中央競馬、少子化時代の新たなターゲットは? 売上はピークの7割

9月16日は「競馬の日」です。これは、1954年(昭和29年)に日本中央競馬会(JRA)が農林省(現在の農林水産省)の監督の下で発足したことに由来します。それまでJRAは農林省畜産部が運営する国営競馬という位置付けでしたが、現在も事実上の国営競馬であることに変わりはありません。

競馬に関しては、勝馬投票券(馬券)を購入する人、馬券は購入しないけど好きな人、興味がない人、嫌悪感を持つ人など様々かと思いますが、「競馬の日」にあたって、競馬を中心とした公営ギャンブルの現状を見てみましょう。

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公営ギャンブルの売上一覧~中央競馬は最大規模

中央競馬は公営競技(「公営ギャンブル」と称されます)の中で最大規模を誇ります。具体的に2017年度の売上実績を見てみましょう。カッコ内は対前年比です。

  • 中央競馬:2兆7,871億円(+3.1%増)
  • 競艇:1兆2,378億円(+11.4%増)
  • 競輪:6,400億円(+0.9%増)
  • 地方競馬:5,525億円(+13.5%増)
  • オートレース:659億円(+0.8%増)

公営ギャンブルの売上回復が鮮明に、一方で2極化も顕著

こうしてみると、五輪の正式種目になっている競輪よりも競艇の方が断然に大きいことや、SMAPの元メンバーが活躍しているオートレースが非常に小さい規模であることなど、いくつか意外に感じることがあります。

その中で、中央競馬が圧倒的な規模を誇っていることが改めて分かります。

そして、近年の大きな特徴として、こうした公営ギャンブルの売上増加基調を挙げることができます。ただ、競艇や地方競馬が2桁増となっているのに対し、競輪とオートレースは微増に止まるなど、同じ公営ギャンブル内でも、2極化が鮮明となっていることも特徴と言えましょう。

公営ギャンブルの売上はいまだピーク時に遠く及ばず

このように、公営ギャンブルの売上が増加しつつあるものの、いまだピーク時には遠く及ばないのが実情です。

多くの公営ギャンブルが1990~1997年にピークの売上を記録しましたが、近年の売上回復が著しい競艇と地方競馬がいずれもピーク時の半分強(約56%)、競輪は3分の1以下、オートレースに至っては約2割程度(つまり▲8割減)まで減少しています。

この要因としては、レジャーの多様化に加え、景気低迷による遊戯費用の減少が考えられます。逆に言うと、ピーク時の売上がいかに高水準だったか分かるのではないでしょうか。

中央競馬は健闘するものの、それでも売上はピークの7割

売上の大幅減退という意味では、中央競馬も例外ではありませんが、他に比べれば大健闘しています。中央競馬の売上のピークは1997年の約4兆円でしたから、2017年実績はピーク時の約70%水準になります。大幅減少に変わりはありませんが、他の公営競技のような半減には陥っていません。

ピーク時の7割水準を維持していること自体、競馬に対する底堅い人気を垣間見ることができるでしょう。なお、中央競馬の売上高は、勝馬投票券による収入を用いているため、財務諸表上の売上高とは若干の差異があります。

中央競馬の売上不振は、一般財源収入にも影響を及ぼす

また、公営競技である競馬は、原則として、1)勝馬投票券による収入(=ほぼ売上高に近い)の10%、2)最終利益の50%を国庫納付金として納入し、国の一般財源(国家予算)に繰り入れられています。この国庫納付金は、1997年の4,663億円をピークに減に転じ、ここ数年は3,000億円未満が続いていました。

しかし、2017年度は久々に3,000億円を上回る金額(3,054億円)を計上しています。中央競馬の盛り上がりは、一般財源収入にも少なからぬ影響を及ぼすと言えるでしょう。

早くから“企業努力”をしてきたJRA、新たな施策も必要に

JRAは、まだ日本がバブル経済期にあった1980年代後半から、それまでの“競馬=中高年男性のギャンブル”という暗いイメージを払拭するために、人気タレント(注:成人。以下同)を起用した広告宣伝、テレビ放送枠の拡大、人気騎手の育成などに注力してきました。

そこに、オグリキャップを始めとする全世代に受け入れられた数多くの人気馬の登場もあり、前述した1997年には空前絶後の売上を記録したのです。

JRAはその後も、勝馬投票券の多様化や、アイドルタレントをMCに起用したテレビ番組の放映など、様々な“企業努力”をしていると考えられます。また、早くからインターネットによる勝馬投票券の販売に取り組んだことも見逃せません。

しかし、未成年に対して拡販や啓蒙活動が行えないという事情もあり、今後は少子化の影響がジワリジワリと出てくるでしょう。何らかの新たな対策を講じる必要があるのは明白です。

訪日外国旅行客と18歳成人層が今後の大きなカギになる?

たとえば、増加の一途を辿る訪日外国人向けの宣伝広報活動を強化するのも一考に値しましょう。諸外国でも競馬が盛んな国もありますが、アジアを中心にまだ拡大余地は大きいと見られます。特に、公営ギャンブルが事実上禁止となっている中国では、日本の競馬に対する関心は高いと言われています。

また、18歳以上に選挙権が認められたことから、法律上の「成人」が18歳以上になる日が遠くないかもしれません。日本の若年層が熱中しているモバイルゲームとのタイアップも一つの策と考えられます(注:既に一部実施されている可能性があります)。

伝統ある競馬を後世に残す

競馬は、古代ローマ時代にその起源を遡ることができる歴史ある競技です。日本でも約150年前から行われており、時代時代の「名馬」を輩出しています(注:開始時期には諸説あり)。伝統ある競馬を良い意味で後世に残すよう、競馬の日に改めて考えるのもいいかもしれません。

葛西 裕一

ニュースレター

国立大学卒業後、国内・外資系の金融機関にて23年勤務後に独立。証券アナリストなどの職務を経験し、ファイナンシャルプランナー関連等の金融系資格を多数保有。専門は株式投資、貴金属投資、年金、相続、不動産。