東京エレクトロン(TEL)や米Lam Researchといった半導体製造装置主要各社が2018年4~6月期決算を発表している。高水準の装置需要が続いているのは確かだが、年後半(7~12月)にかけて短期的な調整局面を迎えるもようで、各社ともガイダンスの引き下げや市場見通しの修正を発表する事態となっている。

サムスン、TSMCの投資見直しが影響

 今回の調整局面の要因はDRAM、ファンドリー顧客からの需要減少によるところが大きい。DRAMは最大手のサムスン電子が平澤工場での投資の一部延期を決めたこと、ファンドリーでは台湾TSMCの年間投資計画の引き下げが大きく影響する。

 サムスンは現行の1Xnm世代の歩留まりが予想以上に良好で当初想定のビット成長を上回る出荷が続いていること、クラウド顧客のデータセンター投資に一服感が出ていることなどを理由に、平澤工場上層部のDRAM投資を3~4カ月延期。TSMCも仮想通貨マイニング向け、およびスマートフォン向け需要の減退などを受けて、設備投資を従来の115億~120億ドルから、100億~105億ドルに減額修正している。

WFE市場見通しを引き下げ

 東京エレクトロンの18年度第1四半期(4~6月)決算のうち、SPE(半導体製造装置)部門は、売上高が2804億円(前四半期比14%減/前年同期比26%増)となった。上期計画に沿って順調に進捗しているとしており、第2四半期(7~9月)新規装置売り上げ計画のうち、6割以上がすでに出荷済みだ。

 ただ、4月時点で前年比15%増の580億ドル規模と想定していた18年のWFE(Wafer Fab Equipment)市場は今回、第1四半期決算にあわせて、同10~15%増の560億~580億ドル規模(従来は同15%増の580億ドル)とガイダンスに下限を設け、実質的に予想を引き下げた。

 アプリケーション別ではDRAMが従来の同60%増から60~65%増、NANDなどで構成される不揮発性メモリー(NVM)が同横ばいから横ばい~5%増へと上方修正された。一方、ロジック/ファンドリーは同水準から10%減~同水準に予想を引き下げた。

 ロジック投資の引き下げについて、河合利樹社長は「需要減退というよりも、テクノロジーマイグレーション(微細化)に起因して若干後ろ倒しの方向になっている。中期的な見通しに変更はない」とコメント。メモリーでは一部DRAM投資などで見直しがかかっているものもあるが、「プッシュアウト(後ろ倒し)に関してはある程度織り込んでいた。一方でプルイン(前倒し)したものもある」(同氏)として、現時点で通期予想を変更する必要がないことを強調した。

Lam、7~9月売上高が26%減

 同業のLamは、2018年7~9月期の売上高が前四半期比26%減の23億ドル(±1.5億ドル)になるとの見通しを明らかにした。TEL以上に短期的に前工程装置の調整が行われていることを示唆するガイダンスとなった。

 同社は従来、出荷高ベースでのガイダンス公表を主体にしていたが、新年度(19年6月期)から出荷高の公表を取り止め。売上高ベースでの業績予想に切り替えを行っている。なお、7~9月期から新会計基準ASC606を導入。同社では新会計基準による影響を開示していないが、従来基準での売上高では前四半期比での減収幅は軽微にとどまった可能性がある。

 主要顧客の間で投資計画の見直しなどが行われており、同社によればメモリー向け売上高が大きく調整する見通しだという。7~9月期が当面の売上高のボトムになるとしており、10~12月期から引き続き上昇局面になることを示唆した。

 ただ、今回の調整を踏まえて、18年のWFE(Wafer Fab Equipment)市場は従来の10%台前半の成長率から、1桁台の成長にとどまると見通しを下方修正。メモリーに加え、ファンドリーでも短期的な需要調整が行われていることを修正理由に挙げている。

「7~9月期がボトム」は本当か

 18年の半導体設備投資は、サムスンやTSMCのように一部計画を先送りした企業もあれば、SKハイニックスやマイクロンのように投資の増額修正をしているところもあり、一概に共通したトレンドを読み解くのは難しい。ただ、サムスンやTSMCはメモリー、ロジックそれぞれにおける「巨人」であり、これら企業が修正を図った意味、そしてインパクトは予想以上に大きい。Lamが強調していた「7~9月期がボトム」が確度の高いものなのか。今後注意深く見守っていく必要がありそうだ。

(稲葉雅巳)

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳