ステーキの本場米国で「いきなり!ステーキ」の快進撃が続いています。ただ、ステーキにはうるさいニューヨーカーの心をつかんだのは目新しさだけではないようです。今回は、ニューヨークで旋風を巻き起こしている「J-Style」という巨大なうねりを紹介します。

8月3日に9号店がオープン、目標は全米で1000店舗

立ち食いステーキとして日本ではすっかりおなじみのいきなり!ステーキですが、本場のニューヨークでも怒涛の開店ラッシュが続いています。昨年2月に1号店がオープンしたばかりですが、8月3日には9号店がマンハッタンのアッパー・イースト・サイドで営業を開始。わずか1年半で9軒目というハイスピードです。

年内に11店舗、5年のうちに少なくとも20店舗以上を確保したいとの考えで、最終的には全米で1000店舗を目指すとされていますので、出店ラッシュはまだまだ続きそうです。

「立ち食い」から方向転換、日本とは違うオペレーション

いきなり!ステーキの代名詞はいわずとしれた「立ち食い」ですが、立ち食いやチップの廃止、グラム単位での表示といった「日本流」はすぐに方向転換されています。ただ、方向転換といっても、目論見が外れたわけではなく、当初の計画に沿っての変更のようです。

同社はニューヨークに進出するにあたり、「立ち食いはもともとある日本の文化ではない」とした上で、いまでは立ち食いそばが広く浸透し、ステーキでの立ち食いも受け入れられたと主張。その一方で、欧米ではパブでの立ち飲みは一般的であるとして、「米国で立ち食いが受け入れられないわけがない」と強気のコメントを出して話題を集めました。

また、日本人には面倒なチップの廃止やグラム単位での提供など、日本流を前面に押し出したアピールも忘れていませんでした。しかし、これらはいきなり!ステーキが日本から来たユニークな店であることを強調するためのイメージ戦略であったことが後に明らかになります。

報道陣が詰めかけた1号店のオープンでは、アメリカ人がステーキを立ち食いしている姿が大きく報じられ、その衝撃的な映像により注目度が一気に高まりました。ただ、店内は最初から着席を前提にレイアウトされており、立ち食いというパフォーマンスはあっという間に終了。すぐに椅子が用意されました。

行列ができるほどの人気が伝えられたことで、「成功するはずないといわれた立ち食いが米国で受け入れられた」「チップの廃止が成功の秘訣」といった報道もあったようですが、いまニューヨークのいきなり!ステーキに行っても立ち食いはできません。

また、米国ではステーキの重さはオンス(OZ)表示が一般的です。「立ち食い」「チップ制廃止」「グラム表示」はイメージ戦略としての役割を終え、現在は全店舗が着席で、チップは必要ですし、オンス単位での量り売りとなっています。また、予約もできるなど、日本のお店とはオペレーションが大きく異なっています。

低価格の実現、救世主は日本酒?