残業時間と夫婦仲の密接な関係 「一番忙しい時間に夫がいない…」

男性も長時間勤務に危機感

お互い自立していて、別々に暮らしていた時期には魅力的に感じていた彼の仕事好きな一面。結婚して「家庭」という船を2人で漕ぎ出してから、「自分ばかり、船のオールをせわしなく動かしている気がする」という女性は少なくないのではないでしょうか。

「稼ぐ男性」と「サポートする女性」という役割分担は、一昔前はある意味で合理的な形でしたが、現在は、経済的な問題や雇用環境の変化により、女性も働き続ける家庭が増えています。

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家事・育児をしながらパートナーの靴をピカピカに磨き上げる「サポート役」に喜びを覚える女性がいれば、外に出て働くことで家庭がうまくまわる女性もおり、理想のライフは人それぞれです。

一方で、男性が周囲から期待される「働き方の型」の変化は、女性と比較して変化がスローです。男性の残業時間は、年々減少傾向にあるものの、家事・育児に関わる時間はなかなか増えていきません。

夫の残業が常態化すると、妻の家事負担が増えやすい

2014年の『第5回全国家庭動向調査』によれば、夫と妻の合計を100%としたときの夫の家事分担割合は14.9%、育児分担割合は20.2%と、少しずつ増えているものの、依然として妻が家事・育児の大部分を担っています。

そして、夫の帰宅時間が遅いほど、夫の家事分担率は減る傾向にあります。午後10時~11時台に夫が帰宅する場合、妻が6割以上の家事を担っている割合が87.9%に上っています。

一方で、「妻の家事負担が100%」という家庭は、夫の帰宅時間に関係なく20%。つまり、5時に帰ろうが、11時に帰ろうが「妻が家事を全部やる」という家庭は一定数存在し、別の問題が介在していることも垣間見えます。

夫の帰宅時間と「夫婦時間のクオリティ」の関係は?

さらに、育児中の家庭に限っては、夫の帰宅が午後10時以降の場合、家事・育児も「もっぱらひとりで担っている」という家庭の割合は深刻です。内閣府経済社会総合研究所の調査よれば、妻が正規雇用の場合は29.2%、専業主婦の場合は56.0%の女性が、夫の協力を全く得られない「ワンオペ育児」状態となっています。

また、妻から見て10時以降に帰宅した夫が「気がはりつめている」割合は、正規雇用の女性の場合21.5%、専業主婦の場合26.8%となっており、夫が早い時間帯に帰宅した場合と比べ、格段に高くなっています。

たとえ育児や人間関係で悩みを抱えていたしても、気の張りつめた相手には、なかなか相談できるものではありません。

夫の帰宅時間が10時以降の場合、妻の負担感のみならず、夫婦で過ごす時間の質にも深刻な影響を与えている可能性があります。近所に夫以外に心を許せる大人がいない場合、妻の孤立感を高めるケースも多いと推測できます。

加えて、たとえ午前0時をまわってからの帰宅が午後10時の帰宅に早まったとしても、育児と家事の忙しい時間は終わっており、妻の負担感が劇的に軽減されることはないのではないでしょうか。

家庭のある男性も長時間勤務に危機感を覚えている

ここまで「家庭で待つ女性」目線でお届けしてきましたが、残業の多い男性も「今のままではまずい」と感じている人が多いようです。

ランスタッド・ワークインサイトが20歳から69歳までの一般企業に勤務する1,800人の男女に調査したところ、プライベートを優先させたいのに、実際には仕事が優先となっている割合は43.2%にのぼっています。

また、残業時間が月に80時間以上となった場合の影響として、以下のような回答が多く見られました。

1位・・・残業によって体力的、心理的に疲労を感じてしまう(56.1%)
2位・・・残業のために家族やパートナーとの予定をキャンセルすることが多い(34.1%)
3位・・・残業によって業務のことが頭から離れない(26.8%)
4位・・・残業によるストレスで家族やパートナーにきつく当たってしまう(24.4%)

家族に優しくできなかったり、妻のヘルプサインに応えられないことで、罪悪感を覚えていても自分の力では現状を変えることができずにもがいている人は多いのかもしれません。

シニア世代の「亭主元気で留守がいい」の時代から「夫は最後に風呂洗い」という時代にシフトしつつあります。

男性の「長時間勤務」は、自身のメンタルヘルスや幸福度に大きな影響を及ぼす深刻な問題。のみならず、夫婦関係にも大きな影響を与えているようです。

【参考】
『第5回全国家庭動向調査』結果の概要(国立社会保障・人口問題研究所)
【ランスタッド・ワークインサイト】残業が恋活・婚活に与える影響(ランスタッド)
『有配偶女性の生活環境と就労、出産、子育てに関する分析』(内閣府経済社会総合研究所)
 

北川 和子

参考記事

東京外国語大学卒。商社の営業職、専業主婦を経てライターに。男女の働き方、子育て世代の消費動向などに関心がある。