みなさんは、災害時の避難所生活をイメージできますか? 多くの方は、報道番組などを通して映像では観たことがあっても、いざ自分がとなると、なかなか実感が湧かないかもしれません。

先日の西日本での豪雨災害「平成30年7月豪雨」の関係で、まだ避難所生活をされている方も大勢おられますが、日本は世界有数の地震大国でもあり、大雨や大雪、火山活動などの被害も毎年各地で起きていますから、「自分の住んでいる地域は大丈夫」と安心せず、自分事として関心を持っておきたい話です。

日本の避難所は世界的にも最低水準⁉

避難所というと、体育館に大人数で共同生活をして、床に直接布団を敷いて雑魚寝する、といったイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

当たり前に感じられる日本の避難所風景ですが、実は、他の先進国に比べて生活水準が著しく低いのです。その環境の悪さについて「ソマリアの難民キャンプ並み」と言う人もいます。

中には、汚くて臭いトイレに行くのが嫌で、水分を取るのを控えたり、トイレに行くのを我慢したりして、脱水症状などを引き起こしてしまうこともあるといいます。せっかく避難できたのに、避難所の衛生状態の悪さから病気に感染して亡くなってしまったり、避難所に行くのが嫌で逃げ遅れたりした人などの例もあるようです。

快適さの目安「スフィア基準」

実は、紛争や災害の際の避難所の環境水準を定めた国際基準に「スフィア基準」というものがあります。その中では、

・1人あたりの居住スペースは3.5平方メートル(およそ2畳分)以上、天井の高さは2メートル以上
・トイレは20人に1つ、男女比1:3の割合で設置

などが基準として示されています。これに対応するため、日本でも段ボールを使った組み立て式の簡易ベッドを導入して広いスペースを確保したり、持ち運びできる簡易トイレを準備したりするなど、工夫を凝らしています。

欧米諸国と異なり、日本には床に布団を敷いて寝るという習慣がありますが、これはスペースの問題のみならず、緊急の限られた設備では衛生面においても良くありません。避難所にベッドを導入するというのは一つのポイントとなりそうです。

欧米での避難所事情

火山国・地震国であるという点で日本と似たイタリアでは、災害時には家族ごとに大型テントが支給されたり、国の資金でホテルに宿泊させる体制が整えられたりしています。1つのテントは6人ほど収容できる広さがあり、エアコンやベッドも設置されているんです。

また、アメリカでは、ボランティアなどの支援体制が整っており、被災翌日から食料や日用品などの生活必需品以外にも素早い支援が受けられます。各避難所にテレビや新聞が支給され、映画上映を行ったり、子どもたちのためにピエロが遊びに来たりすることもあるようです。物資と比べて二の次にされがちな情報や娯楽も、精神的に追い詰められた環境では大事な救済手段ですよね。

こうした考え方を受けて、日本でも熊本地震の際には、登山のベースキャンプを参考にした「テント村」がつくられました。体育館や公民館での寝泊まりに比べてプライバシーを確保でき、公私・寝食など活動ごとにスペースを区切ることで、安心感や清潔さも保てます。

民間も支援の手を

体育館での生活が余儀なくされている場合でも、近隣の銭湯やホテルが大浴場を開放したり、美容院が無料シャンプーを行ったりして、行政だけでなく民間も支援に協力しているようです。

他にもペット同伴可の避難所を設けて、ペットを連れている人・動物が苦手な人が相互に嫌な思いをするのを防いだり、先の大雨被害に遭われた倉敷市でも、体育館に紙筒と布を使って間仕切りを設置したりするなど、いまある設備で最大限ストレスを軽減するための取り組みが現在進行形で行われています。

いまはほとんどの建物で耐震工事が行われているので、安全基準などを満たせば民間運営のイベント会場や宿泊施設などを利用してもいいかもしれません。被災した地域へは、予定していた旅行を自粛してキャンセルしてしまう人がどうしても多いのですが、この施策は空室を有効活用することにもつながります。

災害発生後の生活にも心のゆとりを

日本人は、「みんな大変な時だから、自分だけ不満を言うのは申し訳ない」と考えて、過酷な避難環境でも我慢する人が多いようです。しかし、災害時は肉体的にも精神的にも消耗し、ストレスが溜まるもの。命が助かることはもちろんですが、その後の心身の健康も考えた防災対策を考えなければいけません。

日本でも、多くのNPOなどが、こうした新しい考え方を自治体や一般向けに啓発して避難所の環境を少しでもよくし、災害に備える活動を行っています。冒頭でも書いたように、自然災害の多い日本では、避難所生活は、私たちの誰もが「他人事」ではないだけに、こうした動きへの理解と支援を積極的に行っていくべきではないでしょうか。

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