紳士服コナカがとんかつ専門店「かつや」を運営する背景

紳士服店がとんかつ専門店「かつや」のFC店舗を展開していると聞くと皆さんどう思われるでしょうか。「業態が大きく違うような気がする」という意見も多いのではないでしょうか。今回は紳士服の小売店の業態が多様化している状況とその背景について考えてみたいと思います。

業績が厳しい紳士服小売店

2018年8月10日に発表された紳士服小売り大手コナカの2018年9月期Q3(第3四半期)累計決算では、売上高が対前年同期比▲4%減、営業利益が同▲22%減という減収減益の決算となっています。

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また、同社のセグメント別に見てみると、主力の「ファッション事業」が対前年同期比で▲5%減となっているのが連結全体で減収の主な背景です。

その一方で、とんかつ専門店「かつや」やからあげ専門店「からやま」などのFC店を展開する「フードサービス事業」は対前年同期比+5%増と「ファッション事業」と比べると好調です。

もっとも「ファッション事業」の売上高が513億円、「フードサービス事業」の売上高が12億円ですから、同社の主力事業は引き続き「ファッション事業」といえるわけです。ただ、同社の中で成長事業はないかといえば「フードサービス事業」といえるでしょう。

コナカの事業はそれだけにとどまりません。「教育事業」として英語教育の「Kids Duo International」も展開しています。こちらも売上高が4億円であるものの、対前年同期比+106%増と大きく成長しています。このように「ファッション事業」の売上高は大きいものの、「フードサービス事業」や「教育事業」も拡大しています。

AOKIホールディングスの事業ポートフォリオ

では、コナカ以外の紳士服専門店はどのような動きをしているのでしょうか。

コナカの場合には「ファッション事業」以外の比率は大きくはありませんでした。その一方でAOKIホールディングスの場合には、「ファッション事業」以外の比率が大きくなっています。

2018年8月3日にAOKIホールディングスが発表した2019年3月期Q1(第1四半期)決算では、売上高が448億円と対前年同期比▲3%減、営業利益が同▲30%減と減収減益の決算となっています。

AOKIホールディングスをセグメント別に見ていくと、「ファッション事業」の売上高が256億円、「アニヴェルセル・ブライダル事業」が66億円、カラオケや複合カフェ運営などの「エンターテイメント事業」が124億円となるなど非「ファッション事業」が大きくなっています。AOKIホールディングスのQ1決算では非「ファッション事業」の売上高比率では実に42%にまで及んでいます。

また、Q1の営業利益では、「ファッション事業」は2億円の営業損失であり、「アニヴェルセル・ブライダル事業」と「エンターテイメント事業」が収益を上げる構造となっています。

青山商事の異業種事業の展開

紳士服小売店が異業種事業を展開しているのはコナカやAOKIホールディングスだけではありません。青山商事も同様に事業ポートフォリオの分散化を図っています。

青山商事の事業ポートフォリオは多岐に渡っています。「ビジネスウェア事業」、「カジュアル事業」、「カード事業」、「印刷・メディア事業」、「雑貨販売事業」、「総合リペアサービス事業」等とセグメントでは「その他」も含めれば実に7つもあります。

「総合リペア事業」といってもピンとこない方もいるかもしれませんが、靴修理や鍵複製の「ミスターミニット」といえばご存知の方も多いでしょう。また、「その他」には「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」といった外食店、そしてリユース事業として「セカンドストリート」などを運営しています。

2018年8月10日に発表された青山商事の2019年3月期Q1決算では、「ビジネスウェア事業」は26億円の営業利益を計上しているものの、対前年同期比で▲30%減と大きく減益となっています。

同社は事業ポートフォリオを分散しているのは見てきた通りです。ただ、Q1決算の営業利益を見ると、「総合リペア事業」は若干の営業損失、「その他」も若干の営業利益という状況です。

紳士服小売店が異業種展開をする背景

2016年11月にコナカが発表した「中期経営計画策定に関するお知らせ」の中で以下の様なコメントがあります。

少子高齢化、働く女性の増加といった社会情勢の変化に対応し、新たな収益源を確保すべく、 関連事業や新規事業も積極的に展開していきます。


少子高齢化の中で紳士服を必要とする数も減るでしょう。また、クールビズ以降、ビジネスシーンでの服装も変わりつつあります。テレワーク、リモートワークが増えればスーツも必要なくなるシーンも増えるかもしれません。

また、リアル店舗を持つ紳士服小売店にとってはEC企業のビジネススーツ展開も脅威となってくるでしょう。スタートトゥデイのプライベートブランド「ZOZO(ゾゾ)」がビジネススーツとドレスシャツの注文受付を開始しています。体系採寸スーツの「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を活用したビジネススーツ展開です。

このように人口動態や働き方の変化、またテクノロジーをきっかけとした流通チャネルの変化などが紳士服小売業にとっては脅威となっています。異業種展開がどのように今後進んでいくのかに注目です。

青山 諭志

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慶應義塾大学卒業後、国内大手及び外資系大手金融機関に合わせて10年以上勤務し、株式市場を中心にマーケット関連の仕事に従事。その後独立。金融機関では主にアナリストとして企業や産業調査活動に従事。調査内容としてはミクロ・セミマクロが主な分析対象だが、好きなのはマクロ分析。記事で取り扱うテーマはマーケット動向、企業分析といった株式市場関連の分析や貯蓄や投資といった個人の資産運用動向を取り扱う。最近は「富の分配」問題や「お金持ち」である富裕層研究にも時間を割いている。その他に興味のある分野はブロックチェーン技術とゲノム(ジーノム)。