえ、なぜ女性の喫煙率低下が男性に比べて小さい(緩やか)のでしょうか?

オフィスにおける喫煙環境の大幅縮小

考えられる理由の1つは、男性、とりわけ会社勤め(サラリーマン)の場合の喫煙環境の縮小です。

現在、オフィス内での禁煙は当たり前であり、なおかつ、喫煙ルームを設置している企業は意外に少ないと思われます。仮に喫煙ルームが設置されていても狭くて数も少なく、休憩時間に行くことも簡単ではないでしょう。また、路上のほか、飲食店(喫茶店、居酒屋など)も喫煙不可の店が珍しくなくなりました。

一方、女性の場合、オフィスや飲食店は同じ環境ですが、家で過ごす時間が多い専業主婦は、こうした条件が大きく緩和されます。

相次いだタバコの値上げ、毎月の“小遣い”では十分に賄えない?

もう1つ考えられる理由が、度重なるタバコの値上げです。

たとえば、1980年に1箱(20本入り)180円だった「マイルドセブン」は、その後「メビウス」へブランド名が刷新されましたが、現在は440円です。厳密に比較するためには、貨幣価値の変動を考慮しなければなりませんが、大幅な値上げとなったことは確かです。多くの男性の場合、タバコ代は毎月の“小遣い”で賄う必要があると思われ、大きな負担になっていることは容易に想像できましょう。

一方、女性喫煙者にも負担は重くなっているはずですが、家計を預かる女性の場合、男性よりもタバコ代を“捻出”しやすくなっている可能性はあると考えられます。

この他にも、女性の社会進出や、ファッション性の強い女性向けタバコの登場など幾つかの理由が挙げられます。一方で、女性の場合、喫煙による美容への影響や、妊娠・出産への影響等も海外を中心に報告されています。

たばこ税増税による値上げが間近に

10月からはたばこ増税に伴うたばこ価格の値上げが実施され、前出の「メビウス」は1箱480円へと+40円の値上げが予定されています。タバコは嗜好品から高級嗜好品へと変わっていくようです。男性も女性も、喫煙についてもう一度考えてみるいい機会かもしれません。

葛西 裕一