子どもを怒るとき、親は怒りを捏造している!?

自分の中に怒る原因はないか?

子どもを叱ったり怒るとき、親は「子どもが怒られる原因を作ったから怒る」ものですよね。怒られる原因を作ったのは子どもであり、怒られても仕方ないのだと、親としては思うでしょう。

しかしアドラー心理学では、子どもに言うことを聞かせるために親が怒りを捏造し、子どもを屈服させたというような目的論を主張します。「怒り」を、目的を達成するための手段として使ったというのです。

親としては、ちょっと待った!と言いたくなりますよね。「怒られる原因を作ったのは子ども」だと、親は強く思うことでしょう。それでも少し立ち止まってよく考えてみると、心当たりがあるところはないでしょうか。7歳、3歳、1歳の3児を育児中の筆者も、自分の感情とていねいに向き合ってみました。

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怒りを捏造したくなる理由は?

子どもを叱ったり怒るときに、強い口調になったり、グチグチ言ったり、人間性を責める言い方をしたり、大声を出すなどということがあります。こうしたとき、ただ単純に「子どもが原因を作ったのだから、親がこれほど怒るのは当たり前」かというと、疑問は残ります。

子どもの誤りを正すのであれば、説明すれば良いはずです。ただ幼児期は言っても理解するまでに時間がかかるので、その子ができるようになるまで、何十回と説明する必要があります。

それでも親が「怒る」という過剰反応をする場合、そこには「自分が怒りたい気持ちを抱えている」可能性は否定できません。たとえば以下のような気持ちをもっていたため、子どもを怒ってしまうということはないでしょうか。

  • 心身ともに疲れていて、心に余裕がなかった
  • 同じことを何回も繰り返して(こぼしたものを拭いたり、散らばったおもちゃを片付けるなど)苛立った
  • こぼしたものを拭くとか、おもちゃの片付けといった単純作業を繰り返す毎日に嫌気がさした
  • 何十回同じことを言っても子どもが理解しないので苛立った
  • 他の子と比べて発達などが遅れている我が子に不安を感じた
  • 忙しいときに愚図られて焦った
  • 自分の時間がゼロで自分を見失いそうになった
  • 家族のために働き過ぎて自分がない状態である
  • 独身時代と産後の生活のあまりのギャップの大きさにショックを受けている
  • 育児の相談や愚痴を話せず孤独を感じている
  • ご飯を食べるどころかトイレさえ満足に行けないワンオペ育児に疲れた
  • 報酬も評価もなしで自分を家政婦のようだと感じて
  • 自分にも、子どもにも、夫にも完璧を求め過ぎて
  • 予定も子育ても自分の思い通りにいかなくて
  • 夜間授乳や夜泣きで寝不足である
  • 何度も繰り返される兄弟喧嘩がうるさくて
  • 子どもがケガや病気をして不安感が大きくなり過ぎた
  • 他に嫌なことがあった
  • 夫婦関係が不安定である
  • 家計に余裕がない

これは一部の例ですが、心当たりがあるという人も少なくないでしょう。アドラーの主張も、一理あると言えそうです。

怒るのは仕方ないけれど、マイナス面も多い

子育て中は家庭が全てですから、上記のような余裕のなさ・苛立ち・喪失感・孤独感・焦り・不安といった感情は、怒りに形を変えて子どもや夫に向かってしまうものです。しかし人間ですから、こういったマイナスの感情を抱かないということも、またあり得ないことでしょう。

では子どもを怒っても仕方がないのかというと、仕方ないのは仕方ないでしょう。怒らない親はいませんし、親が怒らなくても、いつか必ず子どもは社会で「怒り」という感情に出会うでしょう。友達、先輩や後輩、先生などから、怒られることはあるものです。家庭は小さな社会と言いますが、親から怒られることは、その際の練習の一つとも言えるでしょう。

とはいえ、日常的に理不尽に怒られるのは、子どもの精神衛生上良くありません。誰だって同じですが、毎日怒られるのは気分の良いものではありませんよね。怒りは、子どもが「萎縮する・挑戦を諦めるようになる・本音を言わなくなる・常に人の目を気にするようになる」というマイナス面も持ち合わせています。

怒ることもあるけれど、怒る回数を少なくする。責め立てるような口調や、大声や、人間性を否定するような怒り方はしない。そのためには、どうしたら良いのでしょうか。

「自分の枠」を超えず、自分の人生を生きる

一つの考え方としてお勧めしたいのが、「自分の枠」を知り、自分に合った毎日を生きることです。子どもはかけがえのないほど大切な存在ですが、結婚は日常と言われるのと同じく、子育ても日常です。「母として、妻として、仕事人としての自分の枠」を超えてしまうと、無理がたたり、怒りが生まれてしまいます。自分をしっかり見つめて、自分の枠を超えないよう意識してみましょう。

たとえば自分の体力はどれだけあるのか、今日はよく眠れたか、それとも寝不足なのか。寝不足なら無理して外出することもないですし、疲れて子どもの相手ができないならテレビを見せても良いでしょう。料理が苦手なら、全てを手料理ににすることに固執せず、お惣菜やレトルトを取り入れましょう。人間は自分の時間がなければ心の余裕を失うので、きちんと毎日自分の時間を取るのです。

「子どもにレトルトなんてダメな母親だ」「お惣菜は甘えだ」といったことを言う人もいるかもしれません。SNSを見ればキラキラ輝くような母親もいるでしょう。しかしそれは「その人の価値観」であり、「あなたの価値観」とは別。大切なのは、自分と他人を分け、自分の価値観を生きることです。

今、子どもにご飯をあげるあなたが、子どもの健康を望むけれど今日は疲れたからレトルトにしようと思うなら、それがあなたの答えです。無理をして手作りし、イライラすることと、どちらが良いでしょうか。それを決めるのもあなた自身です。

自分と向き合い、「自分の枠」を意識するようになると、次第に怒りたくなる機会が減っていくでしょう。自分の生き方に納得がいくようになると、無理をしたり不満を感じることも減るものです。

宮野 茉莉子

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宮野 茉莉子

東京女子大学哲学科を卒業後、野村證券を経て2011年よりライターへ。
主な執筆分野は育児、教育、ライフハック、女性の社会問題など。
子どもから大人まで「自分の頭で考える」哲学の面白みを伝えるべく執筆中。禅好きの3児の母。